研究大会

第10回地域包括ケア病棟研究大会

【シンポジウム】

世界の医療DXの現状から、これからの日本の病院情報システムを考える

「世界の医療DXの趨勢と日本の医療情報システムの将来」

【座長】高橋 泰 (国際医療福祉大学大学院教授)

皆さん、こんにちは。国際医療福祉大学の高橋です。

今日は、アメリカ、中国の状況を含めて、世界の医療DXの状況を説明しながら、今後日本の病院情報システムがどうなっていくかという話をまとめたいと思います。

4人の演者には、私も含めて15分から20分、20分を超えたらやめてくれというふうに言ってありますので、60分から70分、75分の間に終わって、残り15分から30分ぐらいの討議ができればと思っています。

スライドをよろしくお願いします。

まず最初は、デジタライゼーションとデジタル・トランスフォーメーションの違いからお話をさせていただきます。

デジタライゼーション、デジタル化。ここにありますように、デジカメが一番分かりやすいと思いますけれども、フィルムが電子基板、紙カルテが電子カルテになるというのがデジタル化になるだろうと。

トランスフォーメーション、何が違うかといいますと、経営や仕事のあり方が変わると。右下に書いてありますように、通勤していたのが在宅勤務とか、カーシェアリングとか、このように生活の仕方、仕事の仕方が変わるのがトランスフォーメーションになるわけです。

この写真は、私よく使うんですけれども、今、非常に大きな変革が起きていると。左は1900年のニューヨークの5番街で、走っているのが全部馬車です。先ほどの紙カルテから電子カルテに変わったというのが、飛脚が馬車に変わったような形で、これがオンプレミスと私が呼んでいるものです。

右のほうは1913年。たった13年間で5番街を走っているのが全部車になりました。これはモータリゼーションと呼ばれる変革を表しているんですけれども、この変化が、今日お話しするクラウド・ネイティブというシステムによってなされていると。

今日、1つだけ覚えてもらうとすると、このクラウド・ネイティブという世界が今世界を動かしているんだということをしっかり認識していただくということになろうかと思います。

本日の講演の目的は、医療DXというのはクラウドサービスを利用して医療の提供方法を変えると。これは技術的なほうからいいますと医療情報システムのクラウド・ネイティブ化ということになりますということで、このクラウド・ネイティブというのを徹底的に説明していきます。

そのためには、オンプレミスとクラウド・リフト、クラウド・ネイティブと、システムは大きく分けて3種類あると、この違いを認識することから始まります。

まず、オンプレミスというのは、今の病院情報システムがほとんどそうでありますけれども、院内にサーバーがあって端末がつながっている。これをオンプレミスといいます。プレミスというのが構内という意味で、オンプレミスでありますので、同じ構内、同じ病院内にサーバーがあるというイメージになります。

これに対抗するのが、インターネット上にあるクラウドというものを利用するシステムです。クラウドというのは世界中のサーバー、情報提供する側のコンピュータであるサーバーのネットワークを意味いたしまして、インターネットというのは、このサーバーに無数の端末がぶら下がっている形になります。この端末とサーバー及び回線、それからそれぞれに入っているアプリケーション、これを全部合わせてインターネットといいます。

ここのクラウドでありますけれども、世界中どこでも自由に情報が行き来しまして、例えばパリの端末で「パリのおいしいパン屋さんは?」と日本語で検索すると、恐らく日本に飛んでいって、日本のGoogle検索サーバーからそれに関する情報が飛んできて、この中で見て、ここいいなってクリックすると、今度はそこの情報があるパリのパン屋さんからこういう情報がおりてくる。世界中の情報が無料で行き交うというようなサービスがクラウドと考えていいと思います。

システムの2番目が、ここのオンプレミスをクラウドの中に入れて、これでつないで利用すると。これは今から説明するクラウド・ネイティブと分けて考えたほうがいいということで、オンプレミスをクラウドに持ち上げたということで、我々クラウド・リフトと呼んでおりますけれども、このクラウドの中に入っているシステムがあります。

それから、今クラウドの中にプラットフォーム、皆さんも名前は聞かれたことがあると思いますけれども、Amazon、Google、Apple、Microsoftという巨大プラットフォームはアメリカ軍、それから、中国のBATと言われているBaidu、Alibaba、Tencentと。

今日のシンポジウムの2番目の演者の小林さんにはこのアメリカのプラットフォーマーの状況、3番目の演者の鈴木さんには中国の状況をお話ししていただきますけれども、このプラットフォームというのはどんどんどんどん大きくなって力を持ってきていて、世界の情報をまさにリードするというか、支配しているというような状況になりつつあります。

先ほどのクラウド・リフトと違う、もう1つのクラウド・ネイティブって何かといいますと、このクラウドの中にガバメントクラウドとか政府クラウドとかって言われる特殊領域があると思ってください。この特殊領域の中で、決められた仕様でつくったシステムのことをクラウド・ネイティブといいます。だから、特別な場所で特別の仕様、これが今ものすごく大きくなっていて。何か特別というと、縁がないように皆さん思われるかもしれないけれども、皆さんスマホで使っている非常に賢いアプリは全部ここの上で動いています。

このクラウド・ネイティブというものがこれからどんどんどんどん大きくなっていって、病院情報システムもこことつながるべきであるというのが今日の趣旨になります。DXというのは、ここのクラウド・ネイティブという領域の上で起きているんだということになります。

DXの恩恵というお話を少しさせていただきます。

去年の9月にドバイとフランスに医療視察に行ってきました。それで、クラウド・ネイティブのサービスのすごさを感じた1つ目は、家に帰って2~3日したら、頼みもしないのにGoogleが、9月3日おまえはこういうふうに動いていると、何時何分にこんな写真を撮ったと。何か全てGoogleに首根っこを押さえられている感じもするけれども、便利は便利なので、その後は、これが欲しいときだけGPSをオンにして動くようにしています。こういうようなサービスもあります。

今回一番役に立ったのは、Googleレンズといいまして、分からない言語にぱっと掲げると答えが返ってくると。例えば、こちらにありますようにフランス語のメニューを撮影というか写して送ると、まず文字の部分が切り出されて、人工知能が、Risotto au fromage moisi bleuかな、要は青カビのチーズが入ったリゾットと日本語に翻訳して返ってくる。こういうようなサービスというのはまさにDXそのものですけれども、これがDXの領域で起きております。ドラえもんのほんやくコンニャクみたいだなというので、かなり実現していると。

ドバイで非常に印象的だったのが、ドバイは100近くの病院と数百のクリニックがあるんですけれども、全部が1つの電子カルテの上で動いているというような話もあります。

パリで一番印象的だったのは、ちょうど9月6日の日は去年10回やった全日病の講習会の4回目に当たりました。パリにいるから休もうかなと思ったんですが、いやいや、これはいいデモンストレーションになるなと思いまして、朝6時でありましたけれども、1時の日本に向かって部屋からZoomを使って講演したと。これは気分でいうとどこでもドアの雰囲気でありましたけれども、これもDXの恩恵と言えるわけであります。

以上をまとめますと、オンプレミスという、一般的な病院で置かれているサーバーが病院の中にあるシステム、それから、そういうシステムがクラウド・リフトという形でクラウドに上げられたもの、それから、今からもっと詳しく説明するクラウド・ネイティブと言われる、ガバメントクラウドという特殊領域というか、アメリカ政府がアメリカの情報を置いていいよという非常に厳しい基準を満たしたプラットフォームの上で、そこの決められた仕様でつくられたシステムと、そういう3種類のシステムがあって、電子カルテも3種類あるんだというようなことをぜひ覚えておいていただきたいと思います。この3番目は、こちらにつないでいる電子カルテが今後普及してくるんじゃないかなという話です。

クラウド・ネイティブをもう少し、歴史から見ていきたいと思います。

なぜこういう領域ができたかということですけれども、エンジニアの世界というのは医療とは違っていて、オープン・ソースという、自分の書いたプログラムをみんなに提供して、それを人が改良してどんどんよくしていくという風土があります。

アメリカも含めて、エンジニアの世界、競争するところは競争するが、共同したほうがよい分野は会社を超えて協力する風土がもともと強かったと。1990年代以降、インターネットを経由してサービスを提供するASPといわれる業者が、協力するところは協力すべきだということで、インターネット上の通信方法やデータの受け取りのガイドラインをつくったというような、こういう風土がもともとありました。

業界の雰囲気をよく表す都市伝説的な話ですけれども、1998年、当時まだできたてほやほやのガレージカンパニーであったAmazonのベゾフさんがGoogleのシュミットさんにたまたまセミナーで会って、Amazonの検索エンジンにGoogleの検索技術を組み込まないかというようなことを提案をして、うちはGoogle独自の検索エンジンを開発することを目指すという返事をしたという逸話があるんですけれども、こういうような雰囲気とか、こういう立ち話的なものがその後のクラウドの発展に非常に大きな影響があったんじゃないかと。

ベゾフとシュミットの最初の接点から年月を経て、Google、Amazon、Microsoft、Apple、Oracleは、米国の政府情報を扱うことができる政府クラウド、ガバメントクラウドの認定を受けると。この間、激しい企業間の競争を繰り広げると同時に、各社は政府とクラウドの要件を満たすために協力してガイドラインを作成するなど、標準化に向けた協力もしたと。

2010年代になりまして、この会社があまりにも大きくなって、世界各国の政府が企業と摩擦を起こすようになってきたと。特に個人情報とかの扱いが非常に問題になって、アメリカ政府や上記企業を含む米国の多くの多国籍企業において、海外のデータにアクセスする際の法的な問題とプライバシー保護の課題に対処することが課題になりまして、2018年にクラウド法という法律ができました。

この法律によって、上記のような会社が、データ保護の観点から海外のデータの合法的な使用を明確にし、政府や企業が適切な手続を踏んでデータにアクセスできるようにすると。技術的にもいろいろ縛りというか、強制に近い縛りがありまして、お互いプラットフォーム間のデータの互換性を担保しろと、システムの処理の遅さによるデータ通信の遅延をしてはいけないという形で、とにかく早く処理しろと、高いセキュリティレベルを担保しろというような足かせがありまして、この会社がどうしたかというと、協議して互換性を確保してさらにそれをしっかりするために、一番高速にできて互換性が保てるRUSTという共同開発言語をつくって、その後、これを使ってここのグループ内はシステムをつくっていくようになりまして、Microsoftの人に聞いても、Googleの人に聞いても、今はプラットフォームのこの辺の中身についてはほとんど差がないし、完全につながるから、必要なデータはちゃんと行き来するようになっていると言っています。

これをクラウド・ネイティブに従うと、1つは、先ほども言いましたように互換性が確保されております。今世界のシステムの使い方としては、Googleを電子カルテに置いて、病院情報システム、看護システムをMicrosoftの上に置いて、勤怠システムをAmazonの上に置いてと、いろんな機能があるわけですけれども、互換性が非常に高いので、いろんなところにあっても構わないわけであります。とりあえずA病院は電子カルテがGoogleの上にあって、Microsoftの看護管理システムとか、Amazonの勤怠システムと連携を取りながら動き、必要に応じて画像診断とか、それからG-mailとか生成AIとか、いろんなところを利用できるようなシステムが組めるようになってきているということであります。スマホも、クラウド・ネイティブの上でありますと何もしなくてもどこでもつながります。こういう互換性が確保されるようになっていると。

それから、システムの拡張性や冗長性、これは安くなるのに役に立ちます。

今のサーバーというのはものすごい能力があって、1つのサーバーを1つの会社で持つなんてもったいないので、1つのサーバーを分割していろんなところに利用できるような方式が一般的です。Aという会社が、コンテナというんですけれども、A社用のアプリをコンテナ1につくり、Bの工場は2番につくり、電子カルテメーカーが電子カルテとレセコンを3番目のコンテナに入れると。小林病院があったら、小林病院がここの電子カルテメーカーと契約すると、小林病院領域が当てがわれると。加藤病院、鈴木病院というような形でできてきますと、このような形で領域ができる。

電子カルテと共通したところは、電子カルテとレセコンは共通に使うけれども、病院の領域は別々になっていると、こういう使い方をするのが一般的というか、こういう使い方をするのがクラウド・ネイティブの使い方になります。足りなくなったら、自由にデータベースを拡張することができるという形になります。

支払いは、インフラ部分、共通部分はイメージからするとこのプラットフォーマーに払い、電子カルテの部分は電子カルテに払って、各領域に応じてまたプラットフォームに払うというような形になります。

この形でやりますと何がいいかというと、1つは、導入の費用が非常に安くなる可能性があると。上を開発するのは結構大変なので、仮にここに20億という非常に大きなお金がかかったとしても、各病院は専用端末が要らない、普通の端末にブラウザを入れるだけで済みますので、接続費が非常に安くなる。500万としまして、100病院で50億、それに20億足して割りますので、25億で100で割ると、1病院2,500万ぐらいでやれる計算になる。一方、下のオンプレミスの場合は、1個ずつつくる形になるので、60億から100億ぐらいになる。導入費用も非常に大きな差になるわけです。

それから、自由にデータベースの容量を足せます。これをやるためにリプレースってやらないといけないんですけれども、この方式でやるとリプレースも必要なくなってくるという形になります。

セキュリティに関しましては、これはクラウド全般の話ですけれども、1個1個の侵入を全部チェックする形になります。オンプレミスの場合は、中はいい人ばっかりで外に悪い人がいる、ここだけしっかり守るという考え方になりますので、中の1個がやられると全部やられちゃう可能性がある。ところが、クラウド型は1個ずつここにつながって全部チェックする形になりますので、たとえ1個の端末が感染したとしてもほかには広がらない。少なくとも電子カルテはやられないという形になりますし、さらに、ガバメントクラウドという認定を受けるために、日本は東日本、西日本、アメリカの場合は西部と東部にデータセンターを置いて、バックアップセンターも置きなさいという形になっていて、1個がやられてもちゃんと動くというのは、こういうことが義務付けられているという形になっています。

このクラウド法に準拠して作成されたシステムが、クラウド・ネイティブと言っていいと思うわけですけれども、これが2018年にできました。ということで、ユーザーから見ると、それぞれのPaasと書いてありますけれども、AmazonとかMicrosoft、それからGoogleの仕様に従ってシステムをつくる。これでサーバーから発信するという形にしたものがクラウド・ネイティブ電子カルテになるわけで、こういうつくり方をすれば、今言ったようなことが実現するわけです。

日本は今、国別デジタルヘルス競争力で非常に低いという形になっておりまして、ヘルスケアも評価が低いんですけれども、クラウド・ネイティブというのはクラウドの中の一部でこういう形があります。外がクラウド・リフトになるわけですけれども、これがどんどん今大きくなって、オンプレミスの比率が小さくなってきていると、こういう形になっていて、先進国と後進国の差はこのクラウド・ネイティブの比率の差と言ってもいいんじゃないかなと思われるのが現状です。

最後に、日本でなぜクラウド・ネイティブが普及していないかということでありますけれども、原因は、インターネットとつながないという、閉域網という決断を今世紀の初めにしてしまったと、それでガラパゴスになってしまったというのが最大の原因かと思います。技術者もほとんどこのクラウド・ネイティブの開発、プラットフォームの上で開発するということをしていないので、このエンジニアがいないということが非常に大きな問題になっています。

日本の病院は今後どうすべきかというと、ガバメントクラウド上で急性期病院に対応できる電子カルテを開発し、それを多くの病院が共有して使えばいいというのが結論になるわけです。

今日の4番目の東先生の発表のときに、100床クラスのクラウド・ネイティブ電子カルテがもう出てきているんですけれども、200床以上がないと。何でないかということを最後に説明して、私のプレゼンを終わりたいと思います。

これは私が勝手に想像して書いたベンダーの本音ですけれども、世界情報産業がWEB中心に移行していることは薄々気づいていると。でも、この医療情報業界にはクラウド・ネイティブに対応できるプログラマーもいないし、やってもリスクが高いし、できるならやりたくないなと。病院は高いサーバーもストレージも保守料も払ってくれるけれども、クラウド・ネイティブに移行すると、ハードを売るビジネスや保守料もなくなり会社の収入が激減すると。病院が一日でも長くガラパゴスの世界にとどまり、クラウド・ネイティブなシステムが世界の潮流であることに気づかないでほしいと。これがベンダーの本音ではないかなと思います。

時間が来ましたので、ここで終了したいと思います。

ここから先、小林さんに、GoogleとAmazonとMicrosoftが考えて、今後何をしそうかという話を今からしてもらおうと思います。  小林さん、よろしくお願いします。

「Google、Amazon、Microsoftの世界戦略と医療DX」

【シンポジスト】 小林 土巳宏 (株式会社メモリ代表取締役社長)

では、バトンタッチを受けまして、ここから小林から御説明させていただきます。MEMORIの小林と申します。よろしくお願いいたします。

今日は、Google、Amazon、Microsoftの世界戦略ということで、それと医療DXの関係性というお話をさせていただこうと思います。

最初ですけれども、世界のクラウドのシェアを見ていただきますと、Microsoft、Amazon、Googleと3社あるんですけれども、実はIBMさんだったり、Salesforceさんだったり、中国系のAlibabaさん、あとSAP、Oracle、中国系のChina Telecomさんとか、日本のNTTも頑張っています。こんな感じで、世界にはまだまだクラウドサービスを提供している会社があると、その中で今日はこの3社に絞ってお話をさせていただきます。

これは2023年、昨年の6月の情報かな。3社でこんな形で、OracleさんとかAlibabaさんもあるんですけれども、下を見ていただきますと、提供しているサービスですね、皆さん結構なじみが深いんじゃないですかね、NetflixとかSalesforceとかNIKEとかコカ・コーラ、これはAWS、Amazonさんで提供していると。あとは決済サービスなんかで使われていたPayPalさんとか、P&GさんはMicrosoft。Googleになるとやっぱりデータベース、ビッグデータの解析が中心になるのでもう少し専門的になってきます。あと、Oracleはもう完全にデータベース会社ですので専門的なサービスというところですが、キヤノンさんとかゼロックスさん、いわゆるシステム開発をやっている会社さん、コンビニエンスストアさんでFAXとかコピーとかできるじゃないですか、ネットプリントというシステムはゼロックスさんですよね、セブン‐イレブンさんはゼロックスさん、ローソンさんがキヤノンさんだったかな。システムをつくっている会社ですね。メーカーというよりも、システム会社というふうに私は認識しているんですけれども。あと、ほかにもあるという感じです。

その中でも、Googleは、売上げケースは少ないですけれども、実はICT分野に関する投資がパーセンテージとしては43%と高い。当然Amazonさんも40%超えているんですけれども、こんな感じです。

2022年と2023年の売上高の推移ですが、前年比で、Amazonさんだと16%増、Microsoftは27%増で、Googleはやっぱり一番伸びていますよね、28%増ということですごくシェアを伸ばしていると、売上げを伸ばしているという形です。

個別の3社を見ていくんですが、Amazonは年間売上げ7兆円。Amazonは、何といってもマーケットプレイスを提供していますから年間で300億アクセス、これの手数料収入がメインの収入です。その手数料の一部を当てて、いわゆるawsというクラウドサービスの環境を用意してサービス提供するというのが事業モデルになります。ですので、今後もこの300億アクセスというのは年次年次どんどん増えていくのではないかと思います。

ちなみに、ものすごく参考情報ですけれども、今日は全然中国のことに触れるつもりはないんですが、1つだけ。Amazonさんの次期検索エンジンは中国系のBaiduさんでもう内定しているので、恐らく1~2年の間にAmazonの商品検索のエンジンがBaiduさんになってしまいますので、個人情報が完全に中国クラウドのほうに格納されていくというのが始まってしまうというところですね。こんな感じで中国の、提供している、運用している、運営しているところも中国の会社というところですね、中国資本が入っていると。

Microsoft、2兆円です。ここは、今はもうOSというよりも、どちらかというとオフィスとかMicrosoft365みたいなライセンスビジネス。いわゆる企業法人ユーザーがメインになってきまして、その法人ユーザーに支えられたライセンス収入、いわゆるIDですね。桁数16桁とかの。あのライセンス1個当たり幾らというビジネスをやっています。それでアジュールもしくはアズールというんですけれども、クラウドサービスを提供しているという形になります。

今度はGoogleですね。Googleは4兆円。実は、MicrosoftよりもGoogleが売上げ的には高いです。ちなみに、ここ、Alphabetって書いてありますけれども、Alphabetという投資グループが投資している1社がGoogleです。同じ資本グループに例えばYouTubeさんとかがあるという形で、大本はこのAlphabetという投資グループです。ここが投資しているのがGoogleになります。

ここは、このGoogle、YouTubeに代表される広告収入です。YouTubeとかGoogleとかでロゴが出てきて、ロゴを挟み込んだりとか動画が出てきたりとかしますけれども、あれの広告収入ですね、スポンサー収入というやつがメインになります。あと、実はMicrosoftのBingとか、ほかの検索エンジンのエンジン提供もしているので、Google検索エンジンって表に出てこないんですけれども、検索エンジンに関しては結構Googleはここの部分ではシェアがあるという形です。

これが一応ベースになるんですけれども、3社をちょっと比較させていただくと、売上げ的には1位がAmazon、2位がGoogle、3位Microsoftみたいな感じです。

日本に対する投資額ですけれども、これはあくまでも投資インベスターから入手した情報なので、推計でしかないんですけれども、実際本当にこの額かというのは、少し数字にはまだクエスチョンがつくんですが、一応私がインベスターから入手した額ですと、日本向けの投資というのが、Amazonの全投資額が年間270億ぐらい、Microsoftは年間128億、Googleは年間257億ということで、やっぱりAmazonとGoogleは結構日本市場に対して力を入れているという形です。

クラウド事業に関しては、Amazon9億、Microsoft6億、Google11億ということなので、やっぱりシェアが一番少ないですね。大体30%から35%、20から25%、今は10%から14%ぐらいですね、シェアが。ですけれども、このシェアが小さいところが頑張っていると、すごく日本に投資をしているという状況です。

今後3年間の計画ですけれども、2024・25・26の3か年計画で1年ごとの平均値を取ると、クラウド事業に対して、Amazonは13億、Microsoftは5億、それからGoogleは19億、約20億ぐらいの投資をしてくる。要は、Googleは結構本気で日本に対してクラウド事業展開をしようということで仕掛けてくるという形です。

ちなみに、クラウド事業のスタートは、一番古いのがAmazonで2006年から、もう20年近くなります。一番新しいのがMicrosoftで2010年、Googleに関しては2008年からという形です。

今のクラウドのデータセンターは、Amazonは東京、大阪の2か所です。Microsoftは、東日本が東京、埼玉、西日本は大阪です。Googleは今2か所ですが、実はこれ、非常に内々な情報ですけれども、2024年から5か年で一応国内5か所増設する、増築する予定があります。

これですね、ちょっと背景がありまして。日本って今8地域ありますよね、北海道、東北、関東、それから近畿、中国、四国、九州、沖縄、その8地域を5つのパートに分けて、47都道府県のビッグデータクラウドを、いわゆるこれがガバメントクラウドですけれども、ガバメントクラウドを47都道府県集められるように、全国5地域に分けてデータを、ビッグデータを回収する、集めるという計画をしている。

これは、マイナポータルが今3つなんですね、データセンターが3つ分割されているとか、支払基金と国保連とか、データセンターが分割されているというのがあるんですが、同じプラットフォーム、技術、それからデータベースの仕様を、全国5か所に、47都道府県を5地域に分けてGoogleさんのデータセンターで集積して分析するというのをどうも仕掛けるようです。

これの背景ですが、Amazonさんのクラウドでセキュリティインシデントが結構起きたんです。これ、日本国内で起きたものなので軽微ですけれども、海外ですと、Amazonのクラウドデータセンターのデータベースに直接ハッカーがハッキングをして、暗号化してしまって、身代金を払わなくちゃいけなくなったというのが実はAmazonさんで発生してしまいました。ついこの2か月の間なんですけれども。そういうことがあって、さっきもありましたけれども、データセンターのセキュリティ性の甘さの改善というのが今Amazonさんの課題になっていまして、そこが改善されないと、いわゆるナショナルデータというかビッグデータを集積するようなところにいけないんじゃないかというところで、何かGoogleのほうにちょっと話が寄っていったというところです。

今後のシェアの予測です。

今、クラウドのポジションはこんな感じで、Googleさん3位です。Microsoft2位で、圧倒的に大きなAmazonですが、結構ここはここで、Amazonは多分シェアそのまま維持するか、もしくはちょっと小っちゃくなるかな。問題は、3位がぐぐっと大きくなってくるであろうと、5年先の予想なんですけれども。Microsoftさんはビジネスユーザーがそうそう減りはしないのでこれぐらいと。これは世界市場。

国内市場は、特に医療系は結構やっぱりGoogleさんで力を入れようとしているカンパニーが多いという情報も聞いています。最初はAmazonで開発しようなんていうところもあったんですけれども、最近聞いた8社は、全部Googleでやりますと言っていたので、結構ここのシェアが伸びてくるかなという予測です。

あと、標準化の取組ですね。これ、国内で日本語の標準化の仕様が出ていなかったものですから、アメリカから引っ張ってきたんですけれども、一番上は強みですけれども、いわゆるawsのユーザーですね、それからアジュールはここのライセンスビジネスの企業ユーザー、Googleに関してはビッグクラウドですね、データ集積と解析、アナリシス、この辺が強みだと。

弱みですけれども、Amazonは自社評価で出していたんですけれども、まだサービスが成熟していなくて初期段階。そうですよね、クラウド自体がプラットフォームとして認識されたのがクラウドがプットフォーム化してからなので、2018年以降。まだ6年しか経っていないので、成熟期にまだ達していないので、200以上今クラウドのサービス提供をしているんですけれども、まだ成熟期に達していない。これは確かにそのとおり。

Microsoftは、消費者向け、ビジネス向けは多いんですけれども、コンシューマー向けが少ないというところ。

Googleはデータ解析収集がメインなので、割と断片化されているサービス。統合化されていないというところが弱みと言っています。これは各社の課題で、今後解決しなきゃいけないところです。

3社とも、実はヘルスケアのプラットフォーム事業を今まで展開していました。Microsoftが一番長くて2020年まで提供していて、AmazonもGoogleも2006年、2008年にもう打ち切ったんですけれども、PHRの事業をやっていたりしていたんですけれども、今はここをまたリプレースしてやるということで、一旦サービスは止まっています。

今後ですけれども、それぞれの強みを活かすと、例えばAmazonであると医薬品の宅配だったり配送ですね、それから遠隔医療なんかに進出すると。従来の荷役というサービスがあるので、そのプラットフォームをまたさらに利活用して、クラウドサービスとして圧倒的なシェアのもとで発展させていくということ。

Microsoftはやっぱり、医療系といってもこれはTeamsのプラットフォームで、いわゆる遠隔面談とかやっていたりします。あと、Copilotという新しい生成AI、自動埋込型検索エンジンがあるので、それをWindows11に標準化していますけれども、そういったものを活用したプラットフォームを医療機関向けに導入するということで、そのクラウドサービス。電子カルテとかいうものではないです。サービスとして提供するという形。

Googleは、引き続きビッグデータの集積と解析を得意とするので、そこら辺。あと、Googleに関してはセキュリティがとにかく高いですね、このセキュリティの高さを担保して展開していくというところを狙っています。

実は、今国内に4社ガバメントクラウド、要は政府認定のクラウドがあるんですけれども、なぜその4社が政府認定になったか。Amazon、それからMicrosoft、GoogleプラスOracleで、これはクラウド標準化の関係団体の図ですが、緑色は全部アメリカの団体です。日本はこの赤ですね。なので、ガバメントクラウド認定の査定要綱、いわゆるガイドラインを遵守するというと、ほとんどグローバルスタンダード、ほぼアメリカなんですが、アメリカのスタンダード基準を満たさないと認定されないという裏側の状況があります。なので、今のところは4つ、アメリカの会社が認定されていると。

国産クラウド、さくらインターネットが今年の12月31日までに審査を受けて、来年からガバメントクラウド認定されるかというチャレンジをしていますが、そのさくらインターネットがガバメントクラウドに認定された後に、国内ですと富士通、NEC、それからNTTデータ、IBMがチャレンジするということを、今もう手挙げをする準備をしていると聞いていますので、国産クラウドも今後増えてくるであろうという形です。

ただし、この連携の、いわゆる団体ガイドラインというのはもうほぼこれ動かせないので、各社ともやっぱりアメリカのグローバルスタンダードに準拠した形で、技術的には準備をしてくるだろうというふうに思います。

これは3社の標準化の状況です。

インフラストラクチャーだったり、データだったり、セキュリティ、APIとサービス、運用管理に関しては、各社が各社とも、先ほど高橋先生にありました2018年クラウド法に準拠して、それぞれ標準化がもうできております。

特にこの4番目のAPIとサービスのところに、サーバーレスコンピューティングというのがもう明確にうたっています。いわゆるハードウエア、病院の中にサーバールーム、施設の中にサーバールームを置いて、その中にサーバーの機器を置くという形ではなくサーバーレスで、いわゆるネットワーキングでアクセスする仮想マシンに対するものをもう標準化というふうに明確に書いてあるので、実は従来型のオンプレミスが方向性を変えなきゃいけないというのはクラウド法に明確に書いてありまして、これがサーバーレスコンピューティング。これが今ありますので、いわゆる今後サーバーレスコンピューティングは標準化になっていきますということが明確に言えるという形になります。

これは、今日本で、医療DXに対しては例えばリソース管理ができますよとか、効率的にできますよとか、導入までの時間短縮になる。いわゆるハードウエアの設定が要らないですから。それから、データの一貫性であったり、データベースが信頼性高く、これセキュリティが高いというのがあります。あと、コンプライアンス遵守、統合化、インターオペラビリティだったり、サーバーレス。それからモニタリングとログ。商標はデジタルプラットフォーム、いわゆるクラウドプラットフォームになった場合に、ログのデータをそのままレポート化して、場合によってはその構成比を出さなきゃいけないみたいなところまで、今デジ庁と厚労省は検討していますので、今後はログからのレポーティングというのも商標管理していかなきゃいけないとなってくるのではないかなと思います。

ということがありますので、今後に向けてなんですが、ざざざっと書きましたけれども、一丁目一番地ですが、いわゆる電子カルテのクラウド化。先生はクラウド・ネイティブとおっしゃいましたけれども、クラウド化ですね。それからHER・PHR、この辺も標準化してくるだろうと。あと、ソリューションですね。一番遅れているのは、電子カルテメーカーがクラウドにしても、いわゆる医療機器とかデータ連携とかいったのがクラウド化しないと全然これがつながってこないので、この辺も急がなきゃいけないという形です。

あと、AIであったり、いろんなアプリケーションを活用したもの、それからビッグデータの集積解析がありますので、こういうケアだったりとか。事務系のワーキングは、最近ChatGPTとかいろんなものを電子カルテに組み入れてサマリーの自動生成なんかもさせていただいているので、結構この辺は3年以内には完全に電子カルテのほうでも標準化してくるのではないかなと思います。

最後にちょっと1つだけ。実はDXが進まない理由です。

これ、ダイヤモンド社さんが出したんですけれども、一般企業で30代40代の管理職の方が、DXを推進してくれと言われたら、面倒くさそう、大変そう、自分に務まるか不安、やりたくない、関心がそもそもない。いわゆるネガティブなものが44%。さらに言うと、管理職であろう方が関わりたくないと思っているというところなので、医療機関においても一般企業もそうなんですけれども、やる気を出して難しいこと、やったことがない分野にチャレンジするという人材を育成しなきゃいけないというのが、実はDX推進では最大のボトルネックになってくるかなというところでございます。  

簡単ではございますが、アメリカの状況とDXの状況を御説明させていただきました。ありがとうございます。

高橋泰

小林さん、どうもありがとうございました。 続きまして、鈴木さん、よろしくお願いいたします。 鈴木さんは中国の状況の説明をしていただきます。

「中国の医療DXの現状

鈴木将史(アビームコンサルティング株式会社 ダイレクター)

では、よろしくお願いいたします。鈴木と申します。

私が何者だというところで、簡単に私の会社の自己紹介になるんですけれども。

もともとアメリカの会社が出発でできた会社ですけれども、今は純日本の会社になっておりまして、7,500人ぐらいのコンサルタントがいるんですけれども、7,500人のうち1,000人ぐらいは中国におりまして、比較的アジアでの仕事を多くさせていただいている会社になります。私はそこの医療系のリードをさせていただいているんですけれども、今日はちょっと中国のお話をさせていただくということで。

皆さん御存じのとおりだと思うんですけれども、中国14億人。数字にいろんな差があるという報道も最近もありますけれども、増えてですね、今ちょっと減少に転じ始めているデータがかなり多くなってきていますけれども、とにかく非常に高齢化の進むスピードが速いということが言われております。

あと、これは少し古いデータですけれども、2000年から2015年にかけての医療費の総支出と政府の負担割合を見ているものです。ざっくりこの15年で10倍ぐらい医療費が増えており、政府の負担が6割を超えてしまったというようなことが中国でございます。

政府の方のお気持ちに立っていただければと思うんですけれども、一人っ子政策をやっておりましたので、この先、非常にいびつな人口ピラミッドをしております。非常に急速な高齢化が進む。お医者さん、看護師さん、医療従事者の方がそもそもちょっと少なかったと、これは当然すぐに増やせるわけではございません。

あと、地域格差ですね。上海や深圳、北京なんかに行っていただくと非常に都会だなと私も感じますけれども、内陸のほうに行くとこれが全く違うと。このあたりが非常に政府の悩みの種でありました、医療に関してです。

そこで彼らは何を考えたかというと、こういう5か年計画というのを昔からつくっていたんですけれども、2009年ぐらいからいろんなものがさま変わりしまして、先ほど来出ているクラウドのお話でいきますと、ちょっとクラウドという言葉は出ていないんですけれども、2015年の時点で、セキュアな環境で医療情報を相互に接続するというのを目標として決めて進めております。その後、病院間の連携、ビッグデータの統合とか、ちょっとこれ21年できていないんですけれども、国民医療情報プラットフォームの実現みたいなことを政府がかなり大きな声で打ち出しているというようなことで、政府の動きが非常に活発だと思っていただけるとよいのかなと思います。

これ、米国と中国の医療情報技術と書いていますけれども、このあたりの領域を年表にしてみますと、アメリカを見ていくと、1990年代ぐらいにかけてHISとか電子カルテとかいろんなものができて、そこからぐぐぐっと連携が進んで、二次利用の仕組みなんかが今できていると。一方、中国は、恐らく2010年過ぎたあたりから一気にこれを進めました。私が最初に中国を訪れたのって、2000年よりもうちょっと前かもしれませんけれども、その頃はトップ病院でも電子カルテとは程遠いというか、なかなか厳しい状態だったんですけれども、今行くともう全く、そもそも病院の中がさま変わりしていると。これ、何事も後発の利というのがあるかなと思っておりまして、米国が長年かけて進めてきたことを、当然中国の方々は横目で見てですね、短期間で一気に進めたと。これが現状なのかなと思っております。

それでですね、ゲームチェンジャーの誕生と書いておりますけれども、中国のIoTの話をすると、このBATHというのがよく出てきます。お聞きになられたことがある方々もたくさんいらっしゃるんじゃないかなと思うんですけれども、Baidu、Alibaba、Tencent、HUAWEIの頭文字を取った企業です。

先ほど、小林先生のところにAlibabaが出ておりましたが、MicrosoftさんやAmazonさんと比べるとちょっとだけ規模は小さいんですけれども、どこも非常に伸長している会社さんです。祖業はIoT系の会社さんですけれども、今ですと金融はもちろん、クラウドもそうですし、自動車なんかもつくっているところもありますし、行政基盤、いろいろな分野に進出をしています。HUAWEIさんだけ、医療はそんなにやられていないかなと思うんですけれども、先生のお話にあったBATというのは、この上位3社が非常に熱心に取り組んでいると。

Alibabaという会社、Eコマースですね。ネット通販のあたりから始められた会社ですけれども、近年、グループの中にいろんな会社をつくっていまして、それが金融、医療がこのAlibabaヘルスとか、これは検診センターなんですけれどもこういうところですとか、小売、あとエンタメとかドローンを使った物流ですね、こういったもの、様々な領域に進出をしております。

これは何をしているかというと、もともとはただの通販の会社でしょと思われていたんですけれども、通販のデータで何が取れるかというと、人が買ったものとか、あと支払い力とかいろいろ、ファイナンス能力とか分かると思います。それに医療のデータが入ってきたりすると、要は人間一人のデータがかなり細かく見られると。それは、後からも出てくるんですけれども、行く行くとてもいいことがありまして、彼らはECだけではなくて、いろんな領域に進出をして、人の情報をとにかく全部取ろうということをされています。

医療関係で見ると、BATもあるんですけれども、その下にまた同じくらい大きな会社さんがありまして。ここに書いているのは祖業ですね。もともとNeusoftさんなんかはスマートシティとかモビリティ、自動車の会社さんが医療に進出してきたり、Eコマースですね。平安保険さんというところは保険を最初やっていたんですけれども、これも後で事例をちょっとお出しします。非常に進んでいる。こんな巨大企業が各々、京東商城だけはちょっと小さかったかもしれませんけれども、数兆円規模の会社さんが医療にどんどん進出をしてきているというところであります。

ちょっとこれ見づらいカオスマップですけれども、いろんな共通インフラとか基盤システムとか、人工知能を使った医療とか。これを見ていただくと、ちょっとだけこのあたりにGarminとかApple、少し米国系の企業があるんですけれども、基本、外資規制をやっておりますので、国内の企業がどんどん、あれだけ広い市場ですので伸びているというようなところでございます。

今日、実例を3つほど御紹介しようと思うんですけれども、まずは先ほど来出ているAlibabaですね。Alibabaは、ざっくり言うと、最近健康診断の最大手を購入しまして、もともとユーザーはいます、Eコマースのユーザーがいるのを、そこから相談を受けると健康診断に振ったり、ウェアラブルのデバイスを使って血圧を取ってそこからアドバイスをしたり。日本だとちょっといろいろ規制もあってできませんけれども、AIのセルフ診断をしたりですね、こんなことをやりながら、かかりつけ医と書いていますけれども、いろんな病院に患者さんを振っていくと。ここのプラットフォームもAlibabaが運営していますので、この人たちがぐるぐるぐるぐる回るごとに、Alibabaにチャリンチャリンと言うとちょっとおかしいかもしれないですけれども、お金が落ちていくような仕組みができています。

2つ目はですね、先ほど申し上げた、もともとスマートシティとか自動車のDX系をやっていたNeusoftさんというところですけれども、ここはワンストップサービスというようなことをずっと標榜していてですね、これ、ちょっと中国語なのであれなんですけれども、病院とか地域のクリニック、衛生部というのは保健系の行政のところですけれども、そういったところとかですね、救急車の連絡システムとか、予約とかですね問診、あと検査、入院とか支払い、保険請求、これを全てワンストップでつなげた仕組み。当然クラウドです。そもそも、オンプレミスという発想は中国にはほぼないと思うんですけれども、これを一通り全部一括納入するようなものを売っていまして、これをやるとその地域が、社会主義の国ですので基本的には公的な施設が多いんですけれども、医療情報を一元化できるため、非常に効率化を図ることができると。私もここの救急車のシステムを見たことがあるんですけれども、非常によくできていて、救急車の中からいろんな情報がデータセンターに飛んで、そこからいろんな指示が出たりですね、救急車をとにかく効率的に運営するようなことができると。そこで受けた人は、最後、保険請求まで一気に一つのシステムの中で終えられてしまう。こんなようなものを、自動車とか町のシステムをつくっていたような会社さんがつくってしまって、今、結構シェアを伸ばしていると。

3つ目は、ちょっとまた毛色が違うんですけれども、平安保険さんという、中国でも最大規模の保険会社さんですけれども、これはまたいろんなデータを彼ら持っておりまして。コロナのときにいろんな大問題が起きましたので、今彼らが何をやっているかというと、平安スマートシティというヘルスケア系の子会社がいろんな医療データを集めましてそれをダッシュボード化して、AIなんかを使って地域の医療需要予測サービスなんかを展開しています。もうすぐ感染症がこのくらい増えるよとか、ここにちょっとリソースが足りないよみたいなものが、これはあくまでデモ画面なのでちょっと見づらいところがあるんですけれども、こういったものを用意しているというようなところが現在の中国です。

繰り返しになるんですけれども、中国、すばらしいところもあるんですが、内陸部は本当に、時々行かせていただくとやっぱりこんな感じで動いています。これ、向こうの新聞から取ったんですが、去年の写真なので、まさに今もこんな感じだと思っていただければと思います。

あまりクラウドに触れなかったんですけれども、まとめに入ります。

そもそも、こういうことが中国の背景にありました。リソース、医療従事者の方はいません。国土も広大ですし地域格差があります。一人っ子政策の影響もありました。医療費どんどん増え続けます。政府としては、もうとにかく何かをせざるを得ないということであります。また、医療費が増えるということは、ベンダーさんとかですね、その周辺にいるビジネスをやっている人たちにとっては非常に魅力的で、一部働きかけもあったんですけれども、そうすると政府が一気に目標値とか規制を変更してしまいました。日本のように皆さんの意見を聞いてこつこつやるというよりは、やると決めたら一気に彼らはやりますし、まず入れ替えてみるというようなところから始めますので、非常にここが早く進んだと。オンライン診療やAIのところというのは、医療リソース不足とか地域格差を埋めるのに非常にマッチして、一気にこのあたりが進んでいったと、大きなドライバーになったということが言えるかと思います。

これがサマリーですね。

繰り返しになるのでここは省きますが、とにかく政府がDX化を進めようとした。

2つ目、日本もそうかもしれないですけれども、日本以上に医療専門の企業というよりは、クラウドとかデータを扱う人たちが、要は、人の情報や活動を面で押さえたかったので、Eコマースをやっていたような人たちが一気にこっちに入ってきて、当然クラウドを用いてデータ化していったと。

3つ目ですけれども、先ほど、何回かお金の話が出てきたと思うんですけれども、BATさんのような大きな会社さんは、実は大病院さんだけではなくて、中小企業や地方も非常に見ておりまして。これは何かというと、彼らにとってはユーザー数がとにかく命です。当然お金持ちはうれしいんでしょうけれども、そこに医療施設の規模とか、個々人のお金の支払い能力とかはあまり関係なく、とにかくユーザー数を増やしたいと。AlibabaのEコマース事業は、地域のパパママ店舗さんを取り込んだような事例がたくさんあるんですけれども、同じように大病院が中小を食べるというのではなくて、中小にもこういったクラウドサービスを提供して、オンライン診療やAIを用いたサービスを使うことで取り込みをやっているというようなところであります。当然、政府の後押しや規制緩和もあったのでここが一気に進んで、まさに進んでいる状況であります。

これが本当に最後です。資料にするにははばかられたので口頭で補足させていただこうと思うんですけれども、彼ら、ここ数年、中国国内でいろんな成功事例をどんどん展開しております。今ですね、これが東南アジアとかアフリカに行くと、名前がAlibabaさんやBaiduさんではないですけれども、中身を見ると彼らのやっているようなことがかなり展開されていると。先ほどAmazonの検索エンジンのお話もありましたが、彼らはどんどん世界に出ていこうということで、欧州と米国は報道もありますようにいろんな問題であまり主戦場にはしていないと思うんですけれども、それ以外の国々では、先ほど申し上げたようなことをどんどん現地語で進めているというような状況でございます。

やはり彼らは米国を見て、技術者なんかも一部囲いながら、非常に短期間でこういったことを進めていったと。当然、クラウドが前提になって、データをとにかく多く、たくさん動かすということを進めているというのが今の中国の現状かと思います。  お時間が来ましたので、以上にさせていただきます。

高橋泰

鈴木さん、どうもありがとうございました。

今のお二人は世界の状況で、米と中が世界のこの市場を牛耳って何をしてるかって報告があったんですけれども、急に今度は現場の話になります。

東先生の病院は、御自分でも説明されると思いますけれども、日本で初めてクラウド・ネイティブ型電子カルテを導入した病院で、明日の日本の病院の姿が東先生の話を聞くことによって見えるんじゃないかと思います。

それでは、東先生、よろしくお願いいたします。

「日本で初めてクラウドネイティブ型電子カルテを導入してみた
~Henry導入の効果と未来~」

東 大里(医療法人正幸会正幸会病院理事長・院長)

皆様、こんにちは。正幸会病院の東大里でございます。

 本日は、「日本で初めてクラウド・ネイティブ型電子カルテを導入してみた~病院DXのパイオニアになるで!~」ということで、大阪府の門真市からやってまいりました。

 一病院がこのような気概を持って、病院DXをどのような経緯で、どういうふうな考え方で進めているのかということで、興味を持っていただけるような内容でお話ししたいと思いますので、どうぞ聞いてください。

 私の自己紹介ですが、うちの病院は56床の入院病床を備えた内科系の病院でございまして、私、2005年に大阪大学を卒業して、14年前に正幸会病院の院長に就任したと。当時医者の5年目でして、私は父からそのときに継承した、いわゆる2代目の世襲院長でございます。

 当然ほぼ全てのスタッフの方よりも年下であった私は、まだ31歳でしたので大変なプレッシャーも感じていたんですけれども、せっかく自分のような若い世代が引っ張るからこそできることに取り組もうという気概でやってまいりました。

 私が病院のデジタル化を進めようと思ったきっかけがございました。

 忘れもしない、2015年のある夏の日、当時2名体制だった外来事務スタッフの2名ともが「私たち明日辞めます」と突然言って、本当にいなくなってしまったという事件があったんですね。私は、これを私たち明日辞めます事件と呼んでおります。私は半泣きになりながら、残されたいろんなメモを見て、院内を歩き回って業務の立て直しに奔走したわけですけれども、そのときには業務の属人化のリスクを感じまして、病院成長戦略の柱をデジタル化にしようというふうに決意いたしました。

 そのように一旦方針を決めてからは、その後、投資の判断をしやすくなったりとか、みんなに説明しやすくなったりとか、何よりも自分が納得できる決断をスピーディーに行えるようになったということがよかったと思います。

 私たちのデジタル化年表ということですけれども、1983年にうちの病院が開設されて、その後父から継承して、私たち明日辞めます事件が起きて、そしてすぐに行ったのがオンプレミス型の電子カルテの導入でした。そして、その後、オンライン診療をやったりとか、クラウド型電子カルテの導入の調査をするというような流れになってくるわけです。

 こちらは現在のうちのナースステーションの状況です。42インチのモニターパネルが7枚天井につけられておりまして、そこの真ん中でナースのリーダーが常に病院内の情報、例えば監視カメラの情報だとか、指示の画面だとか、位置情報とか、バイタルとか、そういったことを瞬時に一つの場所で情報を得ることができる。ここに非常に価値を、意義を感じておりまして、このようなナースステーションのつくりになっております。スペースⅩ社の管制塔のようなナースステーションじゃないかと自負しております。

 当院が成長戦略の柱、デジタル化を進めるに当たって、2つのポイントというふうに思っておりました。

 まずは、患者の医療体験の向上というところで、オンライン診療をいち早く導入するということをしました。

 2018年当時に保険収載が初めてされまして、オンライン診療というのは当時新しいもので、そして24時間いつでもアクセスできますよとか待ち時間がありませんよとか、そういったキーワードが並んだものですから、うちはそれをいち早く取り入れて、大阪初のオンライン診療を行う病院になろうということで、まずはオンライン診療をやるということをしました。

 その後、クラウドサービスを導入しようと。これは医療のサービスだけじゃなくて、医療周りで、例えば一般の企業でも使われているようなクラウドサービスというのも積極的に導入することで、業務の効率化とかいったことを図るようにしてまいりました。

 これが現在うちの病院で導入しているクラウドサービスの一覧ですけれども、上のほうは医療系ですね、WEB問診とか、もちろん、いろんなオンライン診療のサービスとかあります。あと、AI画像診断、読影支援というのも入れたりとか、コミュニケーションのツールとか、案件管理とか、経理、総務、こういったことにまたがる各種のクラウドサービスを入れて業務の効率化を図っております。

 院内のできるだけ全ての業務でアナログ業務が行われていないかどうかということを常に見つけ出しては、あるいは紙作業になっていないかなということを常に見つけ出しては、それをデジタル化しようというふうに、1個1個潰していくような気持ちで改革を進めております。

 ここで、私の個人的な意見ですけれども、未来医療の三本柱になるのはこの3つじゃないかなと思っております。

 真ん中のオンライン診療などを含む遠隔医療ですね。ここにはウェアラブルデバイスを含むようなものもあるかと思います。それから、左下のAIの画像診断。これは人間が読影したりとか判断したりとかするよりも、ディープラーニングというのは、人間が勉強していくのをよりスピーディーに大量に一瞬でできてしまうというようなことですので、AIのかなり得意な分野が多いわけです。私は消化器内科医ですけれども、そういった読影の分野はまさにそうかなと思います。それから、右下のスマートロボット。AIを搭載されたような手術支援のロボットとか、あとは介護の現場で人間の力よりももっと正確に、楽にできるようなスマートロボットとか、そういったことは今のところまだあまり発達していないですけれども、こういう未来も必ず来るものと確信しています。そして、これらがうまく機能するために、真ん中でプラットフォームで必要となるものが、クラウド・ネイティブ型の電子カルテではないかなというふうに思っております。

 岸田政権もクラウドベースの電子カルテを普及しましょうというようなことを明確に意思表示する中、そういったのが出たのが去年の6月ですけれども、そんな工程表に先駆けて、私ども、去年の1月に病院としては初めてとなるクラウド・ネイティブ型電子カルテ、Henryというものを導入いたしました。

 ところで、皆さん、クラウド・ネイティブ、リフト、これまで高橋先生も説明されていますが、こういうものってそもそも、私自身もそうだったんですけれども、聞き慣れない言葉だったんじゃないかなと。簡単にちょっと、重複される部分もありますけれども。

 クラウドベースの電子カルテの中にはですね、実はクラウド・リフトとネイティブがあるんだということをしっかり認識する必要がありまして、市場にあふれるクラウドベースの電子カルテですよと言われているものの大半が実はクラウド・リフトであるということを認識する必要があります。そういう現実がございます。

 代表的なカルテの3タイプ。これはこれまでの説明にもありますが、オンプレミス、そしてクラウド・リフト、そしてクラウド・ネイティブでございます。それぞれのメリットデメリットはここに書いてあるものですけれども、オンプレミスは、それぞれの病院ごとでシングルテナントとして使えますから、カスタマイズできたとしても、全体で非常に手間がかかったり、あるいは費用がかかったり、労力がかかったりすると。だけど、クラウド・ネイティブというのは、それに対してマルチテナントで、カスタマイズはそれぞれにはできないものの、みんなで使って、そして安価でスピーディーに導入ができると。実はこの真ん中のクラウド・リフトというのは、簡単に言うと、オンプレミスを、サーバーをバックアップをクラウドに取っているだけというものであるというふうに認識するのが分かりやすいと思います。実際の立てつけというのはオンプレミス同様であって、それと同様な制約を受けてしまうということが現実です。

 実は、私自身、クラウド型電子カルテに乗り換えたい、オンプレミス型の電子カルテを既に使っている状況からクラウド型に乗り換えようということで探していたんですけれども、クラウドカルテですよという説明を聞いても、皆さんどの会社も、私たちはクラウド型電子カルテですよというふうに説明を聞いても、何かしっくりこなかったんですね。当時、ネイティブとリフトの区別が私はついていませんでした。だけど、そこで何となく感じた、オンプレミスと変わりないじゃないかというようなものは、実はクラウド・リフトだからということによるものだったんですね。

 そんなもやもやした気持ちで過ごしていた私に、突然転機が訪れました。

 忘れもしない、2021年の8月、Henryの林社長から、LinkedInというビジネスSNSに突然私にダイレクトメールが届きまして、それこそが、クラウド型電子カルテをつくろうとしていたHenry社のからのメッセージだったんですね。

 翌日にWEB面会を早速しまして製品の説明を聞いたところ、まさにこれが私が考えていたクラウドカルテそのものじゃないかと直感いたしました。そして、明確に区別できていなかった、クラウド・リフトではなくてネイティブ型と出会ったことですっきりした気持ちになったというわけです。私にとって、そのとき白馬の騎手のように思えたのがHenryの林社長です。すぐに私どもが第1号のユーザーとして契約することにためらいはありませんでした。それから1年4か月後、当院は日本初のクラウド・ネイティブ型電子カルテを運用する病院となります。

 サーバータイプの比較表ですけれども、オンプレミス、リフト、ネイティブで、一番右のネイティブ型というのは、クラウド製品であるがためのいろんな手間が省けるところ、それから価格が安いところ、こういったメリットを最大限強調しています。特に一番下の将来拡張性、ほかのクラウドシステムと連携できるかとか、そういったところでクラウド・ネイティブ型が将来拡張性は非常にあるかと思うんですけれども、オンプレミス、あるいはオンプレミスにほとんど毛が生えただけのクラウド・リフトというのはほぼなしというふうに評価しております。

 なぜクラウド・リフト型電子カルテに将来拡張性がないのかについて少し述べます。

 確かに、クラウド・リフト型でも、それぞれの病院に対してカスタマイズを、機能更新時とか脆弱性発覚時にサーバー対応とか、そういったことをやろうと思えばやることができるかもしれません。ただ、膨大な労力がかかります。契約する病院が実際に増大していったときに、ベンダーはそういった労力というのが、結局全部に振り分けることはできませんから現実的には対応困難になって、そしてクラウド・ネイティブのように中央で更新をしちゃったらいいよというようなことではなくて、現実的にはそれに対応することができないという意味で、将来拡張性がないと評価せざるを得ないということになります。

 こちら、この1週間で来たものですけれども、大阪府からのものでして。

 病院は入院病床がある限り、24時間365日誰か医師がいないといけないんですね。ただ、働き方改革に伴って、病院の内容によっては、救急病院じゃなくても、ほぼあまり対応するようなことがない病院。うちは高齢者の方が多かったりして、ずっと救急医療はやっていないものですから、そこまで病院にいなくても、デジタル化を進めている中で、ここ数年、実際に人はいるんですけれども、外から指示を出したりとかすることができていて業務が回っていたんですね。そこで病院医師宿直免除というのが、医師はずっといなくても、何かあったら対応できるような体制を整えていれば免除しますよというような厚労省のガイドラインが出たんです。そこで私どもは、厚労省がこんなガイドラインを出していますよと大阪府に働きかけまして、うちの病院はこのような夜間の連絡体制というのを取り入れていますと、うちはDXを進めて、LINE WORKSとか、あるいはkintoneとかHenryとかsafieとかいろんなプラットフォームで医療情報を瞬時に病院の中と外で医師と看護師が連携して情報共有をして、そして意思を伝達することができますということを提出したところ、恐らく大阪で初めてうちは病院宿直免除の許可が下りた病院となりました。この1週間の話です。

 当院が取り組んだことですね。クラウドサービスの導入以外に、独自のmawariというサービスを開発するということも行いました。

 これはどういうものか。電子カルテ、レセコンというのは、それぞれ診療録の記録、レセプトの請求という役割がありますけれども、その周りの、医療周りのかゆいところに手が届くようなサービスをつくり出すことが目的だったんです。病院視点だからこそ、ニーズに即した効率化アプリをつくることができるはずということで、グループ会社のD&Dメディカルジャパンというところを私の友人が代表しているんですけれども、彼がシステムをつくる能力がありますので、そういった院内業務改善プロジェクトmawariというのを始めていくことになりました。

 mawari始動前というのはアナログ混沌期で、このようないろんな問題を抱えている。病院独自の、皆さんもあるよねということがあるかもしれませんが、こういうような状況がありました。

 例えば、患者さんが病院の中に入ってくるとき、地域連携室の方がほかの病院から電話で聞き取りをして手元の紙に書いていっているなんてことはないでしょうか、こういうふうに記載をしていっているんですね。入院患者の紹介ありがとうございますと。そして、氏名はどうこう、いろんな聞き取りをして紙に書いていって、そして地域連携室だけに情報が保管されます。そして事務のほうは、カルテに登録するので、まず来る前に入院患者さんの基本情報を教えてくださいよ。そしたらまた電話でこんなふうに話したりして、毎回口頭で伝えないといけない。保険証の情報を下さいなんていうと、前の病院からFAXが届いたらコピーして持ってきますねみたいなことを言ったりして、先方からFAXが届いて、診療情報も届いて、そしてFAXから出てきた紙をコピーして院内で運ぶというようなことをやっていませんでしょうか。今度、病棟から、看護師から言われます。入院患者の情報を教えてくださいと、診療情報も欲しいです。そうしたら電話で口頭で伝えたりとかコピーを持っていったりとかして、一日中ばたばた動き回るというような動きがあるんですね。各病院で、恐らく多くの病院で結構行われていることです。

 また、うちの病院では、入退院の情報を整理するために、このようなアナログのカレンダーでこのような手書きで書いて、入院病床数の管理とかいうこともやっていました。各部署ごとにカレンダーがあったりとかして、それぞれに書き加えたりとかする必要があるわけですよね。何回も同じことを転記したりする必要もあります。それが、mawariを使うようになってから、このようなアプリをつくり出すことによって、劇的に業務改善されました。いろんなアプリを、kintoneというローコードアプリ、アプリの中でアプリをつくることができるようなシステムで、いろんなアプリをつくり出して業務改善に取り組みました。

 導入後の働き方としては、例えば地域連携室で患者入力を、ほかの病院から情報が来たら、kintoneの、mawariのアプリの中に情報を打ち込みます。そうすると瞬時にほかの部署と情報共有ができまして、事務も看護師も閲覧して、タップするだけで情報共有をすることができるということになりました。

 これは1つの入退院患者情報アプリですけれども、カレンダー情報でみんなで瞬時に共有して、この人がこういう感じで入ってきますよという予定とかも共有することができる。カレンダーのところを押すと、その患者の情報というのを、詳細がいろんなことが分かります。タップをすると初期の診療情報をこうやって見ることができたりとか、そういうことができるわけですね。電子カルテなどでかゆいところに手が届くようなシステムが、能力が備わってないという場合もありますので、こういうmawariを使うことによって劇的に業務が改善されています。

 私が思うには、病院業務のDX化の三大要素というのは、コミュニケーション、それから電カル/レセコン、そして業務管理ツールという、この3つをまずはDXで意識して取り組む必要があると、これらが一番大事だと思います。うちの病院ではそれらを、この真ん中のクラウド・ネイティブ型、Henry、そしてコミュニケーションツールとしてLINEWORKSを使っています。そして、mawariを使っているkintoneですね、この3つを一番重視して、そしてこれらは全てクラウドですから、全てをクラウドシステムで安全でシームレスな連携をすることが可能となっております。ブラウザで、それぞれクラウド製品ですので、WEBクラウドで全部閲覧することができて、Google_Chrome内のタブで全部みんな見られて、いつでもどこからでもアクセスすることができると。

 うちの病院では、このような電カル/レセコンの周りを取り巻くいろんな業務を、このようなアプリを使うことによって、いろんな業務改善ということができるようになっています。これらは全てクラウドでつながっているもの、これらの業務アプリケーション群という概念がmawariというふうにうちでは呼んでいます。

 中には、緊急のことがありましたよというときには、緊急性のより高いコミュニケーションツールであるLINEWORKSに自動で通知が行ったりして即時に認識できるようになったりとか、あるいはデータを解析することができるようになりますし、印刷物も自動で作成することができるようになりますし、電カルやレセコンでは手の届かない周りのあらゆる業務をデジタル化、効率化することが可能になりました。

 うちのグループの独自性ですけれども、このデジタル支援を行うD&DメディカルジャパンMS法人が病院に対してデジタル支援を行うと、病院はすぐにトライアル環境を提供することで、現場のニーズに沿ったデジタルプロダクトをスピーディーに開発する環境を実現することができています。

 医療モデルの実現のために、正幸会でこういうフライホイールというのを意識してやっていっています。すばらしい医療の体験、患者体験での習慣につながりますし、未来医療を形成すると思っている遠隔医療、AI、そしてスマートロボットですね。こういったものがあると確信していますが、そのプラットフォームで存在するのがクラウド・ネイティブ型電子カルテであり、そしてうちの開発したmawariであると思います。これらで患者のニーズ把握を分析して、よりよい診療体制を構築してということで、この循環を、フライホイールを回すということですね。

御清聴ありがとうございました。

高橋泰

東先生のスライドの3枚か4枚前、ちょっと戻してもらえるかな。
これの前の前の、mawariのところの。――戻る。戻らない。
先生、これ全部クラウド・ネイティブのソフトだよね。

東大里

そうです。基本的にはkintoneの。東大里そうです。基本的にはkintoneの。

高橋泰

kintoneとか。だから、病院の外はみんなクラウド・ネイティブになっているんです。電子カルテとか本当に限られたものだけがというか、医療機器関係のものだけがクラウド・ネイティブになっていないような状況になっているというのをまず認識してほしいなと。真ん中に、電子カルテもクラウド・ネイティブになると、これが全部つながっちゃうという話なんですよ。というのをまず認識していただくことが基本じゃないかなと思います。

ちょっとシンポジウムの準備をしたいんだけれども、ちょっと私の電カル、私のやつもう一回戻って。

さっき、自分の時間いっぱいになっちゃったので出さなかったんですけれども、1つだけ。ここですね、DXでぜひ知っておかないといけないことというのが、今、世界のDXの右側が進んでいて、左側が遅れているという形で、先進性でいうと日本はほぼ最下位なんだけれども、じゃあ医療はどうかって話が1個ありまして。

どこの国で入院したいかというイメージで考えてもらえればいいと思うんですけれども、世界中の国際比較をやっているんですけれども、実は、後進国のほうがいいサービスをしているんですよね。これはぜひ皆さんに知っておいてほしいんですけれども、実はDXの進行度と医療の質って逆相関なんですよ。もっと言うと、DXが進んでいる国はかなり不幸な国という言い方をしたら怒られるけれども、トップダウンができる国で、イスラエルとか台湾とか、非常に危機意識が高いところはトップダウンが通ると。シンガポールは明るい独裁国と言われておりますし、エストニアは非常に危機を感じていると。アメリカと中国は巨大企業がリードしていて、デンマークだけちょっと例外かなという感じがするんだけれどもということであります。

日本の医療というのは、医療情報システムのクラウド・ネイティブ化ができれば、世界トップの医療提供体制は維持できるんじゃないかと。こういう話をすると、私、デジタル信奉者と思われる節があるんですけれども、こういう傾向があるということはぜひ認識しておいてほしいなと思います。  シンポジウム、どうもありがとうございました。

「シンポジウム(まとめ)」

小林土巳宏

今ちょうど厚労省のほうが、電子カルテについてはもうクラウド型標準で、200床未満の病院に対して無償配付しますということを、2027年ですね、一応決めて進めているというのもありまして、ほかの病院さん、いわゆる201床以上もというところも、恐らく準拠する形でクラウド・ネイティブに変わってくるというところがあって。

私、富士通さんとよく話をするんですけれども、オンプレミス型の電子カルテ、HOPE EGMAIN-HXとGX、いつまで残るかねという話をすると、会社的には、一応使っていらっしゃる病院がクラウド・ネイティブに移管するまではライセンスは維持しますという話です。過去のバージョンアップについて富士通さんに問い合わせしたところ、最長で今まで経験値があるのが17年なんですね、ライセンス更新しないで従来型を使うというのが。なので、17年間ぐらいなんだろうねと。

今回、クラウド・ネイティブというものに対して、医療業界だけじゃなくて、ほかの業界ももうかじを切ってきていますので、標準化が相当速いスピードで進むんだろうと。それを見据えると、17年と言っている富士通さんの予想がもうちょっと短くなるのではないかなというふうに思います。私は、個人的に、恐らく2030年代の中盤ぐらいにはオンプレミスは限りなく少なくなるんじゃないかと見ております。

高橋泰

10年ということですね。

鈴木将史

私もほぼ同じような意見を持っておりまして。理由は、私、経営が専門ですので、経営面から見て、やはりコストの問題が最も大きいと思います。ほかの産業は、先生も出して、皆様今日出されておりましたけれども、やはりコスト的なメリットというのがかなりクラウド・ネイティブのほうにあると、将来性を含めてですね。そこを見ていくと、変えざるを得ないという時期がもう間もなく来るのではないかなと、外からですけれども見させていただいております。

高橋泰

なるほど。

ちょうどいい例って、白黒テレビをずっと維持するとものすごくお金がかかるという例を、私の話を聞いたときにある人が言っていて、なるほどなと思ったんです。思った以上にこのクラウド・ネイティブ化の話が進んできている。クラウドじゃなくて、クラウド・ネイティブと言う関係者がすごく増えてきているんですよね、最近。

大きかったのは、5月9日に、標準電子カルテの配るメーカーが6つ選定されたんですけれども、その内容が全部クラウド・ネイティブだったというのは非常に大きかったかなという感じがするんですけれども。私もこれ、ずっと言い続けているんですけれども、最近、急にクラウド・ネイティブの理解が深まってきて、水面下、あるいはもう表だと言うところも出てきていますけれども、増えてきているなというのをひしひしと感じているとところであります。

次、東先生でありますけれども、クラウド・ネイティブに移るとき、やっぱり怖いなって考えている先生がすごく多いわけです。1つは、セキュリティがやっぱりクラウドにするとやばいんじゃないかなという意見。
私もここの中で説明しましたけれども、そういう意見もありますし、病院業務が本当に動くのかしらということで非常に心配されている先生も多いんですけれども、先生、今の2つの質問、セキュリティ、それから本当に動くかどうか、デメリットということについて伺いたいんですけれども、いかがですか。

東大里

高橋先生のスライドの中にもありましたように、やっぱり医療でオンプレミス型の医療電子カルテが基本ですよと、そういう考えが長年ありましたから、どうしても病院の情報というのは病院の敷地内にないといけないですよねと。インターネットにつなぐなんてとんでもない、クラウドに情報を上げるなんて、医療というのは高度な個人情報なんだからみたいに本当に言ってしまう方もおられるんですね。FAX文化もそうですけれども、そういう長く続いてきたものを、なかなか考えを変えるというのは難しいです。でも、大阪の公立病院で、オンプレミス型であったばっかりに、データが破壊されてしまって数か月診療がとまってしまうなんていう事例もありました。まさにオンプレミス型であるからこそ起こってしまった事例なんですね。クラウド・ネイティブというのは、私自身は、Googleであるとか、一病院のサーバーよりもそういった巨大プラットフォームのところにあるほうが格段に、全くレベルの違うセキュリティがそもそも担保されていると思いますし、そっちが安全であるというふうに確信しています。

実際動くかどうかですね。そっちになりたいなと思うところ、本当の率直なところは、自分が病院の外でも便利に診療情報にアクセスしたりして業務をやりたいなと思ったときに、オンプレミスよりもこっちのほうが便利だなと感じたというのが率直なきっかけでもあったりするんですけれども、実際の現場は、やっぱり今までにやっていたことを、クラウド・ネイティブになってこういうふうに変わりますよといったときに、何でも人間そうだと思うんですけれども、新しいものをやるときには抵抗感というのがあります。便利になるよという未来をできるだけ説明したとしても、ちょっと抵抗感があったりするんですけれども、目の前にやらないといけないことが増えるから嫌だなとか、そういうことですね。だけど、そこは丁寧に説明していって、やることで必ず動くんじゃないかと。最初はいろいろありましたけれども、一旦メリットを享受して分かってくれると、皆さんそういうふうについてきてくれることが多いと思っています。

高橋泰

どうもありがとうございました。

 残り3分ほどしかないので、うまくいけば2題質問を受けられると思いますけれども、質問ある方は挙手をお願いいたします。いかがですか。

 手が挙がらないので、もうちょっとだけ私のほうから質問を続けていきたいと思います。  小林さんもこのシステム導入のこと随分やられているし、特に電子カルテが非常に高くなってきてですね、どこの病院さんも音を上げているんですけれども、これから先、病院の情報システムを考えるとき、コスト面から戦略としてどういうふうに考えたらいいか。

小林土巳宏

まず、電子カルテを導入するときって、見積もりを必ずもらうと思うんですけれども、その見積もりの項目を見ていただくと、最初にソフトウエアがあって、次にハードウエアがあって、ネットワークがあって、ストレージがあるという形で、大体4つぐらい、最低でも4つぐらいに分類されると思うんですね。

クラウド・ネイティブであると、そのハードウエアというところのサーバー代が要らなくなりますので、いわゆる日常的に使うクライアント端末であれば、そんなにスペックが高くなくても、ものすごくメモリー量を積まなきゃいけないとかじゃなくて、ベーシックな、例えば32メガぐらいのメモリー量のパソコンでオフィスが動けばいいぐらいの感じだと思うので、それぐらいで抑えられるので、かなり安くなると思います。  あと、ライセンスですよね。電子カルテだとライセンスという形になるんですけれども、いわゆるクラウド・ネイティブだとマルチテナントでライセンスというのはいわゆるデータ発行なので、本当にID番号とひもづけるんじゃなくて、ソフトウエアで生成したID番号を発行するって形なので、実際、エンジニアの手数料としては、本当に1分2分でもう何万というIDを発行できますから、ライセンス料もほぼほぼかからないに等しいんですね。Henryさんのライセンス発行の原価を知っているので、非常に安価でおさめられるんです。なので、費用面に関しては、さっき言ったみたいにソフトウエア、ハードウエア、ネットワーク、ストレージという形で、それぞれの項目ごとにちゃんと詳細を聞いた上で、安価にできる、圧縮できるところは交渉するというのがいいと私は思います。

高橋泰

ちょうど時間になりましたので、これでクロージングしたいと思います。

 病院からすると、やっぱり費用を抑えるときに、このマルチテナントで共有する以外に、基本的にシステム的な方向性として下げる手段がないということ。それから、セキュリティがオンプレのところが非常に問題になってきている。この2つが原動力になって、今後カルテの、あるいは病院情報システムの選択というのは変わってくるんじゃないかなと思います。

 それでは、これにて本日のシンポジウムを終了したいと思います。  御清聴どうもありがとうございました。

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