第11回地域包括ケア推進病棟研究大会
【シンポジウム】
シンポジウム 地域包括ケアを支える多職種連携と教育


草場鉄周
皆さん、こんにちは。大会長の草場でございます。
それでは、こういった企画としては最後になりますけれども、シンポジウムということで、本大会の趣旨である「地域包括ケアを支える人材育成を目指して」というテーマにのっとった形で、多職種連携と教育という形でのシンポジウムを始めてまいりたいと思います。
まず、今回のシンポジウムの流れですけれども、4名のそれぞれ職種が異なるシンポジストをお呼びしていますので、お一人お一人からまずお話しいただいて、その後、最後に総合討論という形で、演壇に上がっていただいて、質疑応答も含めてディスカッションするという形になります。1時間50分という結構長い時間にはなりますけれども、ぜひ積極的に質問などで御参加いただければ大変ありがたいと思ってございます。
それではですね、まず最初のシンポジストを御紹介いたします。
堀哲也先生です。
堀先生は、私が主宰しております、医療法人北海道家庭医療学センターの理事を務めております。現在、北海道社会事業協会帯広病院の総合診療科の主任部長という形で、総合診療医の育成という部分に力を尽くしている立場でございます。
経歴等は、こちらのパンフレットのほうを御覧いただければと思ってございます。
現在の協会病院で働き始めて9年経過したというところで、現在の状況を踏まえて、この地域包括ケアを支える医療人材、特に総合診療医をどうやって育てるか、病院の中でどういった形で教育をしているか、いろいろとお話をいただきたいと思っています。
では、堀先生、よろしくお願いいたします。
病院における地域包括ケアを支える人材育成~総合診療科の視点から~


堀哲也
草場先生、御紹介ありがとうございます。
皆さん、こんにちは。北海道にあります帯広協会病院の総合診療科に勤めます、堀といいます。今日は、医師の立場からといいますか、総合診療科の立場からお話しさせていただきます。
特に発表に際してCOIはございません。
今日の内容は、まず当院の紹介をさせていただいた上で、総合診療科が人材育成に関してどのようなことに取り組んでいるかと、実際、今後の展望みたいなことも踏まえてお話しできればと思います。
当院に関しては、北海道の十勝地域にある帯広市という中核都市で人口16万弱。十勝地域全体でいいますと約30万人の人口がいるところの、いわゆる中核病院を担っております。設立は、戦前からある病院で、道内では比較的古い病院にはなりまして、病床数は300床あります。コロナ前には一時期48床の地域包括ケア病床を有しておりましたが、コロナ禍の際にその病床がいわゆるコロナの受入れ病床として転換して。最終的に、コロナ禍を経て、いわゆる地域医療構想の話合いの中で、当院は急性期のほうで頑張っていこうという話になって、現在は全ての病床が一般病床という形になっています。
帯広市内には複数の医療機関があるんですが、その中で3次医療救急を担う帯広厚生病院という、当院の倍以上の規模がある病院の次に、一般病床数では帯広・十勝地域で2番目という位置づけです。
協会病院、いわゆる総合病院的な機能でやってはいるものの、ここに書いてあるのが一般的な診療科で、診療科は全てはそろってなくて、ここに青塗りになったところが、当院で診療科が、常勤の先生がいる科になります。ただ、常勤の先生がいるとしても、1人だけの部分もありますので、総合診療科が足りない部分と、あと、全く専門医もいないような部分に関してある程度補いながらやっているのが現状です。
実は私、協会病院で働いてはいるんですが、紹介にあったとおり、北海道家庭医療学センターから出向という形で働いていまして。そもそも、北海道家庭医療学センターが道内を中心に診療所をメインに展開している医療法人で、道内には9か所の診療所を運営しています。その中で、病院部門といいますか、病棟研修をする場として帯広協会病院と業務委託契約を結んで、かれこれ10年前、2016年に帯広に新たに総合診療科を立ち上げたということになります。
北海道家庭医療学センターの歴史的な背景からいいますと、1996年に室蘭日鋼記念病院の下部組織として立ち上がったんですが、その後、2008年に法人として独立して、2016年に総合診療科ができるんです。
このできた経緯に関しましては、もともと北海道の地域枠と言われる制度に基づいて、地域で総合診療科を育てようとした場合に、実際に研修可能で、かつこの地域枠の研修にも認められている病院がなかったという現状がありますし、2018年から新専門医制度、日本専門医機構が認める総合診療専門医制度が始まるっていう前段階のタイミング。あとは、研修システムの変更に際して、北海道家庭医療学センターの病院と、実は協会病院のほうも医師数が減っていて、赤字が続いていて、何とかしたいという思惑もあって。その辺でいろんな要素が、ちょうどタイミングが重なって、2016年に私が総合診療科を新たに立ち上げることになりました。
総合診療科専門医研修の北海道家庭医療学センターでのプログラムは、4年間のプログラムで、そのうちの1年目と2年目を主に病棟で過ごすんですが、その病棟の指導の部分を協会病院で担うために総合診療科を立ち上げたということになります。
総合診療科の取組に関して具体的にお話ししていきますけれども、立ち上げ当初、私と、実は妻も同じ総合診療科で働いていて、7名で立ち上げました。
そもそもが、教育を主軸に立ち上げようということで、しっかり教育の時間や内容を詰めながら、ただ教育をするだけではなくて、良質な総合診療を実践する。そのためには病診連携とか多職種連携にも力を入れて、行く行くは地域社会、学術的な部分でも貢献できていければなということで、2016年にこのようなイメージ図で立ち上げました。
当初から続けている取組としては、毎週火曜日の朝30分、研修医やうちの後期研修医、いわゆる専攻医向けに、ここに書いてあるような代表的なテーマだけじゃなくて、毎週テーマを変えながらレクチャーを続けています。これは私がやっているわけではなくて、全員が持ち回りで。最終的には研修医の先生方にも教える側に回ってもらいながら、事例を基にレクチャーしてもらうような形を取っています。
それ以外には、週に2回から3回、症例のカンファレンスの時間を取っていたり、月に1回ではありますが、リハビリのスタッフの方々とカンファレンスを行っています。これに関しては、後ほどもう少し詳しくお話しします。
それ以外にも、これはちょうど草場理事長が当院に指導に来ている写真ですけれども、月に1回、北海道家庭医療学センターのグループに所属する指導医に当院に出張で来てもらって、レクチャーですとか、研修手帳の指導みたいなものも含めて、指導する枠組みをやっています。
そのような取組が功を奏して、総合診療科、当初7名で立ち上げたんですが、おかげさまで年々徐々に増えて、昨年度からは私を含めて15名体制で総合診療科を運営しています。今年も、おかげさまで専攻医が多く入ってくれて、指導医が1名減にはなっているんですが、一応15名の体制を維持することができています。
実は、総合診療科の医師数だけではなくて、初期研修の先生方もおかげさまで増えていて、当初、帯広協会病院は初期研修の先生が1人か2人しかいなかったような病院だったんですが、2020年度からはほぼほぼ毎年フルマッチに近い人数が入ってくれるようになって、今年度も定員を埋まる人数が入ってくれています。この医師数の増加を支えるために、病院のほうからは経営的なプレッシャーも当初はありました。
コロナ禍で入院数が伸び悩んでいたんですが、2023年度から2024年度にかけてぐぐっと、緑で示す入院数が増えました。具体的な金額は、小さくしていまして申し訳ないですが、立ち上げ当初に比べますと、総合診療科はこれだけの収益の推移で、約2倍の売上げが出るように増えています。
この売上げの増えた要因に関してですけれども、診療報酬に関しても立ち上げ当初から取り組んでいて、一番大きなのは、救急車の受入れ台数を増やして救急医療管理加算を多く取れるようになったことに加えて、チーム活動として、院内感染対策とか抗菌薬適正使用チームももちろんですが、最近は認知症ケアチーム活動にかなり力を入れています。これが今、我々総合診療科の売上げに関しては大きなインパクトになる数字に変わってきています。あと、総合診療科が新たに協会病院にできたことで、DPC機能評価係数というのにもプラスの貢献ができているかなと思っているんですが、その中でも複雑性係数というのが伸びていると、医事部門からは評価をいただいています。
実は、当科だけ伸びているわけではなくて、他科の先生方との連携を深めながら、専門的な処置や検査件数も増えていて、循環器内科の先生方が肺炎を診ることはほぼほぼなくなってきたおかげで、当院での心臓カテーテル検査の件数ですとか、整形外科の先生方も、手術後の症例で、安定して術後経過が問題ない方は早々に総合診療科へ転科して、その後の内科的管理を我々がやるような形を取るようにだんだんとシフトしてきていまして、整形外科での手術件数も少しずつ伸びてきています。その他、泌尿器科とか消化器内科とも連携して、総合診療科だけが一人勝ちするのではなくて、病院全体にプラスに働くような取組をここの10年続けてきた形です。
私がその中で取り組んだ大きな仕事としては、救急医療対策委員会の委員長に2019年就任しまして、委員会の運営だけではなくて、委員会を通じて救急救命士の実習を見直して、救命士と実習の間に私が必ず1時間症例の検討会をするような時間を取ったり、救急処置室の改修工事にも取り組みました。その他、心肺蘇生のシミュレーターを買って院内での教育資源を確保したり、ICLSみたいなものを院内で開催したり、ソフト面にも力を入れつつやってきています。
救急処置室の改修工事に関しましては、2018年から、この委員会の委員長に就く前から救急に総合診療科が力を入れていましたので、職員にヒアリングなどはしていたんですけれども、委員長になってから具体的にプロジェクトチームを設置して、改修工事に向けた動きを開始しようとしていた矢先、ちょうどコロナになってしまって、一旦この活動は休止になりました。2022年、いろいろそれまでの準備を着々と水面下で進めながら、経営幹部の了承も得られて、改修工事をするめどがつきました。2023年1月に、約2か月間かけて、救急を止めることなく、フロアの改修を無事終えることができました。
地域の十勝毎日新聞という地方紙があるんですけれども、そこで受け入れてもらうときに写真付きの記事にもしていただいたり。
工事による変化に関しては、床面積でいうと約2.5倍に広がって、救急車の同時受入れ件数も、それまで3台が限界だったのが、5台来ても受け入れられるようになった。加えて、動線もいろいろと見直しましたので、プライバシーの確保にもつながったかなと思います。その他、記載のような備品とか設備の更新も行いました。
ここはハード面だったんですけれども、それに加えて、ICLSという院内急変の10分間の蘇生コースに関しても、私が赴任してからかなり力を入れて取り組んでいて。当初はただただインストラクターとして指導側で参加していたんですが、帯広・十勝地域でコースディレクターという、ICLSコースを開設するための資格を持った先生が、長年ずっとやってきた先生がいらっしゃったんですけれども、その先生が定年退職を迎えられて、「堀君よろしく」という形で引き継ぐ形になってしまったんです。病院をまたいだ形で運営する必要があるというのが引き継いだ後によく分かって、私個人で続けるのもちょっと限界がありそうだなということで、十勝ICLS協議会という任意団体を、実は先週、設立総会を開催して、今年の9月1日に開始するような形で立ち上げました。
この会を通じて、計画的なICLSコースを開催するとともに、十勝コンセンサスというような、十勝管内の実情に応じたICLSのコース運営ですとか、安定的な会の運営といいますか、コース開催のために医療機関とか団体さんからの賛助会員みたいなものを募る予定でやっています。
このような取組をしながら、地域包括ケアを支える人材育成に関して、次にお話をさせていただきます。
総合診療科の病棟で求められる医療というのは、こういった模式図がありますと。縦軸に緊急度、横軸に重症度を取った場合に、肺炎とか骨折のような、緊急度が比較的高いものの重症度はそこまで高くないような症例から、緊急度は高くないけれども重症度が比較的高い、難病を含めた患者さんとか、予定手術の患者さんの術前の血糖コントロールとか、そのようなものを求められると言われています。
また、これは2015年の仲井先生がお示しされた、地域包括ケア病棟の3つの受入れ機能の表ですけれども、これでいいますと、総合診療科の役割としては、サブアキュートとか周辺機能と言われるところで求められる総合的な診療能力に加えて、介護との連携、あとは、やはり緊急入院後の急性期から慢性期に移行していくポストアキュートの部分でのリハビリテーションというところ。総合診療科としては、この地域包括ケア病棟のような病棟だったり、我々が診ている患者さんも、まさに地域包括ケア病棟が一番適しているんじゃないかなと思うような患者さんが多いので、こういったあたりが我々の仕事かなというところです。
そのためには、診療×教育×地域みたいな、3つの交わる点を意識することが大事かなと私自身は考えていて、これは自己実現でよく語られることですけれども、自分ができることとやりたいこと、周りから求められることが一致するといいですよと言われているような話ですが、研修に関してはやりたいこととやるべきことがある。若い先生方、いろいろやりたいことはたくさんあって、当院でもエコーの勉強会をもっとやってほしいとか、人工呼吸器管理できるようなところまで救急をやりたいみたいな先生もいたりして。ただ、実際にできることできないことがあります。
あと、我々が実際にできることとか得意にしているものだったり、地域で求められていること。今日はスライドに含めていないですけれども、今、実は帯広・十勝地域だけじゃないと思いますけれども、医療的ケア児の移行期医療みたいなものが非常に問題になっていまして、その受皿となるのは総合診療科かなという状況で、そこの部分とか地域の課題と我々のできることと、それに教育をうまく織り交ぜて、ここの交わる部分をできるだけ広くしていきたいなと考えています。
そのような中の一環として、北海道家庭医療学センターでは、専門医研修を終えた後の、さらにもう一段、一歩レベルアップするためにフェローシップ研修というのをやっています。今の我々の総合診療科にも1人、フェローシップとして、専門医研修が終わった後の医師が所属していてくれて、将来のリーダー育成のためのコース、オンラインのレクチャーを受けながら、オン・ザ・ジョブでいろいろと勉強していくんですが、そういった立場の医師がチームに入ることで、今申し上げたような研修と実際に求められていることを一体化していくような方法で、毎年事業計画というのを立てながらやっています。
これはあくまでも模式図ですけれども、我々指導医とかフェローシップが新たにやりたいことというか、やるべきことを立ち上げて、そこにうまく研修を織り交ぜて、最終的には初期研修とか多職種の皆さんとの教育みたいな部分にも何とか、全体として調和を取るような形でやっていくということになります。
一例としましては、リハビリカンファレンスが分かりやすいかなと思います。フェローシップの先生にプロジェクトとして在宅復帰率を改善しようとか、リハビリスタッフの方とのコミュニケーションを強化しようというところで、専門医研修としては、カンファレンスの運営を専門医研修中の医師に任せたり、出た事例をポートフォリオという研修レポートにまとめる作業を支援したり。その一連の中身を通じて、初期研修医にとってはリハビリで使われる国際生活機能分類という概念の理解につながったり、リハビリの方から見れば、我々総合診療科のやっていること、考え方みたいなものを共有する機会になったりということで、多層的になるような仕掛けをしています。
その1つとして、ICFという国際生活機能分類を用いたカンファレンスを月に1回やっていて、これをリハビリカンファレンスと当院では呼んでいます。
このカンファレンスの目的から、いろんな項目を順番に、いろんな立場から情報を出しながら話し合っていくわけですけれども、これは総合診療科で言われる患者中心の医療の方法というのと非常に相性がよくて、これがその患者中心の医療の方法の模式図で、詳しい説明は省きますけれども、そこで我々が大事にしていたり患者さんから得ている情報と、ICFモデルで言われている部分と一致点が非常に多い。これはある雑誌に私が寄稿したものから抜粋しているんですけれども、その活動とか参加と言われる部分が我々が大事にしている背景の情報と非常に近かったり、環境因子も遠位コンテクストと言われる部分に近かったりということで、こういったカンファレンスを通じて相互の理解が深まっていくかなと思います。
このような取組を通じて地域で医師を育てること自体が、研修を行った土地や病院に残る傾向があると言われていますし、教育を提供することそのもので診療の質が向上するとも言われています。なおかつ、当院のような地域で行う教育は、医学生の成績にもプラスに働く可能性があることも文献で指摘されています。
このような形で、当院と市内の病院も含めてですけれども、病診連携を深める中で、家庭医・総合診療医の連携のモデルの発信みたいなのも行く行くはもう少し力を入れてやっていきたいと思いますし、当院も含めた地域医療構想、また新たにいろいろ関係者が集まって話合いをしているところですが、医療政策と緩やかに連携しながら、モデルとしての総合診療専門医を。このような機会をいただけて本当にうれしく思いますが、より世界に発信しながら、よりよい医療の形を模索していければなと思っています。
駆け足になりましたが、本日はこのような機会をいただきまして誠にありがとうございました。
御清聴ありがとうございます。
以上になります。
草場鉄周
堀先生、ありがとうございました。
質疑応答は後ほどまとめてやりたいと思いますので、一旦ここで降壇いただければと思います。
それでは、次のシンポジストを御紹介いたします。
次は、看護のお立場ということです。千葉大学大学院高度実践看護学講座教授の酒井郁子先生を招きしております。
酒井先生は、大学での御活躍もそうですが、私どもプライマリ・ケア連合会の中でも、看護のお立場で、多職種連携ということで様々な発信をいただいていて、教育者として、実践者として実績をお持ちの先生でございます。
今日は、「地域包括ケアを支える多職種連携教育と看護のこれから」という演題でお話をいただきたいと思います。
酒井先生、よろしくお願いいたします。
地域包括ケアを支える多職連携教育と看護のこれから


酒井郁子
草場先生、御紹介ありがとうございました。
これから話す内容は、大きく分けると4点あって、ここに書いてある順番でお話をします。
まず、チーム医療から多職種連携へというお話ですけれども、いきなり英語のスライドで申し訳ありません。
日本の地域包括ケアシステムというものが海外にどのように説明されているのかということを示しているんですけれども、これはJICAの資料から取っています。
ここに「Person-Centered Community-based Integrated Care」と、日本語にすると地域包括ケアとなるんですけれども。Community managementというのがあって、そこに向かっていくためのストラテジー、戦略としてInterprofessional collaboration、専門職、多職種連携というのがありますよということが世界に向かって発信されている状況があります。
ちょっと言葉を整理させてください。
Interprofessional Collaborative Practiceというのは、IPCPというんですけれども、複数の専門職による協働のプロセスと方法なので、協働のやり方を示しています。これに対して、Interprofessional Collaborative Care、IPC、Pが抜けるとどうなるかというと、複数の専門職が協働して行うケアと患者利用者さんへの成果ということになります。このときのケアは広い意味で使っています。
IPCP、IPCがなされるようにするために教育があって、それが、複数の専門職がお互いについてお互いからお互いに学ぶという、Interprofessional Education、IPEといいます。
なぜこのIPEという教育が今非常に普及してきているのか。現在、医学部、薬学部、看護学部、それから理学療法、作業療法等の医療専門職のコアカリキュラムにはほぼ必修で入っていると思うんですけれども、それはなぜかなということですけれども、医療の高度化・細分化等で個人で仕事を行うということや、職種縦割りで仕事を行うということや、患者さんの一人の問題領域を区切るということが限界になってきたので、専門職連携ということが生まれてきました。その背景には、専門職の教育の高度化というのがありました。
平成の30年間、看護を代表していえば、看護系の大学は300になりましたし、日本中に看護系大学があふれている状況があるんですけれども、それはセラピストの教育も似たような状況かと思います。
教育の高度化によって何が生じるかというと、専門以外の知識を獲得できなくなる。そういう機会が減るんですね。なので、専門領域のことしかできなくなってしまうということと、その反面、教育にすごいコストを投下しますので、職業継続時間が長くなって、看護師なんかは本当に辞めなくなりました。
あとは、職業継続時間が長くなることで、多様なチームに同時に所属して、そこそこでパフォーマンスを出すということが求められるようになったんですね。なので、専門職連携教育、IPEというのは、この4つの特徴によって成り立っています。だから、これの特徴がない、一緒に学ぶだけというのは、IPEとなかなか言いづらいということがあります。
1つは、共に学ぶことから生まれる自職種と他職種の役割に自分で気づくということです。それを基に、自分が持っていた他職種、自職種へのステレオタイプを意識化する。こういうふうにとある職種を持っていたけれども、そうじゃないんだなということに気づく。その結果、リスペクト(敬意)が生まれる、それを育てていく。その結果、相互の知識や技術を活用し信頼し合う相互依存性が生まれる。この4点があって、初めてIPEと言えるということです。
現状、言葉がいろいろごちゃごちゃしている状況が日本にあって、チーム医療という言葉を結構人口に膾炙しているわけですけれども、これはそもそもタスクの分担を医師と医師以外の専門職が分担しましょうと、リスクを最小化しましょうということになって、医師以外の専門職のことをコ・メディカルと呼ぶようになったわけですね。これは海外に行くと通じない言葉で、また医療限定ですし、医師とコ・メディカルの間に上下関係が生まれちゃっているわけですよね。これだと地域包括ケアシステムになかなか適応できなくて。
なぜかというと、地域包括ケアというのは、やっぱりタスクの重複っていうことによってチームパフォーマンスを最大化していくことが重要なので、お互い、どっちがやってもいい仕事を増やしていくというのが、地域包括ケアにおける多職種連携の大きな特徴だろうと思います。
今の話が、多職種連携のコアな部分って何かなということです。
次に、千葉大がやっている地域ベースのIPEをちょっとだけ御紹介します。
まず、千葉大学は、医学部、看護学部、薬学部、工学部の4学部で、1年生から必修で専門職連携教育を2007年からやってきました。この専門職連携を教育をベースにして、文科省からの助成金で、大学の世界展開力強化事業という変な名前の補助金があるんですけれども、それを獲得しまして、イギリス、インド、オーストラリア、千葉大の4大学で、専門職連携教育を基盤として、地域社会課題解決のための短期交換留学というのを始めたんですね。1年遅れでこのカウンターパートをシンシナティ大学ともやるようになって、これは看護だけですけれども。今2種類の大きなプロジェクトが走っているわけで、私はそちらのコーディネーターもやっています。
房総のほうのコミュニティに海外から来た医学部生、薬学部生、看護学部生と3学部生、それに千葉大の医療系に限らず様々な学生がバディーとしてついて、千葉大には今、地域医療教育学講座というのがあるので、そこの教員と協働しながら、ネギ畑でネギを収穫して食べてみたりとか、小学生や高齢者の方々と交流したりとか。あとは、様々な医療施設に行って様々な体験をしたりとか、そういうようなことを10日間ぐらいのプログラムでやっています。
学生さんは一体何をその現場で感じているのかなということです。
ちょっと細かくて申し訳ないんですけれども、日本の学生は、実際に現場へ行ってみたら、コミュニティには、仕事している人たちは上下関係がなかった。自分たちが思っているほどなかったということは、普段いるところは上下関係があると思っているんだねということですけれども。退院はゴールじゃなくて、その後を支えるためのチームっていうのがあってとか、いいことを考えておられるんですけれども、イギリスやアメリカの学生さんたちは、千葉のコミュニティで人生を変えるような大きなインパクトがあったとまで言っている人がいて。
何かというと、日本の高齢者がこんなにヘルシーだとはとびっくりしていて、健康体操を一緒にやったけれども自分はついていけなかったとか、食事を比べたら自分は全然ヘルシーじゃなかったとか、とにかく地域活動に出てくる日本の高齢者ってすごくヘルシーなのでびっくりしているというのと、高齢者の医療に対してここまで予防とリハビリテーションを手厚くやっているなんて、自分の国ではないという、そういうようなところですごくびっくりしていて。そのびっくりしているさまを千葉大の学生が見て、これはすごい海外から驚かれることなんだというふうにまたびっくりするというような、そういうようなことが起きています。
海外の学生さんは、自国の地域ケアや高齢者ケアを相対化して、それぞれの長所と課題を見いだしてくださっているんですけれども、それだけじゃなくて、それを受け入れてくれたコミュニティの皆さんにフィードバックするということをやって。そうすると、英語が全然しゃべれないおじいちゃんやおばあちゃんたちがすごく喜んでくださり、来てくれてありがとうということになって、また来年もお願いしますとか、一緒にネギを採りましょうというようなことが生まれ、コミュニティがさらに包括的なケア提供に動機づけられるということがありました。
そもそも日本人って黒船に弱い部分がありますので、海の向こうから特別な人がやってきた感がすごいあるんだろうというふうにも思いますけれども、それを学生さんと一緒に受けることによって、いろいろなことが起きているんだろうと思います。
ですが、課題もたくさんあります。
看護の話をしてくれというリクエストなので、看護の話をちょっとだけしますと、私、大きい話ばかりしていて申し訳ないですけれども、日本の看護基礎教育というのは今、2022年度から大きく変更を加えていて、この教育が完成するのが2026年度なんですね。どういう変更かというと、地域在宅看護論という、地域系の授業が2単位増えているということ。時間数も増えている。あとは、臨床推論とIPEが必修化されているということが大きなことですけれども、地域医療の推進に向けて、教育のほうは高度化を目指しているんですね。地域医療だと、看護師がしっかりと臨床推論できないとちょっと難しい状況があるので、そこを強化している。
新人教育は、新人研修の体制構築が努力義務化されましたので、2010年から標準化されて、ここはかなり軌道に乗っている。
今、整理整頓をしている最中なのが継続教育で、今150以上の修士課程があるんですけれども、戦国時代みたいになっているので、そこを何とか整理整頓するということ。それに、特定行為研修という制度が入りましたので、そことの整合を取るというところで私たちの業界はちょっと苦慮しているところがあって。
特定行為研修の制度は2015年から始まったんですけれども、この修了者は現在全国で1万人を超えています。しかしながら、就業状況は病院に9割近くの人がいて、訪問看護ステーション等は5.7%しかまだ配置されていない現状があります。そもそも医師不足のところ、医師が常時いないところにこういう特定行為研修修了者を配置するという構想があって、制度の趣旨は在宅医療の推進だったわけですけれども、ちょっと難しい状況があります。
なぜ日本で、看護師だけじゃなくて医療者が急性期病院に集中するのかな。
まず1つは、急性期病院のベッドが多いということ。結局、基礎教育が今まで急性期モデルで来ちゃって、新しい教育に変えて、これが完成するのが26年ということですね。そのため、地域包括ケアの理念が発展途上にあってということです。
もう1つ、医療者の地域偏在がある。教育の成果って20年後にしか現れないってよく言われて、看護師の場合はそれにプラスして医師の指示っていう呪いが。――ごめんなさい、呪いって言っちゃって。お互いにそれを誤解し合っているということがあって、自律性の発展が阻まれているということもあります。なので、これを反転させて解決していくことが必要になってくるかと思います。
そのときに、同僚への倫理的な実践ということが肝になってくるだろうと思います。
専門職の皆さん、たくさんのコア・コンピテンシー、できることを持っているわけですけれども、中でも、Collaborativeと言われるコンピテンシーは、どの専門職も必要とする、協働する際に必要な能力のことを言います。看護師がチーム医療の要と言われていたのは昭和の時代で、今はどの専門職も連携実践はできなくちゃいけない。なので、WHOでステートメントが出て、この6つの学習をしてこういう能力を獲得してくださいというふうに言われているわけですね。チームワーク、それから役割と責任。
チームワークは、どこかの職種がずーっとリーダーを取るというのではなくて、チームリーダーとしてもチームメンバーとしても振る舞うというのがポイントです。役割と責任は、自職種を説明したり他職種を理解したりするときに、職種の理解だけではなくて、職業人としての個人の理解、個人に関心を寄せて理解をするということと、自分の他職種理解をその職種にちゃんと確認して、常に理解を更新するということがポイントです。
患者さんとの関係構築はみんなするわけですけれども、最後の倫理的な実践のところが非常に重要で、自分自身や他者が持つ他の専門職へのステレオタイプな見方に気づけば修正できますので、それを諦めず、ずーっとたゆまず続けていく能力が専門職連携実践をやっていくときに非常に重要な基盤になるんですね。なので、60になっても70になっても、専門職として働いている以上、この能力は伸ばし続けなければいけないということと、同僚の見解を、この職種の言っていることはあまり重要じゃないから置いておいてみたいにするんじゃなくて、等しく有効で重要であるということをお互い認め合うということがすごく重要な学習のポイントであり、これは年齢にかかわらず、職種にかかわらず、専門職連携能力に必要だという話で、私のお話を終わりたいと思います。
以上です。
草場鉄周
酒井先生、ありがとうございました。
後ほど、また質疑もお願いできればと思ってございます。
それでは、医師、看護と続きましたが、次は、リハビリのセラピストというお立場でお話をいただきます。国際医療福祉大学成田病院リハビリテーション技術部の室長をされている、齋藤正美先生です。
先生は、北海道にいらっしゃった時期は、私、北海道の中で連携をさせていただいていたんですけれども、プライマリ・ケアの中でリハのセラピストがどう動いていくのか、医師とどう連携するのか、看護師とどう連携するのか、そういった形でたくさんの実践をされてきた先生でございます。実際に大学で実践をされ、そして教育にも携わるという形で、今回お話をいただきたいということでお呼びしました。
今回、「多職種連携教育と実践~プライマリ・ケアの視点を踏まえて~」という形でお話しいただきます。
齋藤先生、よろしくお願いいたします。
多職種連携教育と実践~ブライマリ・ケアの視点を踏まえて~


齋藤正美
過分な紹介、ありがとうございます。
皆様、こんにちは。私は、国際医療福祉大学成田病院リハビリテーション技術部の齋藤と申します。職種は理学療法士であります。
本日、私のお話の内容としては、いわゆる多職種連携教育と実践。私はリハビリテーションの専門職ですけれども、今日はあえてプライマリ・ケアの視点を踏まえてお話をしたいと思います。
本日、COIですね、開示するものはありませんということで、始めさせていただきます。
今日の話の内容ですけれども、まず、私どもの大学病院の簡単な紹介と、私どものやっているリハを紹介します。そして、地域包括ケアと言われるものとプライマリ・ケアというのがどういう位置関係なのか。そして、私の大学と病院で行われている多職種連携の教育・実習と、それのお話。そしてですね、今後の課題と展望というのは、前提というよりは、今私どもが抱えている大学病院としての考えをお話しして、まとめということに進めさせていただければと思っております。
国際医療福祉大学ですけれども、私がここに赴任したのは2020年の4月です。大学病院に赴任したのは昨年の4月からとなります。私、実はこの国際医療福祉大学と卒業とかも関係なくて、全く外様でして。ここでこちらの大学に赴任しまして、4年間の教職をしてから、昨年から臨床のほうに携わっております。
グループについては非常に大きくて、福岡から始まって、栃木の国際医療福祉大学の病院と大学がありまして、私のいる千葉地区ということで、グループ全体で職員が大体1万2,000人ぐらいということになります。
この大学のグループですね、大学・大学院・専門学校を有しておりまして、また、大学附属病院、クリニック、そして福祉施設。教育・医療・福祉の複合体が連携し合って、人材の育成と臨床の発展を進めているグループだと思っていただければと思います。
私は千葉地区ですが、今、千葉の市川に国際医療福祉大学の市川病院がございます。そして成田ですね。成田も集中していますけれども、国際医療福祉大学の成田病院、これが2020年の4月に開院しました。そして、大学としての成田キャンパス。ここは医学部、保健医療学部、看護学部、あと介護福祉の専攻科ということであります。今年の4月から、法人は違いますけれども、グループとして成田老年医療福祉センター、これは介護老人保健施設と介護老人福祉施設の合築の、100床のセンターができています。また、そこにはリハセンターということで、通所リハと訪問リハですね。まだ今年の4月に開設したばかりですから、まだこれからの始動ということになっております。また、成田リハビリテーション病院、これはリハビリテーションの回復期病棟です。これが100ベッドあります。いわゆる1つの行政区の中に急性期、回復期と、あと生活の場が今年の4月にそろったというところです。
成田病院ですね、2020年の春、皆さん御存じの新型コロナのとき結構話題になりました。大学病院って何かと都心部にあってアクセスが非常によくて多くの人が来るというイメージですけれども、成田市は人口が13万ぐらいですから、そういう中での大学病院のため、一般に言われる大学病院が地域にどういう戦略、戦術にて地域の住民たちにどう貢献するか、1つの大きな命題だと思っております。
リハ室のイメージですけれども、非常に広くてですね、1,200m2ぐらいの広さがありPTとOTとSTの紹介をします。
PTの場合、理学療法の機材が幾つかありますけれども、動作の解析とか、呼気ガス分析装置とか心電図、心リハとか腎臓リハ、糖尿病リハ、呼吸リハと。割合多いのは脳血管とかの運動器ですけれども、こういういろんな幅の広い診療科に対してのリハを提供しています。
作業療法ですね、当然ADL中心のIADLとか上肢。あとは、大学病院で在院日数は短かく、急性期ですから、どちらかというと転院が多いんですよね。でも、転院は選択肢の1つであって、本来は入院した時点から、在宅もしくは施設に戻るという、退院について目標設定をしていなければならないです。
そうしますと、短い入院期間の中で、どういうリハビリテーション、いわゆる意欲とか質を高めるかと考えたときに、単なる療法を提供するだけじゃないと思っています。私が来てから、活動性をどう高めるかという意味合いでは、園芸とか調理、そして集団作業療法、そしてできるだけ外出とかします。大学病院から必ず転院ではないと思っています。
医師の指示の中ですけれども、当然、我々からもカンファレンスを通じて提案して、帰れる機能、もしくは帰る身体機能・能力、そしてバックグラウンドをいかに共有して、多くの職種と連携していくかというのが非常に重要になってきます。そして、中には職場復帰支援も進めることも対応しています。
言語聴覚ですね。これも、言葉のこともあると思いますけれども、当然早期の摂食嚥下。特に救急科のオーダーが多いですけれども、本当に当日からどうやって食事を摂るか。そして、脳血管であれば高次脳機能障害、また、自動車運転の評価、あと、吃音とか嗄声。あと、耳鼻咽喉科と人工内耳、中には嗅覚障害など、大学病院ならではのバラエティなリハビリテーションアプローチがされております。
これは、小児リハがあり、小児科との連携からいわゆる発達とか運動障害の方ですね。主にOT、STが連携しながら。あと、地域の自治体から相談、特に学校教育機関とか、学校の先生含めて連携を取っています。それで、実は市内だけじゃなくて、意外と市外のほうが来ていただける、こういう外来通院の対応をしています。
うちのスタッフですけれども、PT・OT・STで66名在籍しております。
急性期病院ですけれども、去年私が赴任したときは、日曜日がお休みだったんですね。これはいかんと。急性期であっても祝祭日に当然リハを提供することで、365日体制にしました。今年の1月から、365日体制で1月1日から機能しています。
これはエビデンスもありまして。当然急性期だからこそリハを投入して、次の回復とか転院を早める。これは、我々の大学病院の中でも、リハというのは非常に重要だということを認識。また、ドクターのリハ医もあり、非常に早くリハが介入しています。当然、各診療科の医師と連携して、大学病院ですから、臨床・研究を推進しながら。そして、キャンパスがありますので、教員の方が臨床の協力で、OJTということでスタッフを教育します。
私どものスタッフの平均年齢が実はまだ20代中盤ぐらいです。ですから、まだ1年目2年目が多かったです。そういう意味ですと、まだまだ脆弱なところはありますので、そういう後方支援をもらいながら進展しているところです。
去年の実績ですけれども、入院の処方が1万件近くと外来。疾患別入院・外来とも、脳血管、運動器、呼吸器となっています。診療報酬はこのぐらいとなっております。
今、ある程度大学病院の中でのリハビリテーションということはお話ししましたけれども、ここであえて私は、地域包括ケアとプライマリ・ケアというのは仲よしなんですよね。私はもう30年ほどプライマリ・ケアに携わっています。最初は急性期病院におりましたけれども、その後、プライマリ・ケアの今の連合学会の前身の日本プライマリ・ケア学会の時代からず会員になっております。
これは地域包括ケアシステムですから、皆さん御存じの姿になります。我々はどちらかというと医療という領域に住んでおります。我々から見えるものって何でしょうとなったときに、やっぱり医療がベースなんですね。特に大学病院ですと、見えるものは医療が中心なんですね。本来であれば患者中心でありますし、生活機能を見ていかなければいけない。
ただ、それを見るには、患者さんだけを見てても分からない。本来は、そこの地域にある資源。当然、ここに書いてある介護医療もそうですし、住まいとかほかの制度について学ぶ仕組みがないと、当然分からないですね。私自身が実際にケアマネをやってみたり訪問看護をやってみると、そういう経験の中で現場におりましたら分かりますけれども、急性期病院のみしか経験がなければ、馬耳東風で分からないことが多い。それをどういうふうな仕組みで持っていくかということが非常に重要だと思っております。
プライマリ・ケアの5つの理念。
これ、皆さんも御存じかと思いますけれども、5つの理念がございます。近接性があって、包括性があって、そして協調性、継続性、責任性。細かいところは1つ1つ読みませんけれども。つまり、地域包括ケアの目指す方向性と、プライマリ・ケアには実は親和性があるんですよね。言葉が違うということだけであって、目指す方向は一緒だと思っています。ですから、地域包括ケアの中でのプライマリ・ケア。プライマリ・ケアというと、例えばですね、僕も最初、お医者さんの集まりかなとか、感じていましたでも実際は、一緒にやっていくと、当たり前に連携するようになりますね、それが僕はプライマリ・ケアだと思っています。地域包括ケアもそうですよね。ですから、あくまでも誰が中心かというのは、患者さん、もしくは利用者・家族を真ん中に置いて議論するということが重要なことだと思っています。これはやっぱりトレーニングが必要ですよね。
地域包括ケア自身はですね、多職種連携の実践の場。地域の生活圏にそれが実装されなければいけないということは、地域の社会資源。うちは今ハードができたとお話ししましたが、実はソフトはまだまだなんです。それの活性化と創出。そして地域の生活圏、暮らしです。そこに不可欠な住まい。そして、地区コミュニティ等ですね、これは幅広いですけれども、そういう人と人が行き合うところをどういうふうに活性化していくかが非常に大事だと思います。そして、多職種連携の実践の場として、医療側からすると、介護、生活支援・介護予防領域との接点が重要であって、教育と実践には、医療から介護福祉領域への連続性や継続性がとても重要だと思っております。
私どもが関わっています多職種連携の教育・実習をちょっとお話ししたいと思います。
成田キャンパスは、学生は、2年後期に講義で関連職種連携論を受けます。そして3年でワークということで、これが医学部含め、看護学部、保健医療学部ということで、学生500人ぐらいまとまってやります。50グループをつくって、10人グループでディスカッション。教員がチューターについて、グループディスカッションを中心に、模擬症例から学ぶと。基本情報の整理をして、ニーズを把握して、チーム目標の提案。そして、各専門領域における専門用語の共通理解と専門用語の限界を知る。これは学生が、医学生がいるとみんな黙り込むんですね。医学生は責任がありますから一生懸命リーダーシップを取りますけれども、どっちかというと医学生中心になってしまう。それをどういうふうに打破するか。チューターがうまくファシリテートしながら、チーム目標の設定と自職種の目標設定をして、チーム目標と自職種の目標の整合性の検討をして、それをグループディスカッションを中心にして結果をまとめて、報告会を開催。
それは3年までで、次は関連職種連携実習で、実際の臨床の場面で4年生になって医学部生は5年生ですけれども、病院実習をやります。これは、千葉地区ですから成田病院と市川病院で2チーム、12名しか参加できていないですけれども、そういうのをやっています。対象学科は、ここに書いてあり、それぞれの全学科から成っております。
このIPE、IPWも、やっぱり練習の行動目標がありまして、行動目標設定。先ほども話しました、チーム医療・チームケアの必要性や意義を理解して説明する。模擬事例について全人的に捉える視点ですよね。3つ目は、やっぱり家族のニーズですよね。我々は医療者ですから、医療的に何かよくしてあげようという気持ちがあります。でも、本来は、患者さんの言葉もしくは家族の言葉、聞こえてこない言葉をいかに引き出すかというのが重要です。そこがやっぱりバイオだけじゃなくて、ソーシャルであるとかバックグランドであるとか、そういうところも一緒に見ていかないといけない。そして、各職種がそれぞれの立場から評価を行って、全体の計画を策定します。
やっぱりICFを使って、職種の立場からの視点を説明しながら、役割、そして共同作業。最後には倫理的な問題とか解決方法を理解して、連携ワークを実践できる。そして、共有をしていくという流れになります。
実習のレディネスについて、演習授業と実際の実習でのシナリオ。チーム・ビルディングから始まって、自・他職種の理解。大学病院の実習になると、やはり病院スタッフから生の情報、そして患者さんからの言葉1つ1つを紡いで、実践とはこうであると、最後にリフレクションするということをします。
ここまで、何となく地域包括ケア、プライマリ・ケア、そして大学での教育ではこういうふうにやっているという部分です。
これは、ちょっと狭いお話になるんですけれども、今、私どものグループの中で、大学とかうちの地区でいうと生活期リハができましたよねと。それだけではいけない。それはですね、私個人が発してもあまり意味がない。私の中での今後の課題と展望ということで。
教育でいいますと、大学、教育機関ですから、チューターとして僕も参加しましたけれども、ある意味、学生を見ていますと、それぞれの言葉を理解するとか、いろんな職種の壁を少しずつ取り除いていきます。
また、実際の臨床実習では、一部の学生は参加できないんですよね。あともう1つは、医療専門職のみですよね。病院でいえば事務職もおりますし、ほかにも様々な職種がいます。調理をする方もいます、栄養士もいます。本来は、そういう方々のいろんな力があって初めて一人の患者さんをケアできると思っています。また、出口という退院とかに関しても、介護・福祉領域と学ぶ機会がない。来てくれるというのはありますけれども、我々から出張ることは実は少なくて。私は、リハビリテーション室の中で、それはいかんということで、いわゆる退院に向けて我々からできること。それは診療報酬上ですけれども、退院時の訪問指導というのを、マニュアルをつくっていこうといって、学ぼうということで取り組み始めました。
地域にある大学病院だからこそ、地域住民に対し、しっかりと目を向ける。そして、スタッフを地域に暴露させて、やはり自分たちが相手の人生を変えるみたいな、変わっていくんだよということを目の当たりにしないと、なかなか自分たちのインパクトは変わらないんだと思っています。
展望としては、それぞれの多職種連携の学びを各専門職の臨床実習に実装していくことが大事だと。そして、もう一歩進めるためにも地域の介護・福祉または市民活動と協働するきっかけを検討。大学で行政とプロジェクトをやっていますけれども、まだまだ始まったばかりで、今後どういうふうに医療と介護をつなげるかが重要ではないかと思っています。
最後に、まとめです。
大学と病院ですね、それぞれの大学病院も大学と連携してやっていると思います。それで教育と実践を学ぶことはできると思います。大学病院、今、成田でいいますとリハビリテーション専門病院、介護施設ができましたけれども、まだまだ多職種連携に資する協議の場がないから、必要であるとあえて訴えます。
そして、行政区である成田市圏域における行政、介護保健施設、在宅サービス提供機関、あと、地区医師会ですよね。やっぱり地区の医師会というのは地域全体も診ています。地区医師会なしでは連携にならないですから、地区の医師会を含めて、多職種連携の輪、枠を実践できる仕組みが必要だと思っていますけれども、それが実はできてないんですね。そこが必要ですということを、私の立場でいうと課題としてまとめの中に入れさせていただきました。
ちょうど時間になりました。
御清聴ありがとうございます。
草場鉄周
齋藤先生、ありがとうございました。
それでは、最後のシンポジストに御登壇いただきたいと思います。小見川香代子先生でございます。
先生は、日本プライマリ・ケア連合会の理事を担っていただいており、アップル薬局小岩店で薬剤師として、現場で活躍されている方でございます。
今回は、薬剤師の立場からこの連携というものをどうやって担っていくか、そして、そのための教育ということについてお話しいただこうと思ってございます。
では、小見川先生、よろしくお願いいたします。
地域で活躍するブライマリ・ケア認定薬剤師の育成


小見川香代子
草場先生、御紹介ありがとうございます。
「地域で活躍するプライマリ・ケア認定薬剤師の育成」について、お話しさせていただきます。
COIはございません。
今回、地域で活躍する薬剤師を育成するためにということで、薬剤師が担う役割、そしてプライマリ・ケアを実践する薬剤師の育成、地域で活躍するために、この3つですが、最初の1つ目と2つ目が私の一番言いたいところでございます。
まず1つ目、薬剤師が担う役割です。薬局に求められていることですが、薬剤師の活動について知られていないことが多いので、ここで御説明をさせていただきたいと思います。
令和2年に日本学術会議の薬学委員会で提言が出されました。「地域医療への能動的関与」ということで、1つ目が地域住民の健康サポート役を担うこと、そして2つ目が、地域に出て多職種と協働すること、の2つになります。この2つについて話をしていきたいと思います。
こちら、厚生労働省から出されております「患者のための薬局ビジョン」というものでございます。薬剤師の中では、健康サポート薬局というのが、目指すべき薬局の姿ということであるのですが、地域の方々、または医療者の方々にはまだなじみの薄いものかもしれません。かかりつけ薬剤師がいる薬局であって、健康サポート機能は予防の医療であり。こちらを受皿にできる薬局を健康サポート薬局といいます。
かかりつけ薬剤師の要件としましては、研修認定の取得というのがございます。さまざまな薬剤師の認定があり、プライマリ・ケア認定薬剤師の認定を取ることでも、このかかりつけ薬剤師の要件の1つを満たすことができるということになります。
先ほどの図の中の赤字の部分、かかりつけ薬剤師・薬局のところは、プライマリ・ケアの知識を持つ薬剤師がいるということ。健康サポートの機能、予防医療も支える薬剤師であるということで、この研修機能はプライマリ・ケア認定薬剤師制度の中で十分満たしている内容です。
地域に出て多職種と協働することことにつきましては、薬局には地域連携薬局というのがございます。こちらの薬局につきましては、地域の医療機関と連携しながら、例えばいろいろな情報を医療機関にフィードバックしたり。地域の薬局同士で、足らない薬がどの薬局にあるのか、麻薬を扱う薬局がどの辺にあるのか、そういった情報も共有しながらやっていける薬局です。
地域連携薬局の要件に、地域包括ケアについての研修というのが1つの要件になっております。この研修も、プライマリ・ケア認定薬剤師研修で毎年行っている内容でありますし、プライマリ・ケアを目指す薬剤師にとっては、地域包括ケアというのはなくてはならないものでございます。
薬局に求められていることは、地域包括ケアシステムの一員としての薬剤師を目指していくということです。以前は、1つの医療機関の前に薬局が乱立してしまうとか、そういった立地条件によるものでありましたけれども、今は、薬剤師としての専門性を住民のニーズに対応できる機能として持つことや、情報を集約して、かかりつけ医師や多職種の方々と協働してやっていくというところになります。患者・住民との関わりの度合いの高い対人業務を含めた3つの柱を軸としまして、地域包括ケアシステムの一員としての薬剤師が求められているところでございます。
プライマリ・ケアを実践する薬剤師の育成を、プライマリ・ケア認定薬剤師委員会で行っております。プライマリ・ケアとは身近にあって、切れ目なく支えてくれるケアの入口だと思っております。
ここで、薬剤師の生涯研鑽について少し御説明させていただきますが、薬学部は6年制でございます。そして、その後、それぞれが自己研鑽をしていくのですが、その自己研鑽は、まず認定薬剤師を取るというところにあります。認定薬剤師を取ってしまった薬剤師がその次に何を目指すかといいますと、領域別認定、または専門薬剤師を目指していくのですが、プライマリ・ケア認定薬剤師は領域別認定薬剤師に属しております。
こちらはプライマリ・ケアの5つの理念でございます。先ほど齋藤先生からも御紹介がありましたように、5つの理念に基づきまして、プライマリ・ケア認定薬剤師を育成しています。
要件ですが、まず、認定の要件は2つございます。見学実習と研修。この研修は10の部門に分けてありますが、その10の部門をそれぞれ学んでいただくということす。また認定薬剤師の試験を受ける前に、見学実習をしていただくということがあります。認定の更新については、研修単位取得とポートフォリオの提出というのがございます。5事例を提出することにしております。
この見学実習ということについて少し御説明させていただきたいと思います。
見学実習は、医師と多職種との連携というところで、4日間、受入先のプライマリ・ケアの医師のいるところ、認定医または専門医のいる医療機関に訪問させていただき、医師や多職種の方々がどのように活躍しているかというところを見学実習させていただく研修でございます。
見学実習は非常に大事な研修でございまして、実習した方々から取らせていただきましたアンケートによりますと、学びの中からプライマリ・ケアに関する学びの深化だとか、多職種の視点からの学び、そして薬剤師の役割の再認識、新しい実践活動の学びといったさまざまな学びがございます。また、今後に活かせることといたしまして、患者中心の医療の実践、そして地域への広がり、薬剤師の世界だけではできない学び、または服薬指導・薬物療法の向上など薬剤師はもともと服薬指導とか薬物療法の研修はしていますが、多職種の視点を含め、業務に活かしています。薬剤師としての視野の広がりという意見もありました。このような成果のある実習を受けてから試験を受けていただくことになっております。
一方、更新者の必須事項として、ポートフォリオというのがございます。先ほど堀先生からも医師のポートフォリオのお話があったかと思いますけれども、薬剤師にもポートフォリオの提出がございます。実践活動からどのように成長しているかというところを確認するためのものです。
たくさんの事例がから、省察し振り返り、自分がどのようなことを学んできたのかということをここで一旦振り返っていただき、さらに次の段階のステップとして、どのように成長していくのかということを可視化していただくために、ポートフォリオを提出していただいております。
昨年度のポートフォリオ発表会では、120名の参加者がございました。ハイブリッドでおこないました。最初に医師の先生に講演をしていただき、その後、ポートフォリオを発表していただくという流れで、皆さん大好評のうちに終えております。
次に、研修会です。研修会は、年に36コマ、そしてEBMは1日、ポートフォリオ研修会・発表会は1日開催しております。コロナ禍ではウェブで行っておりましたが、現在はハイブリッド形式も取り入れて行っております。
このハイブリッド形式ですが、対面というのがすごく大事です。対面することによってお互いの薬剤師がどんな活動をし、どんな地域に所属し、どんな問題があるのかというのを改めて確認することができるので、この形式も取り入れております。
2024年度の研修会は、薬剤師としての学習内容以外に、社会学的な内容も含め、災害対策ですとか、地域包括ケア、EBM、今後に向けて研究というのもございます。それから歯科領域ですとか小児救急ですとか。地域活動を主に育成していきますので、さまざまな知識がないとなかなかやはり現場に出ることができませんので、こういった研修会も取り入れております。
以上のような認定薬剤師の研修を経て、地域でどのように活動しているのかというところを、これから少しお見せしたいと思います。
写真は当薬局での活動です。
地域の社協の人たちがやっている「なごみの家」というところで講演をさせていただきました。15名ぐらいの参加者で、この方々は病院にかかっているわけではなく、未病の方です。季節的に必要な、脱水のセルフチェックをしているところです。
また、歯科衛生士の卵の方に薬局に来ていただいて、ひとりひとりの方にお話をしていただこともあります。他にも、地域のプライマリ・ケア医の先生に相談し、そこで活躍されているリハビリの先生に来ていただいて、歩き方教室というのを開催しています。
当薬局は栄養士も常駐しており栄養指導もおこなっています
また、薬学生が薬局に来て研修しておりますので、薬学生も含めて地域に出て活動することもあります。
薬剤師どうしの連携についての写真をお示しします。
2025年度のプライマリ・ケアの学術大会では、若手の薬剤師が全国から来ておりますので、それぞれの地域での悩み事など、いろんな話で盛り上がる場がございます。
また地方会では、各地域の地方でどのような悩み事があるのかというところを、つながり合って話をすることもあります。
いろいろな取組をしながら、できるだけ地域の方々、若手・熟練の薬剤師が1つになって切磋琢磨して活躍していくことを、プライマリ・ケア認定薬剤師委員会では考えております。
最後に、プライマリ・ケア認定薬剤師の育成とは、プライマリ・ケアに関する学びを深化させるとともに、患者中心の医療の実践を遂行していく、そして多職種の視点からの学びにより薬剤師としての視座を高めていく、服薬指導・薬物療法の継続的学習により薬剤師としての役割を認識するといった、様々な視点から、地域であっても都市部であっても、若手であっても熟練であっても、いろいろな問題を抱えながら活躍していますので、その場その場でいろんな取組を見たり聞いたりしながら切磋琢磨して活躍していくことを望んで、私たちのプライマリ・ケア認定薬剤師委員会は活動しているところです。
以上でございます。
御清聴ありがとうございました。
草場鉄周
小見川先生、ありがとうございました。
〇シンポジウムまとめ
それでは、全てのシンポジストの発表が終わりましたので、4人の先生方には壇上に上がっていただいて、質疑応答からディスカッションという形で、おおよそ30分ぐらいありますので、残りの時間を活用していきたいと思ってございます。
どうぞお上がりください。

まず、発表内容に関しての質疑応答から始められればいいなと思ってございますけれども、いかがでしょうか。どのシンポジストに対しても、ちょっと聞いてみたいということで手を挙げていただければと思いますが、いかがでしょうか。
では、まず私のほうから質問を先生方に投げかけさせていただきたいと思います。
堀先生に質問です。
多職種連携という観点からのリハビリカンファレンス、ICFカンファレンスというところが、お話の中で一番多職種の連携を感じるような学びの場、実践の場だったような気がしますけれども、専攻医はそこにどうやって参加しているのか。また、専攻医はそこから多職種連携の学びを深められているのか。そのあたりについて教えていただければと思います。
堀哲也
ありがとうございます。
リハビリのスタッフとのカンファレンスでは、事前準備が必要な仕掛けにしていまして。ICFカンファレンスシートというシートに医師側も記入して、リハビリ側も記入して、カンファレンスの際にそれを全体に提示しながらディスカッションしていくんですけれども、準備段階から既にリハビリスタッフとコミュニケーションを取らざるを得なくなってきますし、そのカンファレンスを通じて、我々総合診療医、家庭医がどんなことを考えて診療に当たっているかというのを、リハビリの特に若手のスタッフには理解が高まりやすくなっている構成かなと思っていて。
そのディスカッションの中で、ベテランのリハビリスタッフはこんな視点で患者さんを見ていますというのが、リハビリの中でも上下で教育的効果を生んでいて。我々総合診療科の中でも、私も一緒に参加しているので、研修医の先生が見ている視点、専攻医の先生が見ている視点、指導医の我々が見ている視点みたいなのがカンファレンスの中で少しずつ理解が深まって、それを通じて、それ以外の症例に関しても、日常の診療でこういった部分はPTさんに聞いてみようとか、OTさんにも意見を聞いてみようみたいな形で、症例ごとに得意不得意とか、こういう情報を持っている人はあの人だみたいなことが何となく見えてくるという構成で。カンファレンスをただただやっているというよりは、それが呼び水となって、日常の診療のケア向上につながっているのかなというのが実感としてあります。
草場鉄周
対話の中で意識づけられるというか、それを意識せざるを得ないですし、リハの皆さんと対話する中で自然とそういうディスカッションになっていくと。
堀哲也
そうですね。
草場鉄周
なるほど。
この点に関しては、せっかくですので齋藤先生にも、そういった医師とリハセラピストの間でのカンファレンスの有効性みたいなものについて、リハの立場から見るとどういうふうに意義があるのかなと。先生が直接参加いただいているわけではないですけれども、少し教えていただければと思います。
齋藤正美
御質問ありがとうございます。
医師とリハ職というのは、やっぱり我々は医師の指示ですけれども、リハビリテーションというのは皆さんの、一般にいうと訓練をするとか、多分受ける方も比較的運動するとか筋力をつけるとか、比較的機能面に行きやすいことが多いですよね。
ただですね、私が家庭医の先生とか総合診療医の先生方と非常に多く学ぶことは、やはり待てよ、それだけじゃないよねと。先ほどの概念、ICFもそうですし、家庭医療の中ではそこが非常に親和性が高くて、そこをやっぱりディスカッションを重ねることによって、実は我々からすると、医師もそういう視点があるんだねと学ぶことが非常に多いです。
ただ、これ、実は全ての医師ではないと思っています、正直言って。臓器別の専門医ですと、そこは実際弱いと思っています。ですから、それは我々が、看護と我々の職がやっぱり比較的観察する時間が多いです。1つ1つ患者さんの言葉をしっかりとカンファレンスで伝えていくっていう作用がないと、あまりカンファレンスの意味を持たないと思っています。
ただ、うちもそうですけれども、若い人たち、医師中心にカンファレンスを進めると、これはうまくいきません。ですから、そこをどうするか、ある程度実践の場でやっていかないと、カンファレンスをやっただけになると思って、非常に危惧しております。そこはやっぱり医師と我々とのリハカンファみたいなものがあると非常にいいのかなと思っております。
草場鉄周
なるほど。ありがとうございます。
確かに、医師のほうからリハビリの議論に入っていくということ自体、あまりない状況かなと思いますので。実際、そこにセラピストの方にも気づいていただけるという意味では、非常に有効な場なのかなと改めて感じました。
ありがとうございました。
それでは、もう1つ、酒井先生に私から質問です。
非常に重要な御指摘をたくさんいただいたなと。共に学ぶ中で自分自身が持っている無意識の偏見みたいな、ステレオタイプな見方を払拭するというお話であったり、リスペクトという点を醸成していくという形で、このIP多職種連携教育というものが非常に重要であるというお話がございました。
私が医学部にいたときには、ほとんどそういうものはなくて、看護師あるいは薬剤師の方と一緒に教育を受けるっていうことは一切なかったなと。今とは隔世の感があるなと感じていたんですけれども。実際に先生の手応えとして、そういった実践を毎年される中で、それぞれの職種の若い方の意識というのは変わってきているのかどうか。そのあたりをどうか教えていただければなと思います。
酒井郁子
千葉大学は2007年からやっているので、2011年に看護学部の学生さんが卒業しまして、2013年に医薬の学生さんが卒業したわけで、この1期生の方々が今30代後半になっていますね。そうすると、大体大学に戻ってこられて、助教になっているんですね、医、薬、看、工学部も。
イギリス等もそうですけれども、初代の人が教育の場に戻ってきて、自分たちもこういうことやったんだよって、そのときは何だか分からなかったけれども、そこから臨床を経ていってこういうことがあって、これはここで学ぶべきことだよと自分の言葉で言えるようになるわけですね。今1周回ったので。
ここに来るまでは、かなりあちこちでいろいろなコンフリクトがありましたけれども、この若い教員の方々が入ってくることによって、IPEが当たり前のことになった。「今日、何で1年生がこんなにいるのかな」って学生さんが上級生に話すと、「今日はIPEの日だから」「そうだよね」みたいな、そういうふうな日常の一コマになっている状況があります。
その中で、初期の学生さんは、臨床現場に出ると、実際、理想のIPEを教えても、現場でそれが実装されていないので、ひどい状況だったということをレポートに書いて、それを読んだ現場の人が衝撃を受けるみたいなこととか、そんなふうに思われて心外ですって医師に言われるとか、いろいろありましたけれども、最近は、学生グループで現場に行くと、自分たちが思っていた以上に現場はフラットで、すごいきっちり専門職連携をやっていたし、リスペクトを感じたというようなレポートを書いてくるので、そういう意味では、学生さんが変わったというより、その学生さんを受け入れている現場がかなり変わったことによって、お互い変わっているということはあるかなと思います。
草場鉄周
なるほど。ぐるっと一回りすることによって、実際の定着度が徐々に見えてきているというところでしょうか。
酒井郁子
ちょっと一言いいでしょうか。
ICFカンファレンスってさっきおっしゃっていましたけれども、ICFって、別にリハと医師だけの共通言語じゃないので。例えば、亥鼻IPEでは、これはずーっとICFの枠組みで、一緒に患者さんを理解していきます。
そもそも回リハでは、回復期リハビリテーション病棟では、全ての職種が参加してリハビリテーションカンファレンスをやっているはずなので、看護師や薬剤師や栄養士さんたちがしっかりとそういう中に参加するという立てつけをつくらないと、なかなか専門職連携は難しいかなとは思います。
草場鉄周
その辺は、協会病院では、今ICFカンファレンスには看護師さんは入られているのですか?
堀哲也
一時期、それこそソーシャルワーカーさんや看護師さんや、いろいろ加えてみたことはあるんですけれども、月1回のペースですと、参加できるできないに不公平感が生まれて、逆に職場間の不和を生む流れがちょっと、1年ほどやってみたら出てしまったので。実際の業務ですと、看護師さんの夜勤日勤とか、全ていろいろ加味してってやると、なかなか難しいなと。
実際、一事例一事例やったときは、その症例に関して非常に深いディスカッションができて、いろんな方が交じってディスカッションするよさは非常に感じたんですけれども、継続する上では、職場環境内のチームビルディングみたいな部分まで考えなきゃいけないものなんだなということを踏まえて、今は一旦、リハビリスタッフと我々だけという形に戻してやっている状態があります。
草場鉄周
また元に戻っていくといいですね、いい形でね。
齋藤先生に質問があるんですけれども。
大学での実習というお話も結構いただいて、医療職間の連携教育はそういった形で進めていくのだなと思ったんですけれども、介護・福祉との連携教育がまだできていないということでした。介護・福祉との連携教育を実践するときに、地域にもっと入っていくというお話もございましたけれども、具体的なイメージとして、こんな形で実践すると学生さんにもより広い多職種連携が学べるんじゃないか、そういうアイデアがあれば、ぜひいただければと思います。
齋藤正美
先ほど申し上げたように、私のいるところができているというわけじゃなくて。私が実践して幾つかそういう関わりを持った経緯をお話ししますと、やはり協議の場というのは、僕が勤めていた行政が船橋市でありまして、人口60万のところなんですよね。そこはですね、やはりいろんな職能の、市の行政の中にある例えばケアマネ協議会、訪問看護、訪問介護、ケアマネ含めて、いろんな方が一斉に集まって協議会をつくって、その中からいろんな研修会とか協議の場をつくる。あと、また、行政が入って介護事業計画であるとか、いろんなステークホルダーが一緒になるっていう、やっぱりそれがないとなかなかですね。だから、私がほえたからできるはずはないんですよ。
そういう機運をつくるためには、やっぱりその中の声かけや仕掛けとか。あと、やっぱり行政を絡めて、予算的な後ろ盾も必要ですし。市民の団体もうまく絡んでいくという、そういうことも含めてやっていかないと、本質はできないと思いますし、それには時間が必要だと思っています。1年2年じゃできないですね。
私、実は北茨城の在宅医療の協議会の会長をやりましたけれども、やっぱり3年ですね。3年やって、やっとスタートです。警察、消防、市民含めて議論して、初めて見えてきたっていうのが最低でも3年ですかね。そんな時間をかけながら、継続するにはどうするかという議論が必要だと思っております。
草場鉄周
そうですね。まず、そもそも、ちゃんと連携というかネットワークができているところに、学生さんとか若い方を送り込まなきゃいけないと思うので、急にはできないですよね。本当に時間がかかるかもしれません。ただ、非常に重要な御指摘だなと、先ほどお聞きしておりました。
最後に、小見川先生に質問です。
今回、プライマリ・ケア認定薬剤師という観点で、健康サポート薬局とか地域連携薬局のような場で働く薬剤師さんの教育ということを具体的にお話しいただきましたけれども、実際、この教育を提供する中で、ポートフォリオというものでケースを出してディスカッションして勉強していくというのが結構印象的だったと思うんですけれども、例えば多職種の連携という観点でいうと、どういったポートフォリオがあるのかとか、どういった課題を扱う中で学べるのかとか、連携にちょっと絞ってみて、いかがでしょうか。教えていただければと思います。
小見川香代子
ありがとうございます。
ポートフォリオの連携というところに絞らせていただくと、連携のポートフォリオの題数はすごく多くてですね、特に在宅が多くて。在宅医療でのよかったところとか、失敗談も含め、いろんなポートフォリオがございます。
やはり医療者だけじゃなくて、ケアマネさんとか、生活を支えている側の方々との連携もあったりとかして、解決していくという方法もあった事例もありました。
課題としては、在宅に結構限られてしまう。生活が見えるっていうところではやっぱりそういった部分が一番出やすいんでしょうけれども、在宅という部分に限られてしまっているので、地域にいていろんな医療連携みたいなことからこういうことが起こったとか、そういったことがあるといいかなと考えています。
というのは、うちの薬局ですと、高齢者の方が多うございまして、高齢者の方いらっしゃるんですけれども、やはり家族の方とかいらっしゃいますと、わりと言いにくそうに、息子さんが引きこもりだったりとか。そういった相談事例もございますので、そういったところをつなげていくポートフォリオだとか、そういったのも今後出てくるかとは思います。
草場鉄周
ありがとうございます。
やっぱり在宅が分かりやすいですよね、構図としてきれいに役割が見えるので。実際に薬剤師さんの訪問というのも行われていますので。
ただ、外来なども含めて、今後はもっともっとそういった連携ということを入れていくという点は非常に重要な御指摘だと思います。
ありがとうございます。
一通り私から質問しましたけれども、会場の皆さんからいかがでしょうか。
何か、こういった点も少し聞ければということがありましたら、遠慮なくマイクの前に行っていただければと思いますが、いかがでしょうか。特に今のところはございませんね。
それではですね、少し角度を変えて、シンポジスト間で、御発表された中で相互に確認したいこと、聞いてみたいことがもしございましたら、ぜひ聞いていただければと思いますが、先生方いかがでしょうか。
堀先生、どうでしょうか。
堀哲也
酒井先生に御質問させていただきたいんですけれども。
先ほどのICFカンファレンスで、多職種がって話もちょっとしたんですけれども、そういう集まってカンファレンス形式っていう、発言する前提の形の多職種の混ぜ方はよくやるんですけれども、その場合、どうしてもそういうのが得意じゃないというか、特性として、書いたりしたほうがいろいろ意見が出てくるようなタイプの方って結構いらっしゃると思っていて。そういう集まってしゃべる形式のパターン以外で、多職種で一緒に相互理解とか学びを深める方法って何かないかなと常々思っていてですね。
しゃべれる人、要は声が大きい人が目立って、その人がすごいみたいな構造って、その場自体は悪くないのかもしれませんけれども、結果的に、そうじゃない人を排除しかねない構造でもあるかなと考えていまして。
それは多職種に限らず、同じ総合診療科の中だけでの勉強会とかでもそうですけれども、学習スタイルだったり、特性がちょっと違う方に対してのアプローチとして、何か取り組んでいらっしゃることとか気をつけていらっしゃることがあれば、教えてほしいなと思うんですが。
酒井郁子
御質問ありがとうございます。
まず、声が大きくしゃべっちゃう人に、しゃべらないって言う。これは本当の話。場を奪っちゃっているわけなので、まず自分がしゃべり過ぎていて、自分が場を引っ張り過ぎているという自覚が生まれない限り、その場は整わない。それがステレオタイプの見方の一端かもしれないし、自分はこういう職種だからリーダーシップを発揮しなければいけないというふうに思って一生懸命頑張っているかもしれないというのが1点。
患者さんのカンファレンスであれば、各職種が必ず、それこそ自分の意見を持って出るわけなので、そういうふうなグランドルールをまずつくって、必ず1回は何か言うとか、誰かが話したらちゃんと聞くとかっていう、カンファレンスのグランドルールと準備をちゃんとするっていうことをまずうちはしています。
だから、カンファレンスに代わるものは何かって言われますと、それは何かちょっと話が違ってきちゃうので。患者カンファレンスは、その患者さんに関わる人全てが参加できる場と時間帯を決めて、そこに参加して必ず何か言う、これがグランドルール。
先生がやっているところのICFカンファは、多分研修医の方々の学習ポートフォリオをつくったりとか、そういう学習のためのカンファレンスですかね。そこが大きいと思うんですよね。カンファレンスの目的によって、様々な関わり方が違ってくると思うんですね。
リハビリテーションスタッフの人は研修医の育成は責任を持てないわけですから、そういうそもそも場に権威勾配があるわけなので、患者さんを中心にカンファレンスをする、それには権威勾配はつくらないっていうことを日頃からレクチャーするのが大事で、これがなくならない限り、記録で書いても、Zoomでやっても、同じ話になるとは思います。
というのが私の答えです。
草場鉄周
非常に具体的なポイントを指摘いただき、ありがとうございました。分かりやすかったです。
ほかの3人のシンポジストの皆さんからございませんか。どなたかへの質問みたいな形でいかがでしょうか。特にございませんか。大丈夫でしょうか。
それでは、また私から1つお聞きしたいこと、4人の皆さんに、お一人お一人にお聞きしたいことがございまして。
今回参加いただいている会場の皆さんは、学生ではないですし、現場に出て、実際に地域包括ケア病棟、医療病棟等で活動されている方ばかりという形になります。今日は大学の中での教育というお話も結構多かったかと思います。ただ、実際今そういった現場におられる方については、Work Based Learningという形で現場でどう多職種連携を学ぶかということが必要な段階かと思いました。特に私のような世代、50代とか40代の後半の方は、恐らく大学でもそういった学びはなかったんじゃないかなと思いますので。そういった意味では、先生方から、現場で活動されている方に関して、管理者の立場あるいはリーダーの方が現場の中でそういった多職種連携を学んでいただく、あるいはもっと実力を向上させていただく、そのためのアイデアとかヒントみたいなものをいただければと思います。それぞれの職種のお立場でもいいですし、全体ということで語っていただいても結構でございますので。
堀先生からお願いします。
堀哲也
私の立場から、今の話ですと2点ですかね。
いわゆる現場レベルで多職種で患者ケアのために集まって話し合うというときに、やはり我々医師がどのような態度でというか姿勢で臨むかっていうのはかなり重要なポイントになると思っていますし、何て言うんですか、背中を見せるようなことを通じて、私の後輩とか研修医とかも、そういったことが当たり前になってくるような形を取るべきかなと思うので、医師の立場でいいますと、やはりいかに多職種で話し合う場の価値を高められるような立ち居振る舞いができるかっていうところかなと思います。
あとは、今日話の中で述べた、次のリーダーを担うような世代をという立場でいいますと、やはり多職種で話し合う、現場レベルでは今のような形でいいのかなと思うんですが、もう1個視点を変えると、各職種のいわゆるステークホルダーみたいな人をしっかり押さえて、その人たちをいかに巻き込むみたいなところが、いわゆるリーダー的な立場になるときには非常に大事かなと思います。
私も、総合診療科を立ち上げたときには、それぞれの病棟の肩書のついた人を押さえるのは簡単ですけれども、病棟に真の実力者みたいな人が大体いますよね。師長さんはこっちだけれども、こっちの人のほうが実はみんながついていっているみたいなことが往々にして起こるので、そういういわゆるステークホルダーみたいな人をちゃんと巻き込んで、多職種で話し合ったり、多職種で何か問題解決するような場に、うまくそれぞれの部署が人を出しやすくするような働きかけというのも、多分現場レベルからもう1個、リーダーシップを取るような立場になったときには大事なのかなと思うので。
そのような2つのレイヤーで考えていくことが大事かなと思って取り組んでいます。
草場鉄周
ありがとうございます。
先ほど酒井先生からもあったように、あまり大きい声で言わないというか、そこを意識しつつも、ただ、その場は整えていく。さっき言ったステークホルダーというか、そういった方にちゃんと理解してもらって、対話が対等にできるようにしていくという。非常に重要な指摘だったと思います。
酒井先生、お願いします。
酒井郁子
現場にIPファシリテーターというか、専門職連携実践促進者を育成することが、非常に昔から課題です。
具体的に何をするかというと、多職種カンファレンスの司会をする人です。何の職種でもいいですし、持ち回りでももちろんいいです。ただし、自分がそのIPファシリテーターの立場になったときに、職種縛りからいかに逃れられるか。看護師とか医師とか薬剤師とかって、やっぱり利権というか、絡みますよね。仕事をどっちがやるだのやらないだのっていう。そこから逃れた人じゃないと、中立的にファシリテートができない。さっきの堀先生の悩み事はそこだと思うんですよね。
各職種に公平に接することができるように、必要に応じてそういう態度を取れるという育成を今一生懸命やって。それは大学の教員にも必要なことですし、現場のカンファレンスの司会をやる人たちにも必要なことです。専門職というアイデンテイテイをもちつつ、必要に応じて、そのアイデンテイテイから脱却して(つまり職種縛りからのがれて)、各職種に対して公平にファシリテートできるという能力の獲得が、それぞれの専門職に標準装備されることが理想です。
私が今日ちょっと居心地が悪いのは、草場先生から、専門職連携の話をしてください、でも、看護の話もしてくださいって。これは非常に難しい両立なんです。専門職連携を推進する立場だったら、看護の立場を脱がないと難しいんですよ。全部に公平にやるっていうふうにしなければいけないから。そこら辺の意識の切替えができる人が多職種カンファレンスの司会をやる必要があるのではないかなと思います。
以上です。
草場鉄周
ありがとうございました。
なるほど。ファシリテーターという形で、やっぱりそれなりにきちんとトレーニングを受ける必要もあるかなと思いましたし、そう簡単には自分の持っている専門職意識は抜けないかなと思いますので。ただ、おっしゃるとおり、そういった方が中立的にちゃんとまとめていただくのであれば、一番いい形で議論が進むと思いました。
ありがとうございます。
それでは、齋藤先生、お願いいたします。
齋藤正美
臨床の現場ですから、やっぱり現場は日々動いています。
私が大学のときに、総合診療の専攻医のお医者さん、ドクターと研究の中でインタビューをしました。これはおもしろい結果が出ましてですね。専攻医の先生方、リハ職と話すのに実は非常に緊張しているそうです。なぜかというと、セラピストから医師は何でも知っているんだと見られると思うと、なかなか分からない。あと、リハの言葉が分からない。リハのほうは、医師だからリハのことはみんな分かっているだろうという目で見る。それがインタビューで出ましたけれども、どうしたらいいのかっていう話になったとき、実はカンファレンスも大事ですよね。ちょっと廊下で会うとか、何かのときにちょっとしたミニコミュニケーション、実はこれが重要なんだよと。
先ほど酒井先生も申されましたけれども、ちょっとしたコミュニケーションを取れる人、もしくはキーの人って実はいるんですよね。いるんです。いるんですけれども、そこにどういうふうにあてがうか。私だったら私が全部やれば早いんです、でも、それはだめなんです。そこにどういうふうに人をあてがっていくか。あの人に聞けばこれは分かるよね、この人に聞いてみな、そうするとそれが伸びるんですよね。ステレオタイプだけの人間ではうまくいかないです。それをうまくファシリテートしていく。先ほど酒井先生が言われたコーディネーターみたいなのがいれば。なかなか現実的にはそれらの仕組みができていないですから。それをやっていくということが、僕は現場の実践はそこだと思っています。そういうことが伝播していくと、1人が2人、2人が3人と、地道かもしれませんけれども、そういう活動がやっぱり重要かと思っております。
草場鉄周
ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、現場の中でミニコミュニケーションをしっかりする中で弱みをさらすというか、「実はよく分かんないんだよね」ということを聞いたりですね。逆に、困ったときには無理しないですぐに助けを求めるみたいなことが促進しますよね。そういった意味では、人間関係、顔の見える関係、会話ができる関係が非常に大事だというのは、全くおっしゃるとおりだなと思いました。
ありがとうございます。
では、小見川先生からお願いします。
小見川香代子
保険薬局だと、医療機関自体が別々になってしまって、現場でどう多職種連携を結んでいくかっていうのはなかなか難しいんですけれども、在宅の場合ですと、先生と話すよりも看護師さんと話したほうが何となく話がうまくいったりする場合があったりすることもあり。
正直なところ、やっぱり薬剤師なので患者さんの全体像がなかなか見えにくいんですけれども、看護師さんだと、看護をしている場所で一緒に会ったりすることもあるので、そういうところで連携を結んでいくっていう手段を選んでおります。
草場鉄周
なるほど。在宅なんかであれば、訪問看護師やケアマネジャーさんみたいな、医師以外の職種の方が全体を理解していることも多いので、非常に有効ですよね。
窓口をよく見極めるということかなと思いました。
それでは、ちょうどいい時間になってまいりました。
本シンポジウムですが、4人の先生方にお話しいただいて、かなり幅広い角度で議論ができたかなと思っています。
地域包括ケアを支えるといっても、簡単ではございません。まずは、例えば学部、大学時代からの多職種連携教育が必要だということも大変よく理解できましたし、現場に出て、現場での実践を通した多職種連携、そして、生涯教育みたいな形で、プライマリ・ケア認定薬剤師のような枠組みをうまく使って多職種連携を学んでいく仕組みもあるということで、本当に様々な形でこの連携をしっかり、地域包括ケアを実践する上での連携を形づくっていきたい、そういった思いのお話をいただきました。
改めて、4人のシンポジストの先生方に拍手をいただければと思います。
先生方、ありがとうございました。