研究大会

第10回地域包括ケア病棟研究大会

【特別公演2】

2024年診療報酬・介護報酬同時改定から見た地域包括ケア病棟の方向性

猪口雄二 (地域包括ケア推進病棟協会副会長 / 医療法人財団寿康会寿康会病院理事長 / 全日本病院協会会長 / 日本医師会副会長)

猪口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、今回、「令和6年度診療報酬・介護報酬同時改定から見た地域包括ケア病棟の方向性」ということで、厚生省の保険局前医療課長の眞鍋馨先生に講演をお願いしております。

慣例により、私から眞鍋先生を簡単に御紹介させていただきたいと思います。

平成7年東北大学医学部を御卒業後、当時の厚労省に入省されております。私もよく覚えているのは、平成17年に保険局医療課の課長補佐になられて、18年改定、マイナスのすごい改定でしたが、そこのど真ん中で、実は療養病床の医療区分、ADL区分が導入されたのはそのときで、私もそのときの慢性期の委員として参加させていただいておりましたので、いろいろと御相談をさせていただきながら、そういうものが入ったということです。

また、平成27年には、同じ保険局医療課の企画官として、宮嵜課長、そして迫井課長、お二人の課長に仕えられております。その後、平成30年に厚生労働省老健局の老人保健課長になられ、そして、令和4年保険局医療課長として、今回の改定の中心として仕切られた課長でございます。また、先日、今度は厚生科学課長に移られたというふうにお聞きしております。

もうとにかく診療報酬改定の中では本当に以前からずっと関わりが強く、ベテランの方が今回の改定になられたということで、診療報酬と介護報酬同時改定、これをですね、今後の地域包括ケア病棟の方向性も少し絡みながら御講演いただけるということです。  それでは、眞鍋課長、よろしくお願いいたします。

眞鍋(厚生労働省保険局医療課長)

厚生労働省の医療課長をしておりました眞鍋でございます。一昨日まで医療課長でしたが、昨日辞令をいただきまして、大臣官房厚生科学課の課長ということでございます。今日は、若干踏み込んだお話ができるのではないかなと思っております。

 

私はこれまで、診療報酬、それから介護報酬含めて、何回か改定を担当させていただいております。医療政策の大きな方向性はありながら、どのように改定が寄り添うかということをいつも考えておりました。前回の改定、平成30年の同時改定、それからR6年の同時改定でありますけれども、この流れをどのように我々が考えているかということをお話しさせていただきたいと思います。

午前中に基調講演がございまして、その後、特別講演1、迫井医務技監の講演がありまして、大きな医療政策の流れはその中で語られたとおりと思います。それをどのように診療報酬やあるいは基金などで裏打ちし進めていくかということをいつも考えております。今回の同時改定は、医療と介護を合わせて、一定程度こちらの方向を示す改定になったというふうに思っています。

昨年、この場で私、講演をさせていただきました。その場では、地域包括ケア病棟の歴史、あるいは令和4年度改定の内容を御説明しました。今日は、今回の改定を通じてどのような今後の行く末を考えているかということに着目をして御説明させていただきたいと思います。それから、令和6年度の診療報酬改定の全体として大きな流れを説明させていただきたいと思っております。

それぞれのスライドで、どのようなことを僕らが考えたかということを中心に御説明させていただいて、流れを御理解いただきたいと思います。そして、次のR8ですとか次の同時改定、そしてまた2040年以降を見据えて、どのような立ち位置で自らの病院や自らのサービスを持っていくかお考えいただけるといいと思います。

まず、今回の改定ですけれども、近年にない社会経済状況への対応も行いましたということで、目の前の対応というふうに私の中では整理をしております。とともに、ポスト2025を見据えた対応、将来的な対応ですね、同時改定による対応なども行った結果、内容が幅広いものとなっております。

中医協という場で、診療報酬が決められるのですが、中医協の小塩会長が多くの課題で解決を迫られたというふうに総括をされています。

その中で、ポスト2025、いわゆる中長期の対応ということで、私どもがいつも念頭に置いて作業したのはこの2つであります。医療においては生活の視点を重視していこう、そして介護においては医療の視点の継続、医療の視点を含めたケアマネジメントを重視していこうと、こういうことでありました。この視点で読み解いていただけると、改定というのは御理解いただきやすいかなと思います。

国の政策の見通しを把握するためにということで、平成25年(2013年)の社会保障制度改革国民会議報告書、10年以上前の報告書ですけれども、いまだにこの方針に沿って我々医療制度の改革を進めていこうという、通底する理念をここで整理しているものになります。

この中で地域医療ビジョンという言葉が出てきて、その後、地域医療構想というふうなものに発展していった。そしてまた、地域包括ケアを今後進めていきましょうという流れになっています。実は、今後は高齢者の患者さんが増え、医療・介護の両方のニーズを併せ持つ方が増えるということはもう既にこの報告書に書かれていまして、だから地域包括ケアを進めていくということが書かれております。

それから、こういう流れがありつつ、近年で申し上げると令和4年、一昨年の12月に取りまとめられました全世代型社会保障構築会議、これは子ども子育てにお金を使っていきましょうということが書かれています。この平成25年の社会保障制度改革国民会議報告書、それから一昨年の全世代型社会保障構築会議の報告書、この2つを読み解いていただけると、国がどのような形で今後社会保障を進めようとしているかということは御理解いただきやすいかなと思います。

子ども子育てですけれども、実は私、前回のこの報告書の中で注目しているのは住まいでありまして、高齢者の住まいについて言及があるのも実はこの報告書の特徴であります。

その上で、これも迫井医務技監のスライドで紹介がありましたが、骨太の方針。これは毎年6月に取りまとまります。この中に何が書かれるかというのを我々はいつも注目していますし、我々も施策として実現したいものをこれに何とか入れていただきたいということで、様々な方面と調整をします。

骨太の方針に書かれると、次の年の日本政府の予算要求に反映されることが通例です。

先ほどの午前中の講演にありましたけれども、地域医療構想に加えて、今度は医師偏在についても骨太の方針に書かれましたから、次にどのようなことが方向性として出て、予算要求に反映されてくるか、あるいは来年の法改正の中でそれが反映されてくるかというところを御注目いただければと思います。

目の前の改定に振り回されない医療経営という観点では、こういう動きを御理解いただけているといいかなと思います。

私の中では、うれしかったのはこれです。「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理の連携・推進を図る」という言葉を入れていただきました。これは本当にありがたかったですね。それから、同時改定に向けてということで、「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担」ということが書かれていて、こういったことの影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスを受けられるよう必要な対応を行うという形になっています。

この文言に落ち着くまでに、我々は財政当局と本当にシビアな交渉を何度も重ねています。

そして、この骨太で書かれた言葉がそのまま改定の基本方針の一丁目一番地の認識に入ってくるので、我々としても、骨太の方針できちんと書けておくと、このように診療報酬改定の基本方針を打ち出す場においても、物価高騰・賃金上昇、今回の改定で対応しなきゃいけませんよねということをアピールできることになるわけであります。

その中で、他にも目の前の対応は幾つかございます。例えば医療DX、ポストコロナですね。一丁目一番地は働き方改革と賃上げです。2つ目にリハ、口腔、栄養などが入っています。

次に申し上げるとすれば、お金の話です。年末に大臣折衝というのがありまして、12月20日に改定率が決まりました。本体が0.88%、薬価等で四捨五入するとちょうど足し合わせてマイナス1.0になるので、全体としてはマイナス改定ですけれども、本体で0.88という、若干これまでよりは高い改定率をいただきました。これは賃金対応ということですね。そして、賃上げに0.61%と0.28%を使うということが示されておりますので、実は、00.89%程度は賃上げに使いましょうというのが今回の改定です。つまり、財源はほぼ賃上げに使っていきましょうと示されたところであります。一方で、若干適正化の部分などもございますので、ここを活用してほかの政策的なことは対応するということになりました。また、入院であれば、1食30円今回上げましたけれども、それなどもプラス改定の一つの要素に数えられております。

その上で、ここから3枚のスライドが改定の全体像ということですけれども、1、2、3、4、5、6、7、8、その他とあります。1、2、3が目の前の対応。この目の前の対応は何といっても賃上げ、次が医療DX、そしてポストコロナ対応です。

賃上げに関しましては、今回確実に賃上げをやっていただくための点数を設定したり、それから基本料を引き上げたりしています。

医療DXは、これも午前中の講演にありましたが、マイナカードを使っていただきたい、そしてまた、医療DXを推進することにぜひ御理解をいただいて御協力いただきたいということを促す、そういう診療報酬項目です。

あとは、ポストコロナ。これは去年の5月8日に5類になりましたけれども、5類になった後も、未知の感染症への緊急時の対応という観点で感染症法が改正され、第8次の医療計画が策定されました。その対応の診療報酬、項目ですね。これらが目の前の対応です。

これに加えて同時改定、中長期ですね。外来、入院、在宅、そして重点的事項、個別事項というふうに御理解いただけると、今回の改定は幅広い改定ですが、御理解いただきやすいかなと思います。

ちなみに、脱線しますが、前回改定の目の前の対応は何だったか。これはまさにコロナ対応です。その前の改定の目の前の対応は、医師の働き方改革です。

このように、毎回改定、その時期に行うべきことと、それから、中長期に大きく制度を動かしていく中で医療機能の分化、強化、連携を進めていくといった改定と、2つの視点が求められるということになります。

さて、入院ですね。入院は、今後、高齢者の救急患者が増えるということを踏まえた新しい入院料を創設したり、あるいは基本料の増で身体的拘束の最小化を求める取組、こういったことを求めています。

それから、在宅。在宅は今後もニーズが増えていきますので、在宅の点数自体は比較的余裕を持った点数になっていますけれども、それを、よりICTを活用して連携を進めていくような改定内容になっていますし、一部適正化の入ったところもあって、めり張りが利いた改定になっています。

 それから、重点的な分野で特徴、トピックですかね。いわゆる下り搬送の評価や、小児に付き添う、患者さんに対する御家族への配慮を求めたり、、精神科ではいわゆる回復期の病棟の入院料を創設したりとか、そういったトピックがありました。ほかにも、個別項目で申し上げると、リハビリテーション、栄養、口腔の連携体制加算といったものを新たに設定しております。

また脱線しますが、R3年の介護報酬改定では、私は老人保健課長として担当させていただいておりました。そのときに、介護報酬改定の中ではリハビリテーションと機能訓練、それから栄養と口腔というのは三位一体で進めたいということを打ち出したわけですけれども、それを医療でもやりたいということと、医療と介護の連携を進めたいということも今回打ち出したところであります。

入院体系の見直しについて御説明をさせていただきたいと思います。

これは1枚で示すと、急性期、回復期、慢性期ということであります。今回は急性期、特に高度急性期から慢性期まで、ほぼ満遍なく私ども手を入れさせていただきました。

中医協は毎週水曜日に開かれて入院その1から始まって、入院その2、その3、その4というように、急性期をどうしよう、回復期をどうしよう、慢性期をどうしましょうという形で議論を進めていくんですけれども、入院についてはその10まで御議論いただきました。

高度急性期から慢性期まで、かなり手が入った改定になっていると思います。ICUで申し上げると、宿日直で運営されているICU用の点数を設定しました。そもそもが、医師が24時間起きていてちゃんと全身の管理を行うということを前提につくられた点数でありますが、宿日直で行われているという実態もありましたので、そういった実態を反映した点数を設定すると同時に、SOFAスコアというスコアを導入して、生命予後に影響があるような患者さんを受け入れてくださいという含意の点数にしました。

と同時に、ここでは働き方改革も考えていまして、宿日直でICUを運営するような形になると、外科で手術をされた先生がそのまま宿日直に入るみたいなことが求められる実態があります。我々としては、なるべくならばそれをしないで、働き方改革をしてほしいと思っています。

それから、急性期充実体制加算と総合入院体制加算でありますが、これは総合性と専門性をそれぞれ評価するために精緻化をしていますが、内容を見ていただければ分かりますとおり、全身麻酔下でのオペをする病院を集約化する形の改定内容になっています。難しい手術をやるような病院というのは、こういう加算を取っていらっしゃる病院にだんだん集約されていくのだろうと思っております。

あとは、重症度、医療・看護必要度も基準を引き上げまして、7対1も、介護の手間ではなく、医療の内容に応じて算定し続けられるというような、いわゆる急性期を集約化していくようなメッセージが強く出ていると思います。

今後の医療提供体制を考えたときに、お金の制約と人の制約がありますが、私はお金の制約よりも、恐らく地方においては人の制約が先に来るだろうと思っています。

その場合に、急性期を集約化していく方向が重要だと思います。そういった私どもの中の焦りにも似た感覚があって、今回、急性期に関してはかなり集約化を進めていくのだというメッセージが出ているかと思います。

次、回復期ですが、まさに地域包括ケア病棟、それから回復期リハ病棟、特に今日テーマとなっております地域包括ケア病棟ですけれども、前回改定ほどは私ども大きく変えていないつもりです。在宅復帰率の分子にも、老健への入所を半分に戻したりとかしていますが、在院日数でよりめり張りのついた点数になるようになっています。

それから、回リハ病棟がもう少し適正化された部分でありまして、この体制強化加算ですね。平成26年に導入されたものですが、これを廃止したりということにしています。

それから、慢性期については、私は平成18年改定時に医療区分を担当させていただいておりました。その際の分類をより精緻化する形での改定になっておりますので、高度急性期から回復期、慢性期まで、全てにおいて手が入っていると思っていただいていいと思います。療養病床は報酬の水準はあまり変わっていないと思います。

あとは、今回のトピックですけれども、今後増える高齢者の救急搬送に対応する地域包括医療病棟というのを新しく創設いたしました。

次に外来と在宅ですけれども、マイナ保険証やICTを用いた情報連携を進めていきます。それから、人生の最終段階における医療ケアを進めていきます。

それから、令和6年度の診療報酬改定は、施行時期を後ろ倒しにしています。6月1日にいたしました。2年に1回の改定を前提とすると、これが遅らせられる限界ですね。改定の後に、検証調査というのを行うんですが、その改定の効果が表れているかどうかを検証するための調査をするには、このタイミングで施行しておかないと、その後の調査が間に合わない。これ以上後ろ倒しをすると、恐らく2年に1回の改定ではなくて、3年に1回にするしかないだろうなと思います。

 

実は、この2か月の後ろ倒しは、診療報酬改定DXの一環です。新しい診療報酬が示されて、そこから4月までにベンダーさんが本当に大変な思いをして医療機関に入られて徹夜で作業される、病院の事務方も徹夜で作業しなきゃいけないということをなるべく避けて、業務量を平準化したいという思いがあり、6月1日施行にしております。

さて、これはトリビアです。改定の個別事項をまとめたA4の紙の束があります。短冊って通称するのですが、短冊の枚数は今回が過去最高でして、769枚ありました。過去3回が大体500枚ぐらいでしたので1.5倍ぐらいの分量がありましたということです。 さて、個別改定項目の説明に入らせていただきます。、特に地域包括ケア病棟、地域包括医療病棟についてお話をさせていただきたいと思います。

令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会というのをやりました。同時改定は6年に一回の大事な機会であります。実は、これまで、12年に施行された介護保険以降ですね、18年改定、24年改定、30年改定、そして令和6年改定がそれに当たります。前回も、これは迫井医務技監が医療課長の時ですけれども、この意見交換会を開催されました。実は、私は、その時には企画官でありまして、一緒に仕事をさせていただいておりました。今回もそれをさらに充実させる形で、3回にわたってやらせていただきました。テーマは1から9まであります。ちなみに、この意見交換会のスライド枚数も総数700枚を超えています。それで、大体1テーマ100枚ぐらいのスライドを提示しています。

ケアマネージャーさんと主治医がもっと連携されるといいですよねということとか、リハビリテーション・口腔・栄養は、先ほど申し上げたとおり医療でもリハ・口腔・栄養の連携を推進したい、それから医療と介護のリハの連携をさらに進めたいということですね。それから、高齢者に対応した急性期入院医療は、要介護高齢者で緊急入院されるときに、高度急性期ではなくて、そういう方々をちゃんと診ることが得意な病院を評価したらどうか、どの病床で受けるのがいいかという御議論をいただきました。

それから、施設における医療に関しては、高齢者施設や障害者施設でできる医療を厚くすることによって緊急入院を減らそうといった取組であります。

あとは、人生の最終段階における医療・介護ということで、意思決定支援を今後全ての病院でお願いしていきたいという改定になりまして、実は、今回改定でテーマとして改定に結びついたことというのは、この意見交換会で話されたこと、結論というか課題として整理された要素があります。

幾つか御紹介したいと思います。

このスライドは、1回目の検討会のテーマの論点です。医療においてはより「生活」に配慮した質の高い医療を、介護においてはより「医療」の視点を含めたケアマネジメントをとしてあります。3月15日に資料として出しております。3月の時点で、我々としては、この3月、4月、5月で大体、同時改定のテーマというのを事務局では整理していたということです。

例えば、要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療。要介護の高齢者に対する急性期医療は、介護保険施設の医師や地域包括ケア病棟が中心的に担い、急性期一般病棟は急性期医療に重点化することで、限られた医療資源を有効活用すべきであるといった御意見をいただきました。地域包括ケア病棟はまさに在宅支援の病棟であって、高齢者の亜急性期をしっかり受け入れるため、このような役割を推進すべきであるということ。あとは、医療機関と介護保険施設の平時からの連携が重要というような意見をいただきました。ほかにも、急性期病院にリハ職を配置することでよりよいアウトカムが出るのではないか、こういったことも御指摘いただいています。

これは、その際に提出した資料です。在宅要介護高齢者の要介護度が悪化する要因を多変量解析しています。最も大きい要因は加齢でありますが、実は、次に大きい要因は急性期病棟への入院です。つまり、急性期病棟に入院されるとADLが下がるということです。そのまま在宅に帰ってこられればいいですが、帰ってこられなくて回リハ病棟に転棟したりということです。

あとは、退院後にリハビリテーションがきちんと介護で提供されるまでに結構時間的な乖離がありますよねというデータです。例えば回リハ病棟から退院されて介護保険のリハビリテーションを提供されるまでに2週間以上かかっている割合が、実は23.5%もありますよということです。2週間もリハビリが入らないで居宅で寝ていらっしゃると、当然ADLは落ちますよね。

次、こちらは高齢者施設における医療でます。自施設の職員による対応力の向上を図りましょうということを言っていただきました。自施設で対応可能な範囲を超えた場合にのみ外部の医療機関と連携して対応に当たるべきということであります。連携する医療機関は、名前だけの医療機関じゃなくて、地域包括ケア病棟や在支病、在支診、有床診など、地域の医療機関と中身のある連携体制を構築するべき。

それから、次は認知症です。認知症で、例えば医療機関ではやむを得ないという理由で身体的拘束が実施されていますが、療養病床では工夫すれば身体的拘束が外せることが分かってきている、急性期でも身体的拘束の最小化に取り組むべき、認知症の方の尊厳を保持することは重要といったこともおっしゃっていただいています。ちなみにこれは池端先生のお言葉です。

あとは、人生の最終段階における医療・介護でありますけれども、意思決定支援が重要であるということを言っていただいています。これを在宅や施設における医療の中でやっていきましょうと。特に非がんですね、がんでない方、呼吸不全、心不全の方にもこういう意思決定支援が必要ということを言っていただいたこともよかったかなと思っています。

改定の具体ですが、まず、賃上げの話でもあるんですが、初再診を引き上げています、初診3点、再診2点ですね。それから、入院基本料も上げています。入院基本料の上げ方は濃淡があります。若手医師がたくさんいらっしゃるところは厚く上がっています。特定機能病院入院料は104点、7対1病棟入院料は38点です。

この入院基本料を上げる、その要件に幾つか上乗せでお願いしていることがありまして、その1つが栄養管理体制。これは6月1日から、入院料通則で退院時にちゃんと栄養を評価することを要件としています。次に、先ほどの意思決定支援です、指針を作成していただきたい。これは1年間の経過措置付きです

次は、身体的拘束を最小化する取組を強化するということで、組織的に身体的拘束を最小化する体制の整備を求めることといたしました。

 

介護と医療を見たとき、介護は原則身体拘束廃止という理念で制度がスタートしています。医療は、もともとその前からずっとサービス提供されておりますけれども、身体的拘束に関する提供者側の心理的なハードルは介護よりは低いだろうというふうに思います。身体的拘束を最小化する取組を医療でも根づかせていき、要介護状態も軽減され、それから在院日数も短くなりということにつながるというふうに思っておりますし、患者さんの尊厳が守られると思っております。

それから、医療と介護の連携ですね。ここは介護保険の改定と医療保険の改定を細かい字で書いていますけれども、介護保険施設側で協力医療機関を定めるときに、いつも相談に乗ってもらえる病院、必要があれば往診をしてくれる病院、原則入院を取っていただける病院、この3つを満たす医療機関ですね。有床診療所も含めてですけれども、医療機関を協力病院としてくださいということにいたしました。3年間の経過措置付きですけれども義務化されています。

診療報酬でもそれに対応する形で、こういう機能を持っている病院、在支病や地ケア病棟を持っているような病院は協力医療機関になることを望ましいということにしましたし、それから、往診をしたり入院を取っていただいたときの加算を、通常の評価に加えて設けています。こういった形で医療と介護の実質的な連携をすすめることにしました。

特に介護施設への義務化に関しましては、介護給付費分科会でかなり御議論があったあったと聞いています。私も老人保健課長をしていましたので雰囲気分かりますから、かなりこれハードル高かっただろうなと思います。

あと、在宅で申し上げると、ここはかかりつけ医を評価するような点数の中で、ケアマネージャーさんと連携してください。あるいは介護保険サービスに携わった経験がある方をかかりつけ医にしてくださいといったメッセージの点数になっています。ということで、同時改定だったからできた部分が大きいですけれども、こういうふうな連携を持った改定ができているということであります。

あと、リハですね。これもお互いに連携するという感じなんですけれども、診療報酬側もリハビリテーションの計画書の内容を介護事業所に提供することになっていますし、介護側も、リハビリを提供する際には医療での計画を入手しなければいけないということで、お互い迎えに行くというか、提供しなきゃいけないし、もらわなきゃいけないというふうな規定を入れさせていただいております。これも、切れ目のないリハという観点で大事と思っています。

次に、地域包括医療病棟。高齢者の救急搬送を集中的に受けていただける病棟入院料を新設しています。高齢の救急患者さんを受け入れていただいて、そして一定の医療資源投入を早期から行い、早期の退院に向けてリハビリテーションや栄養管理を早期から提供していただく。そして在宅復帰に向けた取組を進めると、こういったことを求めるものであります。点数自体は3,050点で包括範囲はDPCと一緒ですので、地域包括ケア病棟よりは出来高の範囲が広いということになります。

地ケア病棟と地域包括医療病棟の違いについてですが、地ケア病棟の役割は変えていません。急性期からの患者さんの受入れ、そしてまた在宅復帰、在宅療養支援という役割は変えていなくて、そこはぜひしっかりキープをしてほしい。地域包括医療病棟は、どちらかというと高齢者の救急に特化する形で考えていまして、そういった方々をADLを下げずに在宅に帰していただくと、そういうふうな役割を担っていただくものだろうと思っております。

ですので、恐らくですね、地域包括医療病棟入院料単独で病院が成り立つかというと、そうじゃないだろうなと思っています。ですから、7対1病床で1病棟をこれに替えられたり、あるいは地ケアを持っていらして、実質10対1の看護師配置があるところは算定できるということだと思います。

この要件、非常に厳しいと御指摘いただきますが、、理念先行型でいいと私は思っていました。小さく産んで大きく育てるという趣旨もありますが、まずはこの基準で実績を見させて頂いて、それを基に次の改定で要件をどうするといったことを考えていただければいいと思っておりました。

 

あとは、下り搬送ですね。救急患者の連携搬送料というのを創設しました。三次救急医療施設に高齢者の救急患者さんを運んで、診断していただいた後に、必ずしもそういう医療機関じゃなくその患者さんの周りの近くの病院の地域包括ケア病棟でも大丈夫だという場合には速やかに下り搬送していただいて、そうしたら三次救急医療機関のベッドが空くわけです。そういったことで医療資源の有効活用に資する形にしたいということであります。

それから、地域包括ケア病棟入院料は40日を前後で点数を変えました。より早期の在宅復帰を目指すということですね。それから、在宅患者支援病床初期加算を見直しております。在宅患者の救急入院の受入れを推進する観点ということで、当初は厚い点数にしております。

ここから2枚は、前回改定のスライドです。前回改定は、冒頭で申し上げたとおり、目の前の対応はコロナ対応でしたので、感染対策向上加算を通じて医療機能の連携と分化を図っていくと、機能分化と連携を図っていくというような改定でありました。

在宅で申し上げておきたいのは、特に在宅医療支援病院に今回基準変わっていますけれども、これは在宅の診療報酬の算定回数をずっと並べたものです。訪問診療、訪問看護が一番多いことは自然だと思いますこの赤囲みの左側は毎回の改定でリバイスして数を出していたのですけれども、今回、この在宅患者の訪問栄養食事指導について示したところ、同じ縮尺では高さが分からないぐらいの回数しか算定されてないということでありました。つまり、在宅の高齢者に対して栄養指導ってあまりされていないということと受け止めています。どのぐらいの回数がいいかというのは、これはぜひ現場でお示ししていただければありがたいと思います。だから、在宅療養支援病院の先生方におかれましては、栄養士さんを入れていただいて、在宅の方に対して栄養指導をちゃんとやっていただきたいと思っています。

高齢者には低栄養の方が多いです。入院取られたときに高齢者で低栄養の方、あるいは低栄養リスクの方が多いと思うのですが、在宅にいらっしゃると、高齢者は自分で食事を整えるので低栄養の状態が続いてしまうのですね。そういう方に対して、訪問診療に入ったとき、栄養士さんに行ってもらったほうがいいなと思ったら、迷わずに栄養指導を入れていただければと思います。

あとは、リハ・栄養・口腔連携体制加算というのを、これはもともとあったADL向上等加算を組み替える形で設定しています。

これの狙いは、より早期からの切れ目のないリハです。土日祝日にもちゃんとやっていただける体制を取っていただきたいということです。特に脳血管疾患の場合には、リハビリテーションのゴールデンタイムがあります。その間にちゃんとリハを行うことによってADLが戻るというか、回復する度合いが高くなるということであります。このゴールデンタイムを逃さないでほしいということです。土日祝日もちゃんとリハをやっていただきたい、あと、多職種で連携していただきたい。特にリハビリを付加するのであれば、栄養をちゃんと取っていただくということだと思います。

あと、疾患別リハでどの職種が行ったかということを分けて算定していただくようにいたしました。これは、将来に向けてのエビデンスの構築、データ提出をいただくという観点であります。これを組み合わせて分析すると、恐らく2年後には、どういう疾患の人にPTさんが何単位やって、OTさんが何単位やって、STさんが何単位やったか、そしてその方のADLがここまで上がったとか、そういったデータが恐らくナショナルデータベースで、NDBベースで分かるようになります。

あとは、DPC対象病院であれば、何日目にどの職種がやったかということも分かるようになります

あとは学会と連携をしなければいけないですが、やっぱりベストプラクティスをつくってほしいと思っています。こういう疾患の状態の方にこういうリハをこれだけ提供するとここまで回復するのであると、それをちゃんと、ベストプラクティスを標準化して、全国の医療機関がそこを目指してリハを提供していくようになるといいなと思っています。

このデータ分析が進んでくると、恐らく今のような1単位20分を何単位みたいな評価でなくすことができるんじゃないかなと私は思います。

最後のまとめに移らせていただきたいと思います。

それから、令和6年度診療報酬改定の基本的な考え方ということで、私ども、生活の視点を重視していきましょうということを医療で求めることにいたしました。

普段我々生活をしている場で好きなものを食べたり着たりしています。医療機関、特に入院というのは生活の場からは遠い場だというふうに私は思っています。特に遠いのは、ICUとか術場ですよね。そこにいらっしゃる時間をなるべく短くして、早く介護施設や在宅に戻っていただけるように、そういった生活の視点を重視するということにつなげていきたいということでありまして、この上から下への患者さんの流れを加速したい。これが今回の改定の本旨でありました。

生活の視点の重視。つまり、生活から遠い場にいらっしゃる時間を短くするということであります。だから、ICUもICUにふさわしい人を入れてください、7対1も平均在残日数を18から16に短くし、重症度、医療・看護必要度を厳格化し、そして介護施設では介護施設でできる医療を増やすことによって入院しなくて済むようにしたい。そして、入院するにしても、地域包括医療病棟などを整備することで、なるべく早い在宅復帰を目指すようにしていきたいという今回の改定でありました。

さて、メッセージです。地域包括ケア病棟協会ですけれども、今回、地域包括ケア推進病棟協会に法人名を変更されたとお聞きしました。

今後のあり方ということですけれども、私はまさにこの御理解、ここを突き詰めていくというか、地域包括ケアを担う、また、それは実は我々なんだということも宣言されていると私は受け取りますけれども、そういうふうなことを、様々な意味や意思を内包されている法人名変更だなと思いまして。我々もこれを後押ししていくべきと思っております。

最後、ちょっとエールという形でもありましたけれども、以上で私のお話を終わらせていただきたいと思います。  御清聴ありがとうございました。

猪口雄二

眞鍋課長、同時改定のいろいろなエッセンス、そして実態について詳しくお話をしていただきました。ありがとうございました。

あと時間が5~6分ございます。フロアのほうで質問がある方は、ぜひ挙手をお願いいたします。  どうぞ。

鬼塚一郎

眞鍋先生、大変すばらしい御講演ありがとうございました。

福岡の田主丸中央病院の鬼塚です。

今回の改定は、先生の実地をよく知った上での理想に基づいて、よく反映されているなということも、話を聞いて、なお感心しました。

2点ほどちょっとありまして。

下り搬送の加算ですけれども、これについては、送る側の三次救急病院にはついているんですけれども、受け入れる側にはなぜついていないのかなというのが。受け入れる側にもインセンティブがないと、はい、受け入れますというような形にならずに、送り出す側もちょっと苦労するんじゃないのかなというのが1つ。

それと逆に、上り搬送というのも、二次救急病院がスムーズに受け入れて、そして三次に送るときに何かインセンティブがつくと、軽症と思って受け入れたけれども重症だったらすぐ三次救急に送るというような流れもできるのではないかなとちょっと思いましたので、それについて先生のお考えを聞きたい。  もう1つは、医療・看護必要度のB項目がなくなったんですけれども、病院というのは介護度が高い患者さんとかを受け入れるときに、やはりそれなりの苦労をするわけですから、医療施設が要介護度の高い人を入所させると点数が高くなるような、要介護度に応じた加算みたいなものをつけるという考え方はないのかなとちょっと思いまして、先生の御意見をこの点についてもちょっとお伺いしたいと思っております。

眞鍋馨

鬼塚先生、ありがとうございました。

去年でしたか、災害対応も本当にお疲れさまでございました。

まず、患者さんの病状に応じた医療機関間の搬送とか転院というのは、ぜひこれは患者さんの状態によってやっていただきたいと。それは通常の医療行為の中で、医療の機能分化の中でやっていただくものなので、そこに関して、送ったから加算がつく、送られたから加算がつくってやっちゃうと、逆にいうと適正なインセンティブ以上になっちゃう可能性もあって、そこは通常の連携の中でやっていただくべきものと思っています。 その点で、受け入れた側に点数をつけるという発想はあまりなかったです。でも、それは次の改定に向けて御議論いただければいいのかなと思っています。

それから、要介護高齢者が救急で受ける方が増えていて、その方に対するB項目であったり、介護の評価はどうなんだという話であります。 そこは看護補助者の配置の加算とか、そういった形で我々として評価しているというふうに考えております。入院料本体でやるかどうかというのは、ちょっと次の議論と思います。  以上です。

鬼塚一郎

ありがとうございます。

猪口雄二

よろしいでしょうか。ありがとうございました。  時間もう少しありますが、どなたか。
どうぞ。

仲井培雄

地域包括ケア推進病棟協会会長の仲井です。

 最後に、協会の名前を変えたことに対してエールを送っていただきまして、どうもありがとうございました。

地域包括ケア病棟と、それから会員が取得する地域包括医療病棟、それをともにしっかり育てることによって地域包括ケアを推進し、さらには地域共生社会も見据えて活動していきたいと思います。

どうもありがとうございました。

猪口雄二

よろしいでしょうか。

もう大体時間ですけれども、私のほうから1個だけ教えていただきたいことがあります。  実は、ここ何遍か触れられていますけれども、これからやっぱり医療・介護の人材を確保するというのが非常に大変になってきます。地域によっては、高齢者は、患者さんはいるんだけど、働き手がいなくてベッドが開けられないというようなことも起きていて、それがこれからどんどん進んでいく。地域医療構想の中でもそういうことが問題になる。そうしたときに、診療報酬、介護報酬もですね、今のような非常に細かく、ものすごいページで議論するのはいいんですけれども、最後に出てくるものとしては、人手をこれ以上増やして加算を取るという発想ではなくて、いかに質を高く、そして効率的な医療・介護というふうに、多分発想の転換がどうしてもこれから必要になってくると思うんですけれども、その辺は、課長、何かお考えございますでしょうか。

猪口雄二

ありがとうございます。

今御質問いただいたことは、我々も本当に日々頭を悩ませているところです。
ちょっと踏み込んだ発言になっちゃうかもしれませんが、もう立場を離れたので申し上げやすいのですけれども、私はアウトカム評価を前提にしていって、例えば今のストラクチャー指標のような何対1、何対1とかですね、ああいったものをなくしていくという方向もありなんじゃないかなと思っています。少ない人数で回る現場をつくっていかなきゃいけないですし、それから、今日の講演の中でも申し上げたとおり、医療機能の強化、分化、連携の中で集中的に急性期を集約化をし、そうすると医療資源というのは効率的に消費されるようになります。そうはいっても、人の制約のほうが先に来るだろうと、途中で申し上げたとおりで。そうすると、例えばリハビリとか、特に急性期充実体制加算を取っていらっしゃる病院とか、7対1でも頑張っていらっしゃる病院では、患者さんのアウトカムをきちっと計測をして、それが落ちないということを前提に、例えば7対1じゃなくてもいいよとか。ですから、ベテランの看護師さんがたくさんいらっしゃれば、必ずしも7対1じゃなくていいとか。リハビリもそうですよね。ベテランのリハスタッフがやる3単位と新人のリハスタッフがやる3単位とは違いますよね。そういうふうな発想もあっていいのではないかなとは思っていました。これは改定を通じて私の中の私見でありますけれども、そのように思っています。

猪口雄二

はい、ありがとうございます。

将来に向けて非常に重要なお考えを示していただけたのではないかなと思いました。

それでは、時間も参りましたので、これでこのセッションを終了したいと思います。  眞鍋先生、ありがとうございました。もう一度大きな拍手をお願いいたします。

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