研究大会

第9回地域包括ケア病棟研究大会

【基調講演】

「今後の地域包括ケア病棟の展望」

仲井培雄

改めまして、皆さん、おはようございます。

本日は、基調講演に、日本医師会会長の松本吉郎先生に来ていただきました。

なぜ松本先生にこちらに来ていただくことができたかといいますと、もともと中医協の委員をされたときに地域包括ケア病棟の御担当でしたので、そこから先生とお近づきになれまして、今に至っているということでございます。ありがとうございます。御略歴は12ページに書いてありまして。皆さんもう御存じですので、松本会長はこれから結構たくさんの量の御講演をされますので、そちらにお時間を割きたいということで、皆さん、そちらを御覧ください。

ただ、1つだけここに書いていないことを言いますと、中医協の委員として筆頭を務められ、直接厚労省と交渉されていたわけですが、その後、医師会の会長になられたのは初めてのことでございますので、診療報酬にお強い医師会長が誕生したということでございます。

松本先生、どうぞよろしくお願いいたします。

松本吉郎

皆さん、おはようございます。日本医師会会長の松本でございます。

協会会長の仲井先生、大会長の鬼塚先生、お招きにあずかりましてありがとうございます。

御紹介いただきましたけれども、去年の6月に就任しましたので、1年ちょっと過ぎたところであります。

今日話す内容としては、皆さん方御存じの内容ばかりで、おさらい的なところもあるかもしれませんし、今後の展開につきましては、今日ここにおられる眞鍋課長よりお話しいただけるものと思っています。

私、医師会会長になりましたけれども、やはり現場はなかなか離れたくないので、コロナが始まった3年半前からですけれども、毎朝6時から外来をやっておりまして、1年330日ぐらい、今日も、朝6時から患者さんを15人ほど診てからここに参りました。

やはり現場のことをある程度知っていないと困るということで、今でも頑張って保険の審査員も続けておりますし、学校医も産業医も頑張ってまだ続けております。さすがに発熱外来はできませんけれども、ワクチン接種だけは週1回朝、時間を使ってやっております。なるべく現場感覚は忘れないでやっていきたいと思っております。

地域包括ケア病棟の病床数も、平成26年から11.5倍と増えました。これを増やしていくということは厚労省もずっと考えていたことですけれども、さりとて、30年改定あたりからそれなりの点数がついてきてそれなりに増えてきたので、やはり機能をきちんと高めていかなければいけないという議論がずっとあって、点数もそれに見合った点数でなければならないという考えがずっとあったのだと思います。

私も、平成30年改定と、その後の令和2年と4年のときには、中医協の診療側委員の筆頭を務めながらやっていました。そうはいっても、まだまだ成熟過程なので、いきなりはしごを外すような改定はしてほしくないということで、厚労省と随分話し合って、30年と2年のときには、財務省からも相当指摘はされましたけれども、点数も守り、内容もそれほど要件を厳しくするということはないようにしてきました。さすがに前回の4年改定では、地域包括ケア病棟のあるべき姿をもう少し探っていこうということで、それなりの要件を加味した改定となりました。その代わり、点数はしっかり守ったというところだと思いますので、その辺のところは御理解を賜りたいと思っております。

日本の人口の推移ですけれども、押しなべて言えば、向こう10年で平均して8%減る。その次の10年でも8%減ると御理解いただければよいと思います。20年で平均16%ですから、地域によっては20%とか25%減る。場合によっては、2040年までの20年間で40%ぐらい減る地域もあります。非常に厳しいことですね。

私、外来もずっとやっていますけれども、外来をいくら頑張っても、少しずつ減っているというのが現状で、どこに行っても外来の数は減っています。入院だけはまだ増えていますけれども、それでも、もう減っている地域もあります。もう少し経てば入院も恐らくピークアウトするでしょう。在宅はまだ増えている途中にあって、2040年を過ぎてももう少し増えるかもしれません。

こういったことで、相当な人口減が考えられていて、コロナの影響で出生数が予想よりもはるかに下回ってきているので、余計に少子化が進んでくるし、人口減も非常に厳しくなる。おそらく2065年には総人口が9,000万人を割り込み、このままでは、多分もっと前に割り込むと思います。高齢化率は38%台になるということです。高齢者も、増え続けるとは言っても、もう既に山陰、鳥取、島根あたりではほとんど増えていっていない状況があるということであります。ある意味では、東京とか、地方の本当に一部の都市だけ少しずつ増えていますけれども、ほかのところは押しなべて減る。それが非常に厳しい。

東京は、確かに家賃とか人件費とかがそれなりに高騰して非常に厳しいですけれども、地方ではやはり同じような人件費の高騰に苦しみながら、スケールが、マスが減ってきていますから、非常に厳しい状況になる。ですから、東京も大変だけれども、地方は本当に人口減をもろに受けていきます。

入院患者数は、全体としては増加傾向にありますけれども、二次医療圏によっていろいろ違って、既に2020年までには90の医療圏が、2035年までには261の医療圏がピークを迎える。その後のピークとなるところは本当に一部であります。

救急搬送件数は、多くの地域で今後も増加していきます。救急搬送の状況というのは、今週の中医協でも救急患者の受け入れが議論されていますけれども、地域包括ケア病棟でもこれを一定程度、あるいはどこまで担えるかということが大きな課題でありますし、前回の令和4改定でも救急の要件が入りましたので、ここはそこをにらんでのことだと思いますが、13対1ですから、どこまでできるかというのはもちろん病院によっても違いますし、自院が7対1病棟を持っているかどうかによっても違ってくるし、いろんなことが複合的に組み合わされるのではないかと思います。

ただ、全てを地域包括ケア病棟で診るというのはなかなか難しい。受け入れられる患者像というのは、病院によって相当選択していかなければならないということだろうと思います。

医療と介護の複合ニーズが一層高まって、特に要介護認定率は年齢が上がるにつれて上昇して、とりわけ85歳以上で上昇していきます。2025年以降は後期高齢者の増加が緩やかとなりますけれども、85歳以上の人口は引き続き増加していきますので、ここのところは非常に大きな課題であります。

今度の同時改定に向けて開催された中医協・介護給付費分科会「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(第2回)」では、厚生労働省より「介護保険施設から医療機関へ退所した場合の病床別で地域包括病棟や回復期リハビリテーション病棟を除いた一般病床が大半を占めており、患者の状態に応じた医療機関との連携を進める必要がある」との説明がありましたけれども、日本医師会の中医協委員の長島常任理事からは、「医療ニーズは安易に外部に頼るものではなくて、まずは自施設の対応を強化することが必要である。それを超える症例では、地域全体が面となって高齢者を支える医療提供体制を目指すべき。その際、地域包括ケア病棟などを意義ある連携が図られるようにすべき」ということを述べておりますし、入院元、入棟元がどういうところからなのか、退所する先はどういうところなのかということの連携、やはり入退院支援を強化するということが前回の改定でも明らかになっていますので、ここのところをしっかりと人員を充ててチームで対応するところには点数がついているということだろうと思います。そういった退所先の施設とはこれからもいろいろ連携していかないと、恐らく立ち行きができない。

2025年以降、マンパワー、人員の確保はますます重要な課題になります。規制改革推進会議でナース・プラクティショナーの議論がありましたけれども、これはやはり慎重に議論していなければいけないと思っております。

ナース・プラクティショナーの必要論として、例えば訪問看護ステーションで医師と連絡を取ることが難しい、すぐ連絡が取れないとかあるいは僻地で医師がいないところはどうしたらいいのかという話はありますけれども、これは本来であれば現場である程度解決すべき問題です。訪問看護ステーションと主治医がきちんと連絡を取るということはあくまでも前提ですので、ここは複数の連絡方法を含めて現場できちんと対処しておく、あるいは薬の調剤・交付にしても準備をしていくということが大事かと思いますので、私どもは、全日病、日本医療法人協会と共にヒアリングに出席し、反対をしております。新たな職種は必要ないということで、明確に反対させていただいております。四病協と合同でも声明を出しています。

新たな資格創設のニーズも不明ですし、創設せずとも、連携で解決は可能だと思います。特定行為研修をより一層推進すること、新たな資格制度を創設しても解決できる可能性は低いということ。懸念事項である医療安全、医療事故が起きたときの責任の所在とかいったことからすると難しいのではないか。また、僻地であれば、オンライン診療のD to P with Nなどをきちんとやっていくことが大事ではないかと思っております。

ただ心配なのは、フランスにおいては今年の1月にNPダイレクト・アクセス法が成立しました。これが成立した途端に、フランスの医師は色めき立ってデモとかをしましたけれども、もう法案が通ってしまったらアウトです。

それまでもこういったNPの方々が一定程度補完的に診療を行うものはありましたけれども、今回フランスでは、患者が望めば医師の受診を経ずにダイレクトにNPに受診をする。制限はありますけれども、初回処方も可能ですし、医療費は保険でカバーするということであります。そのほか、軽症疾患であれば薬剤師でも受診・処方が可能とか、肩凝り、捻挫とかであれば理学療法士の方も可能であるとか。

今まで、NPというと病院の中だけでのタスクシフトとかシェアの話だったけれども、もう既にそこの話は過ぎています。つまり、病院外で独立開業的な話になっていて、処方権の話に移っていますから、病院の中の先生方もちょっと考えていただかないとならないと思います。今までのNPというと、どちらかというとアシスタントフィジシャンのような形を想像されていて、病院の中で医師の包括的な指示の下でいろいろと働いていただく方を想定していましたけれども、もう既に議論はそこじゃないんです。

今、医師、歯科医師、調剤薬局以外で診療報酬(調剤報酬)が直接入ってくるのは、訪問看護ステーションぐらいですよね。それ以外にも、例えば今言ったような職種の方も独立開業という道がフランスでは開かれたということになります。これは外で独立開業して処方権あるいは診断することが医療機関でなくても許されるということであり、今後の日本にとっては大きな問題だと私は思っていますので、ぜひここのところはしっかりと共有させていただきたいと思います。

日本医師会にて「訪問看護における医師との連絡体制に関する緊急調査」をしましたけれども、実際的に本当に困った事例というのは多くなくて、訪問看護ステーションを受診した中で、「日常の訪問看護の実施において、必要な時に医師との連絡は概ね『取れている』」の設問では、97.6%がおおむね連絡が取れているということでございましたし、連絡が取れなくて患者さんの状態に重大な影響があった事例があったかということですけれども、患者さんの数からすると、半年で、延べ患者さん88万8,378人のうち116人でちょっと影響があったと。要するに0.013%なので、非常に少ないということでございます。したがって、やはりきちんとした連携を取っていくということが大事なことだと考えております。

細かなところは除きますけれども、訪問看護ステーションには回答に非常に御協力いただきました。細かな内容は日本医師会にございますので、よろしくお願いいたします。

「骨太の方針」2023が閣議決定されましたけれども、ここでは、訪問看護の推進を図る、医療専門職のタスクシフト・シェア、地域における職種の連携を推進するということが書かれました。ナース・プラクティショナーの創設を求める記載は今回の骨太の方針には入っておりませんが、規制改革実施計画の中にはナース・プラクティショナーの制度を導入する要望があったと。それぞれの指摘があったけれども、離島、僻地等において特区制度を活用した実証の提案があった場合は、その結果も踏まえて所要の対応を行うとの記載が一応入っておりますので、今後、継続する議論にはなろうかなと思っております。

患者さんの症状変化に対応する迅速な薬物治療を受けられない場合があったりとか指摘はされましたけれども、先ほど言ったとおり、現場と医師、主治医のしっかりとした連携があれば、ほとんどの例は対応可能であると考えています。

地域医療構想の現在の方向性ですけれども、2025年ということで地域医療構想を進めてきました。ほかの、例えば第8次医療計画は来年の2024年から始まります。3年で中間見直しをしますけれども、6年ごとになります。医師の働き方改革も来年の4月から、いわゆる時間外労働の上限規制が罰則つきで始まります。これにもしっかりと対応できるように、日本医師会でも進めていますけれども、あるいは各地で進めていただいていると思いますけれども、2024年が一つの節目となることは間違いない。

ただ、地域医療構想だけは昔から2025年だったので、これだけ1年ずれておりますが、これはここで何かがらっと変わるわけではなくて、今までの構想に基づく取組を進めていって、さらにバージョンアップしていくというイメージです。

新型コロナウイルス感染症対応が続く中ではありますが、地域医療構想の背景である中長期的な状況について見通しは変わっていないと述べられておりますし、地域医療構想については、その基本的な枠組み(病床数の必要量の推計・考え方など)を維持しつつ、着実に取組を進めていくということ。具体的対応方針の策定率と地域医療構想調整会議における資料や議事録など協議の実施状況をわかりやすく公表を行うこととする。これは具体策としてございます。

また、病床が全て稼働していない病棟等への対応など、必要な方策を講じることとするとしていますので、じわじわと進めていくことになりますけれども、診療報酬に結びつけて急激な転換を図ることは絶対に行ってはならないことだと思っておりますので、あくまで地域の実情に応じて、その病院が自主的に、周りの状況を考えてあるべき姿に収れんしていく。

ただ、現実的に7対1は大分減っています。そういった中で、地域でどうしていくか。連携をするのかあるいは合併したりするのかといったことについてはこれから考えていかなければいけない。課題は、地方ごとにやっていかなければならいないことだろうと思います。

地域医療構想については、新型コロナで顕在化した課題も含めて、中期・長期的な課題を整理して、現在は2025年までの取組となっていますけれども、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療を対象に取り込み、議論を進めた上で、慢性疾患を有する高齢者の増加や生産年齢人口の減少が加速していく2040年ごろまでを視野に入れてバージョンアップを行っていく。

このため、「治す医療」を担う医療機関と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化するということで、最後は看取りを要する高齢者を支えるために、かかりつけ医機能を有する医療機関を中心とした、患者に身近な地域での医療・介護の「水平的連携」を推進し、「地域完結型」の医療・介護提供体制を構築するとしております。

こうした基本的な考え方を実現するための取組として、かかりつけ医機能が発揮される制度整備ということをさらに進めることになっております。今回、医療法人制度の見直しでデータベースの構築等の議論も進んでおります。

地域医療連携推進法人のある意味有効活用でしょうけれども、あまり囲い込みになるような、本来の目的とは違った活用方はどうかと思っております。本当の意味で趣旨に沿った活用がされればいいかなと思っています。

先ほど言いましたとおり、集約化と分散化ということがこれからの本当に大きな課題だと思います。集約は当然必要になると思いますけれども、急性期医療へのアクセス制限にもつながりますので、先ほど申し上げたとおり、あくまでも地域医療構想調整会議での協議によって、各地の実情に応じた体制を構築する仕組みを堅持していきたいと思います。そういった仕組みによってこそ、集約化と地域に密着して入院患者の受け入れや在宅医療支援を担う医療機関を確保する分散化が図られると思います。

今回出てきた大きな問題は、外来機能報告だと思います。これまで病床機能報告がありましたけれども、今回は、前回改定のときから議論されて外来機能報告が入ったということと、もう1つ、今回はかかりつけ医機能報告というのが始まりますので、その3つの組合せをしっかりと頭に入れておく必要があります。

特にわかりにくいのが、外来機能報告とかかりつけ医機能報告の違いだと思いますので、それについては後で述べます。その2つは、かかりつけ医というところの軸で、あるところで交わりますけれども、本来全く別のものであります。

今回、外来機能報告のもとになっている根源は、このポンチ絵(令和2年12月23日に開催された社会保障審議会医療保険部会の資料「(参考)定額負担の対象病院拡大について」)にあります。

外来機能報告ということになっていますけれども、本質は、どちらかというと、外来機能ではなくて、医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関、つまりおおむね病院の話です。

図にありますけれども、特定機能病院が86あって、地域医療支援病院はほとんどが200床以上で、例外として200床未満のところがあります。原則200床以上になっていますので、これが600病院弱あるということであります。

特定機能病院とか地域医療支援病院というのは、当然のことながら、紹介を中心とする、紹介患者を診てしっかりと治療して、かかりつけ医に逆紹介で返すことが基本だと思いますけれども、それだけではなくて、それ以外の病院にも紹介外来を中心とした仕組みを広げていく。これは本来の仕組みではありませんけれども、医療機関の施設の問題ではないわけですけれども、こういった仕組みを入れたということであります。

前述の医療保険部会資料の緑色の部分(200床以上の特定機能病院および地域医療支援病院)を点線で囲ってある「その他」のところまで広げていくという議論があり、すでに前回の改定でそうなりましたけれども、ここを広げるときに200床以上の病院を全て対象にするというのが最初の議論でした。私はそのとき担当でして、その他のところは700病院ぐらいありますけれども、そこに全部一遍に広げるのは強く反対しました。今回は、一般病床200床以上の病院ということになりました。緑の点々が「その他」のところで半分に切れているのはそういう意味であります。200床以上の病院全部じゃなくて、一般病床200床以上の病院ということにまずはしました。
 正式には発表されていないですけれども、点線で囲ってあるところが恐らく200から300ぐらいあるのではないかなと思います。このところだけが今回の外来機能報告の対象として増えたわけです。ただし、増えたといっても後でお話しするように基本的には手挙げですから、まずは任意です。報告する対象にはなっているけれども、最終的にこの医療機関に当たるかどうかということはあくまで手挙げであって、しかも地域医療構想調整会議等での協議によってそれが認められたという、きちんとマッチングをしたところだけしか最終的に認められません。

結局、これをやるとどういうことになるかというと、こういった病院は紹介外来的な病院になるので、当然外来患者さんはどうしても減ることになります。その代わりという訳ではありませんが、それを補う形で初回の入院のときに800点をつけようというのがもともとの考えであります。

今、地域医療支援病院であれば入院初日に1,000点が加算されます。地域医療支援病院が1,000点ですから、新たに追加されたところは800点というのが自然な落ち着きとしての点数です。こういったところがなかなか理解されてないところがあります。

あともう1つが、なぜ外来につけないんだという話になりますけれども、外来に加算がつくということは、その患者さんにとってメリットがないとつけられないわけですが、大きなメリットは生じないので、点数はつけられないというのが本来のあり方です。

ただ、こういった病院は外来の数を絞って、その代わり入院の機能をもう少し精度の高い、高機能のものにすることで全体的なメリットは生じるので、入院の評価としてつけたというのが今回の考え方です。

この表を見たほうが多分、外来機能報告のあり方というのはわかりやすいと思います。特定機能病院はもともと点数が高いわけですから、それなりの点数がついています。地域医療支援病院にも1,000点の加算があります。特定機能病院や地域医療支援病院は、いわゆる地域医療を基幹的に担う医療機関という考え方があり、もともと持っている機能でもありますが、それに加えて、今回、新たに増えたところが問題になりましたので、1,000点に対して800点というつけ方をしたのは、そういうところにあるわけです。

この病院を定額負担の対象にするということは、今まで地域医療支援病院でも紹介状を持っていかない患者さんがいると5,000円の定額負担がありましたが、それがこういった病院にも広げられたということです。

この定額負担を取っているケースというのは、実は、皆さんが想像しているより多いかもしれません。大学病院でも、外来で紹介状を持ってこないで定額負担の対象になっている人は30%ぐらいいらっしゃるんです。それから、地域医療支援病院でも、病院によっては半分とか60%が紹介状を持っていっていないです。ですから、本当に厳密な意味で運用すると定額負担の対象としてプラス5,000円、いわゆる選定療養のような形でこれまで5,000円を徴収されていました。それが今度プラス2,000円になって、令和4年改定から7,000円になりました。

この5,000円から7,000円に上がったプラス2,000円は病院の収入になっているでしょうか。なってはいるのですが、なっていない。つまり、プラスされた2,000円は患者さんからいただいて病院に入りますけれども、その2,000円は医療費の給付からカットされています。つまり2,000円入っても、保険の給付から2,000円カットされているので、実際には2,000円マイナス2,000円で、ゼロです。

3割負担なのでちょっとややこしいやり取りはありますけれども、基本的には患者さんから2,000円いただいて、保険の給付からは2,000円減るので、財務省的にはありがたいということでしょうけれども、そういった仕組みがあるということであります。

ここのところは、財務省の様々なペーパーにも出ています。かかりつけ医と非かかりつけ医というように、もし分断されれば、非かかりつけ医を受診したときにはこういった定額負担的な考えを入れるということも書いてあります。この定額負担というのはこれからも多分いろいろなところで出てくると思いますし、財政的なことを考えるときには非常に大事なポイントになろうかと思います。

例えば、かかりつけ医ではないところにかかるときとか、あるいは今後の薬剤に対する負担を考えるときには、%的な定率を変えるという考え方もあろうし、こういった定額負担の考え方もあろうし、今後もずっと、日本の医療保険制度がある程度続けられる限りは、定率のところをいじるか定額でプラスをするかということは永遠の課題だと思います。

これが外来医療の機能の明確化・連携です。

紹介と逆紹介があって、かかりつけ医機能を担う医療機関が、なるべく紹介受診重点医療機関という基幹病院に紹介をされて、それから患者さんをなるべく逆紹介に戻す。

もちろん、1人1人の患者さんを逆紹介するときには、当然その患者さんとよく話し合った上で、納得した形で、その患者さんの意向をよく取り入れて、そして親身になって相談をして、どうしてもその病院に残りたいという患者さんとか、無理やりというのはなかなか難しい話になろうかと思いますが、正直なところ、3か月に1回受診されていて症状が安定した患者さんを例えば特定機能病院で診る意味があるのかという考え方もあると思います。3か月に1回行って、ほとんど安定していて、ずっと同じ薬が出ている患者さんを大学病院で診る意味があるのかどうかとなると、そういった患者さんはやはりかかりつけ医に戻して診るべきじゃないか。何かあったらまた大学病院に紹介してもらうというのがあるべき姿ということですから、そういった意味で、もちろん1人1人の患者さんのケースについてしっかりと話し合った上で対応する、親身になって対応することは、現場では必要ですけれども、大きな流れとしてはそういうことだと思います。要するに、入院を主に診るような大病院のところは逆紹介で落ち着いた患者さんを戻す。それが流れであるということには間違いないので、こういった紹介受診重点医療機関については逆紹介を進めていくということであります。

外来機能報告では、医療資源を重点的に活用する外来の実施状況を報告します。具体的には、医療資源を重点的に活用する入院前後の外来、細かなことは話せませんけれども、プラスマイナス30日ですけれども、その日数のところの外来、あるいは高額医療設備を必要とする外来や、がん化学療法、特定の領域に特化した機能を有する外来がどのくらいあるかとか、逆紹介・紹介がどの程度あるかとかです。また、紹介受診重点医療機関となるかどうかは手挙げになりますので、その意向があるかどうか。地域の協議の場では、外来機能の明確化、連携の推進のために必要な事項とかを考え、手挙げをした医療機関もいろいろな基準を満たした上で、紹介率・逆紹介率等も参考にしつつ、協議を行うとしています。初診に占める重点外来の割合が40%以上、かつ再診に占める重点外来の割合が25%以上という基本がありますけれども、この基準を満たさなくても、協議の場で意向を確かめて、紹介率と逆紹介率を活用して協議を行うこともできるとされています。いろいろ細かな決め事はありますけれども、それが基準に一致していなくても、紹介率50%と逆紹介率40%以上を参考に議論をして、整えばオーケーということにもなっています。

ただ、いろいろと細かなデータは厚労省からいただけるデータなので、外来機能報告と言ってもちょっとイメージが違うかもしれません。外来機能報告といっても、いわゆる外来の話というよりは、病院全体の話になるんです。外来機能報告は、紹介する側の、かかりつけ医側の外来機能報告ではないんです。そういった意味ですごく誤解を受けやすい。むしろ、今回のかかりつけ医機能報告のほうが、ある意味では本当の意味での外来機能報告的な話なので、非常にわかりづらいところはあります。

おさらいすると、外来機能報告というのは、簡単に言えば、ある程度大きな病院は紹介と逆紹介を高めて、なるべく落ち着いた患者さんの外来を減らして、逆紹介でもってかかりつけ医に戻しなさいというのが基本的な考えです。その代わり外来が減るので、多少点数をつけて補いましょうということになっているわけです。それが横軸なんですね。同じ連携でも横軸の連携。つまり、右手にこういった病院があって、左側にかかりつけ医がいるという横の連携を基本に、紹介と逆紹介で戻すといった連携のあり方です。

かかりつけ医機能報告というのは、ここにかかりつけ医がいたとすると、その機能を高めるという意味で、ある意味、縦のあり方です。自分のかかりつけ医としての機能をなるべく高めて、もちろん連携はしますので面として支えるわけですが、外来機能報告が横の流れとすると、かかりつけ医機能報告は縦の機能を高めて、それでもって地域として、面として、地域医療を支えていこうという考え方として、両方の報告制度を御理解賜れれば、わかりやすいのかなと思います。

外来機能における報告項目では、いろんな項目を報告しなければいけませんが、これもNDBで省ける項目がほとんどです。細かなところは省きます。そこで800点がついたということであります。

地域医療支援病院も紹介受診重点医療機関になることが望ましいとされていますけれども、本来、そういった機能はほとんど持っているので、地域医療支援病院には1,000点の加算がついているということであります。ですから、この紹介受診重点医療機関といった考え方が出たときに、それは地域医療支援病院と同じではないかとよく質問されるんですけれども、違いはさっきのところにあるわけであります。つまり、最初に戻りますけれども、地域医療支援病院は確かにもともとあるけれども、そこの考え方を拡大するというところに紹介受診重点医療機関の主軸があったということでございます。

協議の進め方としては、先ほど来お話があったとおり、対象となる医療機関、ここはまたさっきのところと話がかぶりますが、報告は年に1回、10月11月に報告することになっていて、昨年の10月から始まっていますが、現実問題として報告というか、議論が始まったばかりで1年経ったけれども、地域の場で話合いはほとんど進んでいないというのが現実でございます。

協議の進め方としては、意向があって、内容を満たすか満たさないかで、医療機関の意向と協議の場での結論が合致したところだけがなりますけれども、合致しない場合でも、差し戻してもう一回やって、さらにもう一度協議をして、どうかということで念押しすることになっているので、話が少しややこしくなっていますが、最終的には意向がなければならないし、あるいは協議の上で話し合って、あなたの病院はこういったことでぜひなってもらいたいということが言われれば、そこで再協議をしていくということであります。

協議の場では、基準を満たすか満たさないか、意向があるかないかをきちんとしていくということで、決して無理やりということではありませんし、協議の場にはいろいろな学識経験者等が、あるいは病院の方々等も入っていきますので、そこでしっかりと協議をしていただくということであります。

なかなかすぐに応じるところは少ないのではないかなと思います。やはりこの仕組みになれば、当然のことながら外来は影響を受けるでしょうし、その代わり入院に800点つくということで、そのどちらを取るかという選択になろうかと思います。協議を行って、最終的に医療機関の意向と協議の場の結論が合致したものに限り、紹介受診重点医療機関として公表を行うことになっております。

この協議の進め方につきましては、この前日本医師会で、厚労省の医政局と随分一緒に議論して説明を行いましたので、詳しいことにつきましては、わからない場合には日本医師会にお尋ねいただければと思います。

ただ、これはもともとの仕組みは医政局の話なので、話がわかりにくかったと思いますが、医政局の方と保険局の方と、しっかりと両方のところを勉強していただきたいと思います。私は今日それの両方をしゃべったつもりではおりますけれども、よろしくお願いいたします。説明会は6月7日に行っております。

次は新型コロナウイルス感染症の話です。

日本の医療制度に対する信頼がどうだったという話がありましたけれども、村田さんという医師ではない方の世論調査から見ますと、信頼が結構高まったというようなことがデータとして出されています。

5月8日以降の新聞各紙で、行政、国、コロナの専門家あるいは医師会や医療機関に対するバッシングが随分報道されましたけれども、ある意味、私としては非常に不愉快でした。もちろん、全ての方に全てのきちんとした医療が届けられたかどうかはわかりませんが、我々医療者も非常に危険な状態でありながら、家族とかにもバッシングを受けながら相当頑張りました。

イギリスでは人口6,000万人で20万人以上亡くなっています。日本は1億二千何百万で、まだ7万人くらいで済んでいますから、全然違うわけです。アメリカは3億人いますけれども、120万以上がコロナで亡くなっているので、人口当たりでいうと死亡が1桁違います。欧米諸国は、イギリスもフランスもイタリアもみんな同じです。日本の人口でいったら、40万人以上死んでいるような状況です。そういった状況はほとんど報道せずに、悪かった点だけをバッシングするというのはいかがなものかなと思って、私としては、取材に来た新聞社にも随分言いましたけれども、2面3面の紙面を使いながら、私が言った欧米よりははるかによかったという主張は、本当に小さな記事しか取り上げていただけませんでした。本当に悔しい思いをしましたけれども、医療機関はみんな頑張っているということはやはりもっと声を大にして言ったほうがよいと思います。

満足度はそれなりに高かったし、診察を拒否されたという話がよく出ましたけれども、様々な相談窓口に寄せられるところを見ると、拒否されたことがあるというのは、そんなに多くなかったことが示されています。コロナの患者さんを診られなかったとか、あるいは一時的にオーバーフローしたというのは、日本だけではなくて世界共通の課題でした。もちろん、それはよいことでありませんけれども、準備された体制以上に患者さんが来れば必ずオーバーフローするので、ここをどうしていくかというのはどこも共通の今後の課題だと思います。ここのところがなかなか理解されていないというところはあろうかなとは思います。

岸田総理とも3・4回お会いしましたけれども、なるべくソフトランディングしていただきたいということはずっと要望してきましたし、全国知事会とも連携を取って、医療費の公費負担とか財政措置とかの継続をずっと求めてまいりました。加藤厚労大臣にも、類型変更後における財政支援をお願いしております。

こういった形で、ポイントとして、5月8日から5類感染症という位置づけになりました。今は「発熱外来」と言わないで「発熱に対応した外来」ということになっていますけれども、4.2万から最大6.4万に向けて少しずつ増やしていって、入院も少しずつ増やしていただきたいということでなされております。

今、沖縄では定点で40人を超える患者さんが出ておりますし、鹿児島では10人以上でしょうか。全国平均では5人から7人ぐらいが患者さんとなっていますので、もう第9波に入ったと言ってもいいのかもしれません。これからの課題でございます。

第8次医療計画における「5疾5事業」の6番目の事業としての新興感染症対策の追加と、昨年の感染症法等の改正による「医療措置協定」の導入とは関連しています。今日は地域包括ケア病棟なので除きますが、これも協定内容をきちんと取りまとめるということだと思いますので、都道府県としっかりと話し合った上で、自院の状況をきちんと把握した上で、キャパシティ、どういった体制が取れるかということをきちんと把握した上でしっかりとやっていただくということだろうと思います。正当な理由がない場合、地域医療支援病院の承認を取り消されるといった話ばかりよく出ていますけれども、そうではなくて、きちんとした個別的な判断が必要だということであります。医療機関内の感染拡大等によって医療機関内の人員が縮小している場合とか、これはコロナを想定していますけれども、それよりもさらにもっとひどい状況とか、感染症以外の自然災害によって人員や設備が不足している場合とか、どうしても患者さんを移してベッドを空けられない事情があるとか、それなりの事情があるでしょうということですので、これはやむを得ない事情として都道府県が判断するし、都道府県は地域医療をきちんと担う責任があるから、そう簡単にそんなことはしないと私は信じていますので、きちんと真摯に向き合っていただければ、私は問題なかろうかと思っております。総合的に判断するということです。

地域包括ケア病棟入院料のところまで来るのにいろいろ話をしてしまいましたけれども、ここのところは、令和4年改定において地域包括ケア病棟入院料に期待される3つの役割をきちんと意識したバランスのいい改定を行うことです。自院の一般病棟からの転棟割合があまりに目立つ。例えば9割が自院から移るというのはいかがなものかとか、重症度、医療・看護必要度を見直すこととか、老健からの入棟患者については評価する。逆に、出すときにはいろんな制限がありますけれども、入棟するときには評価する。また、救急体制を評価する、入退院支援を評価するなど、様々な見直しがなされました。

救急体制や入退院支援はそれなりに大変ですけれども、こういったことをきちんと対応したところは、これまでの点数がきちんと保証されるという話になったわけです。

重症度、医療・看護必要度は、必要度Ⅰの場合だったら14から12に、必要度Ⅱの場合は11から8ということになりましたけれども、もともと重症度、医療・看護必要度の基本的なところが変更されているので、これがどう影響したのかということです。入退院支援では、入院料・管理料の1、2については許可病床数100床以上の場合、入退院支援加算1を届けていることということになりました。これが減算対象にもなっています。

救急は二次救急医療機関又は救急病院等を定める省令に基づく認定された救急病院であること。ただし、200床未満の場合には救急外来を設置していること、または24時間の救急医療提供を行っていることとされました。「200床未満の場合は救急外来を設置していること又は24時間の救急医療提供を行っていること」という部分は、日本医師会が強く求めたところであります。ここを入れていただかないと200床未満のところは非常に大変ということは私からも強くそのときに厚労省に申し入れさせていただきました。

やはり在宅復帰率が一番厳しかったと思います。入院料・管理料の1と2は7割2分5厘以上と引き上げられ、3と4はなかったのが7割以上になって、しかも減算がかけられている。いかにここの7割と7割2分5厘の差が厳しいか。グラフを見ると、ここのところをクリアするのが非常に大変だったと思います。この違いが入院料・管理料の1と3、あるいは2と4の間の点数の開きにほぼなっていますから。この在宅復帰率のたった2分5厘という差でこれだけの点数の差が1・3、2・4で設けられているということは、ここのハードルがいかに高いかということの証だろうと思います。

実績部分もかなり厳しくなりました。自宅等から入棟した場合が、1割5分以上が2割になり、自宅等からの緊急入院患者の受け入れが9人以上になりました。入院料・管理料の2と4では、いずれかの実績を1つとなっていますが、ここも全部減算要件がかけられました。あともう1つは、療養病床は5%減算になりましたけれども、実績を満たせば、点数は変わりません。200床未満の病室で2と4が取れるところは守りたいと思っていますので、ここは何としても今後も守っていきたい要点の一つであると思っています。

もう1つは、この見直しで厳しい要件はついたけれども、冒頭お話ししました今回の改定の意義をきちんと理解していただいて、チームとしてしっかりと人を入れて対応したところにはそれなりの点数をつけましたというのが今回の内容だと思っております。

入退院支援加算1を100点引き上げて、看護補助体制充実加算も160点と165点に分けました。それから初期加算も400床以上か400床未満かではっきり分けて、しかも自院からか、他院からかに分けて、つまり割と病床が少ないところで他院の一般病棟から受け入れたのであれば250点をつけておりますし、逆に、自院の一般病棟からですと50点になっているので、すごくめり張りをつけています。要するに、他院から取りなさいというめり張りのついた改定だったと思いますし、在宅患者支援病床初期加算もこのような形で、自宅・その他の施設であれば400点、老健からの場合だったら500点にしましたので、ここのところも、地域包括ケア病棟に求められる役割をしっかりと反映させた点数設計になったということであります。

在宅復帰に向けた流れとしては、地域包括ケア病棟は、特に自宅とか居住系の介護施設にしっかりと復帰させていくということが重要です。この在宅等というのは、改めて言うと、自宅、居住系介護施設、有床診療所で、有床診療所の場合には在宅復帰機能強化加算の届出施設に限りますけれども、そういうところに限ります。老健は在宅等には含まれておりませんけれども、疑義解釈が示されていることは皆さん御存じだと思います。

入退院支援部門を充実させることと、自院でも在宅医療を提供することで在宅復帰の流れをつくることが求められております。つまり、入退院支援部門を充実化する過程で、入退院支援加算の届出もしっかりと視野に入れていただくこと。やはり在宅医療をきちんと提供するということが、これからの大きな課題だと思います。

地域包括ケア病棟の実績として、例えば在宅患者訪問診療料(Ⅰ)及び(Ⅱ)の算定回数が直近3か月で30回以上であること等が評価されておりますので、200床未満の病院であれば、地ケア病棟を活用することと、在支病をしっかり取ること、機能強化加算をしっかり取るということの3つをしっかりと取ることが、生き残っていくためには絶対必要だと思っています。回リハという手もあるかもしれませんけれども、地域包括ケア病棟をきちんと取って回していくということ、在支病を取るということ、機能強化加算をしっかりと算定することの3つを取ると、多分相当違ってくると思うし、ある意味、この3つがそろえばそれなりのステータスになるんじゃないかなとも思っております。

今後求められる対応としては、繰り返しになりますが、入退院支援部門の充実、在宅復帰率をいかに上昇させるか、実績要件を上昇させるか、一般病棟から転棟する患者さんの割合を少しでも減らすこと、積極的な救急対応をすることになります。

ただ、そうはいっても、やはり救急患者さんとかが来たときに、入退院支援部門でどういう戦略を得るかということがやはり一番大事ですよね。

例えばお年寄りの患者さんでも、当然急性期で扱ったほうがいいような患者さんもいますので、脳卒中とか心筋梗塞で本人が治療を望まれる場合には急性期病棟とか高度急性期に入れるべきだと思います。一方で、誤嚥性肺炎とか尿路感染症とか、あるいは帯状疱疹の患者さんとか、比較的軽度の圧迫骨折の患者さんとかいったところですと、対応可能な地域包括ケア病棟で対応していくこともやはり検討していかないといけません。あるいは、先ほど言った患者さんは急性期一般入院料1のようなところで診て、ケアして多少良くなったら、あるところで地ケアに移すと。ただ、どこで移すかということも、タイミングが非常に求められると思います。

あと、恐らく来年また改定で議論になるもう1つの問題点としては、急性期から地域ケア病棟に移るときの問題が令和2年改定でありました。覚えていらっしゃるでしょうか。どこのタイミングで移すかという話がだいぶ問題になって、今回、DPCは期間Ⅰの点数が少し厚くなって、期間ⅡとⅢで点数が少し下がっております。それが今度どう変わっていくかということも一つの焦点ですし、DPCから地ケアに移すときのことがさらにまた議論されるかもしれません。

今回の令和4年改定の入院分科会で調査を行った内容で、地ケアのところを見ていただくとわかりますけれども、平均在院日数は27日ぐらいです。やはりじわじわと減っているんでしょうかね。少ないところでは、20日なんていう病院もありますよね。多いところでは30日を超えておりますし、少ないところだと20日前後の病棟もあって、多分じわじわと下がっている。2年前とか4年前に比べると多分平均的には下がっている。4年前ぐらいでしたら、30日を超えたところはかなり多かったと思いますが、少しずつ下がってきているのかなと思います。

病床利用率は、御覧のとおり70%強になっています。

1日当たりのレセプト請求点数は、地ケア1のところを見ますと3,340点が平均ですが、これも病院によってもちろん違って、4,000点近くを出しているところもありますね。

認知症の有無は、30%ぐらいが認知症有りで、地ケア1で見ますと、3分の1ぐらいを見ている。

要介護別で見ると、地ケア1では、要介護5が1割弱で、要介護4が1割程度、要介護3が1割強ある。この3つで3分の1を占めているということでございます。

自立度別の患者さん割合も、地ケア1のところを見ると、これも3分の1が自立しているということであります。

いろんな意見があって、地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、療養病棟入院基本料については、今回改定による影響の調査、検証を行うとともに、求められている役割のさらなる推進や提供されている医療の実態の反映の観点から、入院料の評価のあり方について引き続き検討することとされておりますので、こういった基準の見直しとか、実績要件とか、初期加算の見直しは、恐らく今後、入院・外来等分科会や中医協でまた深く議論されていくと思います。多分もう少し詳しい資料が出てくるだろうと思いますし、地域包括ケア病棟については今回の改定で厳しいところもありましたが、正直なところ、何とかほとんどのところは乗り切れていただいたと思っています。皆さんが求められる機能に対応しようと頑張ったおかげだと思いますけれども、多分それについていけなかったようなところも一定程度あろうかと思いますので、そういった病院の病棟がどこに移っているのか。その辺のところは多分これからデータが出てくるんだろうと思います。急性期1に移ったのか、あるいは地域一般に移ったのかも含めて、これからどうするのか、あるいはもう一回検討して施設基準を満たせるようになれば、また地ケアに戻るというところもあるかもしれませんし、その辺のところも多分データが出てくるんじゃないかなと思っています。

全体的なイメージでは、①急性期治療を経過した患者の受け入れ、②在宅で療養を行っている患者等の受入、③在宅復帰支援の3つをバランスよく持っていただいているということになっていますけれども、あまりこれをやり過ぎるのも問題があって、やはり地域での役割というのは、ほかの病院との兼ね合いがあるので、一律にこの3つのバランスがいいところだけが正しいということではないと私は思っています。例えば、近くに急性期の病院がないところであれば、当然自院で全部引き受けて、それをいわゆるポストアキュート的に地域ケアに戻さなきゃいけないといったところもあるかと思いますので、それはもう少し、極端な形にならないようには、厚労省に今後も求めたいなと思っています。

実績要件や在宅復帰率は非常に厳しいことになりましたが、何とか皆さんの力で頑張っていただいていると思いますし、2と4は守りたいと思っております。

開設者の割合は50%が医療法人だということと、コロナ感染は5割が受け入れてくださいましたし、指定されていなかったとしても、回復した患者さんを結構頑張って受け入れていただいたので、ありがたかったなと思います。

救急も、地域包括ケア病棟入院料1で80%が救急告示病院の割合でありましたし、2でも86%がありました。だから、非常に頑張っていただいたと思います。

救急患者を受けている頻度も週7日が60%ということで、また受け入れている時間帯も、夜間・深夜も受け入れている医療機関が77%あったということであります。

患者さんの症状によって受け入れの可否を判断しているということなので、先ほど言ったとおり、戦略的にどういった病態の患者さんであれば、まずは地域包括ケア病棟に入っていただくのか、それとも病院が急性期の役割も有しているのであれば、まずは急性期に入って、あるところで地ケアとか回リハに移していくとか、あるいは様々な機能を持っていれば、それぞれに合った状態のところに移っていただけるということはあろうかと思います。

ただ、どのタイミングでというのは、本当にその判断にもよりますし、点数がある程度変化するのであれば、ある程度点数に見合った対応をするのは別に悪いことではありません。当然のことながら、同じ患者さんを診ているのであれば、なるべく点数が高いところで診たいというのは当たり前の話なので、私はそれが別に悪いとは思ってはおりません。ただ、それがあまり歪んだ形にならないように設計しなければいけないなとは思います。

在宅療養の状況としては9割以上が在宅医療を提供していた。2でも6割は提供していたということであります。併設する訪問看護ステーションでは、「24時間対応体制加算の届出」や「併設医療機関以外の主治医の利用者が1割以上」の割合が9割以上だったという一方で、地域における人材育成等の実施割合が低いという問題点が出ておりました。

入棟元割合は非常にばらつきがあります。特に、自宅等からの入棟割合はばらつきが本当に大きく見られます。医療機関で全然割合が違いますよね。ばらばらです。

緊急患者の受入数ですけれども、入院料1及び2においては施設基準を下回っている医療機関が一定数存在して、下回っている原因としては、新型コロナウイルス感染症の影響などが考えられるとされております。

在宅復帰率の分布は、入院料および管理料1・2の施設基準である72.5%をほとんどのところが何とかクリアしていただいているということであります。令和3年と比較して在宅復帰率がしっかりと伸びております。これは皆さんが頑張っていただいたということだと思います。

患者さんの流れとしては、入棟元は、自宅の「在宅医療の提供なし」が33%、他院の一般病床が17%、自院の一般病床からが27%ということでありますし、退棟先は、自宅の「在宅医療なし」が48%、「在宅医療あり」が11%で、6割ぐらいは自宅に戻っているということであります。令和2年とも比較してください。

平均在院日数は、先ほどちょっと話しましたけれども26日ぐらいで、恐らく少しずつ減っていると思います。地域包括ケア病棟・病室の利用に係る趣旨としては、自院の急性期病棟からの転棟先として利用していると答えた方が一番多かったということであります。他院の急性期病棟からの転院先として利用しているところは13.6%、在宅医療の後方支援として急変時等の入院先として利用しているところが16.3%というような調査結果が出ておりました。

最後ですけれども、物価高騰対策です。

物価高騰、本当に大事なところであります。ガス代、電気代が1.5倍とか1.6倍になっている中で、本当に多くの経費がかかってきています。結局、電気・ガスが上がれば、食料品やいろいろな医療材料や、全てのところに影響してきますので、この影響がすごく大きくなってきているということで、前後藤大臣にも、現加藤大臣にも、総理にも直接お願いしております。いろいろな支援はありましたけれども、各都道府県によっても対応が違いますし、届くのに時間がかかるし、正直言って、額も十分とは言い難い。頑張ったは頑張ったんですけれども、なかなか難しい点があったということであります。メニューにもこんなふうに書いてもらったんですが、結局、こういったお金が都道府県とか市町村に下りれば、もらえそうなところはみんな群がるので、医療機関だけがもらえたわけではないということでございます。

非常に時間がかかったということで、岸田総理に4月に面会したときにも、労働環境をきちんと整えていただかないと、人材が流出して医療機関が立ち行かなくなりますとお伝えしました。医療がなくなったところに人は住めないので、このことはしっかりとわかっていただきたいということと、あとは働き方改革等で大学等からの派遣が滞れば地域医療が崩壊し、例えば二次救急とか、あるいはお産とかいったところには全て影響しますと。もし働き方改革という名目で大学からの派遣が1件でも滞ったり、あるいは産科救急ができなくなれば、これは大きな社会問題となりますよということは強く、私から総理に2回、じかにお話をしております。総理は、それを重く受け止めていただいていると思うし、物価高騰とか人件費のアップについても総理に何回もお願いしております。

医療・介護の従事者は800万人おります。日本の労働力の約12%に当たる方々です。前回の改定では、いわゆる看護従事者への給料を何とか支援するということで、結局、いわゆる公定価格を使っている医療という分野で、看護師等の処遇改善が診療報酬として評価されることになりました。これは厚労省としても非常に大変なことで、各病院で対応できるように165段階の点数になりましたが、165段階の点数にしたなんてことは、もともと診療報酬でやるのが無理だということの裏返しですよね。そんな無理な話を診療報酬でやったその理由は何かといったら、診療報酬という公定価格を使って給料を上げなさい、その給料が上がった影響がほかの産業にも伝わるようにしなさいというのがある意味名目だったわけです。でも、今度は逆に他業種が上がってしまって、我々の業種では上げられないという現象が起きているのはおかしな話です。看護師等の給料引き上げは公定価格で令和4年改定でやってくれと言っておきながら、今度は、その公定価格でやっている我々の現場が人件費の高騰に耐えられなくなってきて、対応できずに苦しんでいることは、わかっていただかないとおかしな話です。だから、きちんと公定価格でやっている我々のところに、物価高騰とか、インフレとか、人件費の高騰に値するものをつけてもらいたい。

病院の支出のうち60%を人件費が占めると仮定すれば、それを3%上げるには1.8%かかるわけですから、それがもし2年連続続けばどんな数字になるかわかります。

でも、このところのデフレの中では、2年ごとの改定は0.4とか0.5とか、あるいは0.1のときもありましたけれども、平均すると0.4ぐらいでした。デフレだからこそ、皆さんにも何とかそれで耐え忍んでもらいました。でも、もう耐えられない状況です。本当に雑巾を絞っても、血の一滴も、汗の一滴も、水の一滴も出ないような状況になっているので、ここは、いかに苦しい財政であっても、社会保障費にしっかりとお金を回してもらわなければ困るということは、ずっといろんな議員の先生方にもお願いしています。

ここで大事なのは、いわゆる厚労族と言われている先生方だけにお願いするのではなくて、厚労族以外の先生方にもお願いしてください。つまり、厚労族以外の先生方は、どちらかというと社会保障費をカットしたいという方が結構多いので、「そうではない」ということです。社会保障費をきちんとつけていただくことが、日本の健康、人生を幸せに過ごせる方を増やすことになるし、何よりも、いろんな業種を支えることにつながるので、何とか社会保障費をきちんと守ってほしい。子育ても大事ですし、防衛費も大事だけれども、何とかこの社会保障費のところ、特に公定価格である診療報酬アップに何とかお願いをしたいというのは、先生方、全国47都道府県から来ていらっしゃるので、ぜひ全ての国会議員の先生方に、特に厚労関係に、あまり興味を示さない先生にもお願いしてください。私から、ここはぜひとも強く要請いたします。そういった先生方に「社会保障費はカットすべきだ」という声を上げてもらいたくないというのがお願いなので、ぜひそこのところは強く強くお願いしておきたいと思います。

労働環境をきちんとしていただかないと大きな社会問題になるということは総理にお願いしてきましたし、いろいろな病院や診療所の高騰に対する現況をすべて資料としてつけております。これはもう茂木幹事長、萩生田政調会長にもお願いをしてございます。ずっとお願いをしてばかりでございますけれども、何とかお力添えを頂ければと思います。

かかりつけ医のところは話せましたけれども、今回、かかりつけ医は何とかという点について、かかりつけ医の制度化ということは一定程度御理解いただいて、ストップできていると思います。一旦ストップはされておりますが、ストップというより、一旦立ち止まって考えるところまでは押し戻しましたけれども、この後の議論で続きます。財務省は、何といっても、かかりつけ医と非かかりつけ医の2つに分けたいというのが基本的な考えであります。かかりつけ医は制度化して登録制にして1人に決めて、そこだけしかアクセスできない、管理料もそこだけしか取れないようにする。非かかりつけ医になった場合には、そこに行くにはかかりつけ医からしか回せない、あるいは非かかりつけ医に直接行きたければ、3割負担以外に何らかのプラスアルファを求めてくるというのが財務省の基本的な考え方なので、かかりつけ医になっても大変、非かかりつけ医になってもさらに大変な状況は目に見えていますので、かかりつけ医と非かかりつけ医を分断してはなりません。

かかりつけ医にはこんなことをしてほしい、あんなことをしてほしい、それはそんなそうです。いろんなことをしてほしいのは確かだけれども、制度化をして、かかりつけ医と非かかりつけ医に分けられたら、日本の医療はアウトです。これだけははっきりしている。だから、かかりつけ医の機能をどんどん高めるよう、なるべくみんなで頑張っていく。患者さんに親身に当たる、きちんと紹介先を見つけてさし上げるといったことはみんなで頑張らなきゃいけない。連携して頑張らなきゃいけないのは確かだけれども、制度化上、かかりつけ医と非かかりつけ医に分けられてしまえば、国民にとって何もいいことはないし、我々にとっても何もいいことはない。かかりつけ医になれば全部マルメになります。外来が全てマルメになる。マルメになれば、医療費のコントロールはたやすくなります。非かかりつけ医になれば多分点数はカットされたり、あるいは先ほど言ったとおり、3割負担以外にも、いろんなプラスアルファの負担を患者さんに求めてくることになるので、当然、患者さんは行かなくなる。特にマイナー系であれば、非かかりつけ医になれば患者さんは半減します。

だから、そういったことも含めてぜひもう一度お考えになっていただきたい。かかりつけ医がいろんな機能を持ったほうがよいことは間違いない。頑張らなければいけないことは間違いないけれども、2つに分けてしまうのは非常に危険な考えです。

地域に根差した医師の活動ということで、私はいつも言っているんですけれども、医療機関の中だけでやっていては駄目です。医療機関内で、医者とか医療従事者が一生懸命働くのは当たり前のことだと思いますよ。医療機関の外でどれだけ地域のために働いているのかというところを、やはり世間は見ているんだと私は思っているので、地域の休日夜間急患センターに行って執務するとか、輪番に参加するとか、いろんな保健所業務に協力するとか、警察業務に協力するとか、介護保険認定審査会の委員をするとか、学校医をするとか、産業医をするとか、健診活動するとか、予防接種をするとか、がん検診に協力するとか、がん検診の二次読影に入って参加するとか、多種職連携に務めるとか、ACP普及に努めるとか、介護保険関係のことをするとか、医療DX・GX、死体検案、看護学校での看護職の養成を支えるとかいったことをしてもらう。全部、みんなで手分けしてするということが大事で、私はこれを理解しないで開業してほしくないといつも言っています。これを理解したら開業していいよと。これができない開業医は駄目ですよ。

だから私は大変だけれども、私は一日中仕事ができないので、この後もこれが終わったらまた長野に行って、明日は富山に行って、来週は長崎に行ってという話になっていますけれども、朝少しだけでも診察をして、少しでも頑張ってワクチン接種をしたり、学校保健とか産業保健もできる範囲内でやったり、今、日医の常勤役員で保険の審査員をしているのは私だけですけれども、保険の審査員も歯を食いしばって何とかやっております。それはやはり、こういったことを言っているので、やめられないんですよね。やっていない人が言えないものですから、私もこういうのをやりながら何とか頑張っていますので、地域に根ざした活動、機能連携をきちんと進めていきましょうということをずっと言っているわけであります。

かかりつけ医のところはあまり話せませんでしたけれども、エッセンスは伝わったのではないかと思います。かかりつけ医はあくまで患者が選ぶものだということがコンセプトで、かかりつけ医を選ぶのは患者の権利であって義務ではないということは、ずっと言っています。それをわかっていただいた結果が、今回の全世代社会保障法案にもつながったと思っておりますし、骨太の方針にも、かかりつけ医機能については、あまり突っ込んだ記載がなされなかったと思います。

今回導入されるかかりつけ医機能の報告を見て、立ち止まってもう一回考える。かかりつけ医機能がうまくできていないところは、できていないところの原因を突き止めて、そこを補完する。だから、病院の機能報告と一緒ですよね。あるいは医療の考えそのもの、連携して頑張るけれども、それでもできていないところがあれば、どうしたらいいのかということを考えようというところが基本的な考え方だと思っています。かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けてこれから頑張っていくということですが、これは今言った考え方のとおり、病院、診療所の別を問いません。1つの医療機関で全部できるわけじゃないので、連携してやる。そして、かかりつけ医と非かかりつけ医に分けてはいけない。その代わり、我々もかかりつけ医として選ばれるように積極的に努めていかなきゃいけないし、病院としても努めていかなきゃいけない。努力しなきゃいけないことは間違いないので、これをしっかりとアピールしていくことが、国民に信頼される医療に通じるんじゃないかと思っております。

今日は、とても全部しゃべり切れませんでしたけれども、時間が到来しましたので、私の講演を終わらせていただきたいと思います。

御清聴賜りまして、ありがとうございました。(拍手)

仲井培雄

松本会長、すばらしい講演、どうもありがとうございました。

先生が臨床医として、また日本医師会長として、あらゆる方面に力を注ぎながら様々なことをされていることがよくわかりました。これからもどうぞ日本の医療を引っ張っていただければと思います。

今日はどうもありがとうございました。

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