第10回地域包括ケア病棟研究大会
【基調講演】
国民の信頼に応える日本医師会~地域共生社会に向けて~
西村直久
基調講演の座長を務めさせていただきます、西部総合病院の西村です。
松本先生のことは皆様十分御存じだと思いますが、慣例に従いまして、略歴を御紹介させていただきます。
松本先生、御登壇をよろしくお願いいたします。
松本先生は1980年に浜松医科大学を御卒業され、御専門は皮膚科、形成外科でございます。日本医師会認定産業医、日本形成外科学会皮膚腫瘍外科分野指導医、社会医学系専門医・指導医でおられます。1988年には松本皮膚科形成外科医院を開院され、現在もかかりつけ医として朝早くから現場で診療を続けておられます。
1996年4月大宮医師会理事、その後、大宮医師会長、埼玉県医師会常任理事を務められ、2016年6月に日本医師会常任理事に御就任されております。2017年には厚生労働省中央社会保険医療協議会委員を歴任され、2022年6月に現職である日本医師会会長に就任されております。2015年には、長年の地域医療の貢献により藍綬褒章を受章されています。
ここまでは通常の講師紹介ですが、私は同郷でありまして、長年松本先生に親しく御指導いただきましたので、私なりに松本先生の一日を取材してきましたので、御紹介させていただければと思います。
スライドをよろしくお願いいたします。
[スライド]
2024年7月2日火曜日、今週の火曜日です。朝、早朝5時50分、埼玉県さいたま市内の大宮地区であります。日本医師会長・かかりつけ医である松本吉郎先生の長い一日が始まります。紹介させていただくのは、かかりつけ医師と患者の早朝ルーティン。
スライドをお願いします。
こちらが松本先生の医院でございます。朝5時時半ぐらいから入口に患者さんが集い、皆さん朝から和気藹々としているんです。タクシーがこの時間に医院に横づけして、患者さんが入るとタクシーの運転手がずっと寝ている。私も、早朝ですから眠くて目をこすっているという状況でございました。
松本先生御自身が玄関の鍵を開錠して、患者さんと一緒に中に入っていくんです。
次のスライドをお願いします。
入口を入られますと、松本先生、日本医師会の会長に再任されましたので、お祝いの胡蝶蘭が一面に広がっています。
次のスライドをお願いします。
朝6時、松本先生は診察室の準備をし、患者さんは待合室のカーテンを開けて診療が始まります。かかりつけ医と患者による早朝のルーティンです。
最後のスライドをお願いします。
松本先生は、この日、朝3時からレセプトをこなし、朝6時から9時まで30人ぐらいの患者さんの診察をして、その後、日本医師会等の公務に行かれます。松本先生は30年間学校医を今でも務められておりますし、企業の産業医もやられております。
松本先生が常日頃から言っていることは、自分の診療だけじゃ駄目。地域で医者が果たす役割は多くある。次世代のためにもこのようなことをしっかりやっていくことが医療の信用に繋がるといっておられます。かかりつけ医として、自ら地域医療を実践している日本医師会長の松本先生です。
それでは、松本先生、よろしくお願いいたします。
松本吉郎
西村大会長、ユニークな御紹介いただきましてありがとうございました。
ちょっと恥ずかしい気がしましたけれども、西村先生とは、中医協の委員をしておった頃からいつも協力していただいて、ともに学びながらやってきました。
また、協会の会長でおられる仲井先生、お招き賜りまして本当にありがとうございます。先年に引き続いてのことかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
今日は時間を80分いただきましたけれども、今の地域医療が抱える全体像と、今回の診療報酬改定についても少し触れたいと思っております。この後、迫井先生と眞鍋先生から地ケアの将来について重点的にお話があるかと思いますので、私は現状の診療報酬改定について全体的に、地ケアも少し含めて触れたいと思っております。
これはよく出る図で、2070年には人口が9,000万人を割り込みます。65歳以上の方が39%になる。そしてまた、2025年には17%だった75歳以上が、2065年とか2070年には25%を超えてきます。2065年には人口は9,100万人ぐらいまで減少しますけれども、65歳以上は全人口の38%とか39%になるという、いつもある図でございます。
ただ、東京だけは将来人口推計がちょっと違っていて、2020年から2035年にかけては少しずつ増えます。けれども、他の46の都道府県では人口が減少して、さらにそれ以降になると全てで減少が始まるということです。
これは地域医療構想の構想区域による人口です。20万程度の構想区域が多いわけですが、幅が非常に広くあります。5万人を切るところから、200万人を超える構想区域もあります。これをどうしようかと、今いろいろ考えているところかと思います。
20万未満の構想区域が2040年には半数を超えますし、5万人未満の構想区域も2015年と比較すると3倍になるということで、こういった人口の少ない構想区域をどうするかということは非常に大きな課題だと思います。生産年齢人口は急減してきますので、局面は大きな変化を迎えてまいります。
さらに、2015年から2025年の変化に比べると、2025年から2045年までの人口変動は、地域によって大きく違いますけれども、その変化の度合いも大きいです。大都市型では高齢人口がおおむね増加しますけれども、生産年齢人口は微増から減少、逆に、過疎化地域では高齢人口が減少している地域が非常に多くて、生産年齢人口はおおむね大幅な減となって、右の図のように非常に幅広いポイントが示されています。
多くの地方で75歳以上人口が減少しますけれども、首都圏は薄いイエローで、しばらくは若干増えます。
また、死亡者数はピーク時に年間170万人になるまでぐらいに、人口の大幅な減少が予想されております。
死因については、悪性新生物、心疾患とともに老衰が増加傾向にあり、死亡する場所は自宅とか介護施設が増加傾向にあることは、釈迦に説法かと思っております。
外来患者数はもう既に減少しているところが多いですね。2050年には約6割となります。65歳以上が占める割合が増えますので非常に減ってきますし、218の医療圏では外来患者数のピークは既にもう超えています。これからは外来の患者さんは減る一方かと思いますが、逆に、在宅患者は多くの地域で今後も増加が見込まれます。2040年以降に、237の二次医療圏において在宅患者さんはピークを迎えるということになっています。
そして、今回の診療報酬改定でも随分課題になりましたけれども、医療と介護の複合ニーズが一層高まりますので、今回の改定では、医療と介護の連携についての評価がかなりなされたということだろうと思います。
年齢階級別の要介護認定率は、このように急激に上がってまいります。
そしてまた、人材確保がますます課題となります。生産年齢人口がこれだけ減っていく中で、果たして医療・介護のところにより多くの人材が入ってこられるかどうかといえば、非常に厳しいところになるかなと思います。今回も、診療報酬改定でやはり人材を使ったところにはそれなりの加算等がついていますけれども、将来にわたってそれを考えていくと非常に難しい局面を迎えつつあるのかという考えもあります。マンパワーの高齢化も進展していて、病院でも60歳以上の医師が18%、診療所では60歳以上の医師がもう既に半数以上を占めています。これで、果たして在宅の患者をしっかりと診ていけるのかということが非常に大きな課題になってくるかと思います。医療や福祉分野の雇用は大きく増加しましたけれども、今後もそれが見込めるかどうか。現在の状況を見ていますと、もう既に流出が始まっているところもありますので、ここのところは国と一体となって考えていかないと、非常に厳しい局面を迎えるかと思います。
北里柴三郎先生、初代の日本医師会長ですけれども、今回、7月3日に千円札の肖像になられました。
日本医師会の役割は、国民の命と健康を守ることと医師の医療活動を支えていくことであります。山中先生や本庶先生も会員でございます。今、34万を超える医師のうち、51.2%が日本医師会の会員で、勤務医のほうが多い状況になっております。
こういった形で、国、都道府県、市町村と、日本医師会、都道府県医師会、郡市区医師会がカウンターパートとなって医療を支えています。
先ほど西村先生から御紹介ありましたけれども、大学とか基幹病院の先生は教育もされ、研究もされ、入院も外来もこなされています。、いわゆるかかりつけ医、あるいは診療所の先生も、ここに示したような休日夜間急患センターで対応するとか、平日夜間の輪番業務をしたりとか、あるいは介護施設、保険認定とかレセプトの審査委員会の委員をするとかいった、行政とか医師会の公益活動をしていかなければいけない。警察業務への協力も警察医もしていかなければいけない。それから、地域保健、公衆衛生活動、母子保健、健診、学校保健、産業保健、がん検診等にもしっかりと携わることが大事だと思います。こういったことを1人で2つ3つこなすことによって地域の医療が支えられています。私はずっと、診療所の先生は、自分の医院の仕事だけをやっていたのでは駄目だと言っています。地域医療がきちんと支えられている、地域にどっぷりつかって地域医療を支えるんだという意識を持った方だけ開業してもらいたいと思っています。
私たち医師会は、現場の先生からいろいろな意見を賜ります。団体として、1人1人の現場の意見を取りまとめて、国会議員あるいは省庁にそれを伝えて、場合によっては法律改正まで持っていくことになります。これは団体的に行動をしないと実現はなかなか難しい。したがって、医政活動も大事であります。
繰り返しになりますが、休日夜間急患センター、介護保険、警察、学校保健、産業保健などをしっかりとやっていただきたいと思います。
先ほど言いましたとおり、個別に言ってもなかなか難しいので、現場の意見をある程度集約した形で伝えていくということが必要かと思います。地域共生社会の実現はなかなか難しい課題ですけれども、医師会活動を通じて日本の地域医療を守って、国民の皆様の信頼を得ていくことがどうしても重要かと思います。
かかりつけ医機能は、いろいろな考え方ももちろんあろうかと思いますけれども、日本医師会としては、今のフリーアクセスをしっかりと基本的に守りながら、現在の日本の医療のいい点を守りながら、それぞれの力を伸ばしていく。1人1人がかかりつけ医機能を強化して、それをさらに、先ほど言いましたとおり他の医療機関との連携を通じて横糸を紡いで、面として日本の医療を支えていくことが必要かと思います。全体として、入院も外来もやはり機能分担と連携というのは全てのこれからのキーワードであろうかなと思いますし、医療と介護、福祉もそうですし、また、歯科医師の先生とか薬剤師の先生とかも含めてのネットワークも非常に大事かと思っています。
かかりつけ医は、しっかりと国民に選ばれるように、私たちもそれなりに技量を磨く。ただし、義務づけたり割り当てたりすることには反対しております。患者さんにとってのかかりつけ医は複数いても問題ないと思います。登録医制はアクセス権とか医師を選ぶ権利を阻害する提案なので、私たちは反対しております。患者さんも、固定するような提案はまず望んでおられないと私は思います。もちろん地域差があるかもしれませんが、患者さんのほうもきちんと医師を選ぶ時代に完全になっていますから、固定するような提案は望んでいないと私は思います。
また、診療科や診療所、病院の別を問うものではないと思います。もちろん、大きな病院は専門医的な治療が主ですので、特に200床未満の中小病院ではかかりつけ医機能も担うことになろうかと思います。必ずしも1つの医療機関で全ての機能を持たなければならないわけではないので、それぞれでかかりつけ医機能をしっかりと果たすことになります。
かかりつけ医とかかりつけ医以外の医師を2つに分ける、分断するということは決してあってはならないと思っています。ただし、これも先ほど言いましたけれども、かかりつけ医として選ばれるように積極的に研さんを積んでいかないと、だんだんと患者さんにも選ばれなくなると思います。
医療機能情報提供制度とかかりつけ医機能報告の内容ということで、現在、特にかかりつけ医機能報告の検討会が進んでいます。そこでもまだ決定はしていませんけれども、できる限り多くの医療機関がかかりつけ医機能報告に手を挙げられるようなことが望ましいと思っています。そういった観点で、医療関係団体の先生方と協力をして、これをしっかりと主張しているところでございます。各都道府県の医療機能の充足状況を把握できるよう、より多くの医療機関がこれについては手を挙げることができる制度にしたいと考えています。そして、足りないところがあれば、それは各都道府県あるいは国と一緒になって、地域地域で、実情に応じて不足しているところを考えていくことになります。
そういった意味では、地域医療構想の考え方とも一致するところがあろうかと思います。地域を面で支えるかかりつけ医機能の実現に向けて、より多くの医療機関に手挙げで現状を報告していただいて、その報告に基づいて地域の医療資源の見える化を行う。不足しているところがあれば、医師会、行政、医療機関等が地域で協議を行って、その地域の医療需要を満たせるように検討することが大事かと思います。
現在、地域によって医師の偏在とかが起きています。これは、いろんな仕組みを喫緊の課題として検討していかなければいけませんけれども、やはりまず基本は、地域地域で、例えば大学病院と行政と医師会とか病院団体とか医療機関がきちんと協議して、どういった機能が足りないのか、どういった医療が足りないのかということをきちんと把握していくことがスタートかと思っております。それは医師偏在においてもそうですし、かかりつけ医機能においても同じかなと思っています。
これは先ほど言ったところの再掲でございます。
腕を磨くためには、あるいは機能を伸ばすためには、日医かかりつけ医機能研修制度をはじめとした研修制度をしっかりと受講していただいて、技あるいは技能、知識といったものを、実践的な能力を磨いていただくことになろうかと思いますので、こういった研修制度をぜひ全ての診療人に受けていただきたいと考えております。これだけの方が今まで受けられておられます。ぜひこれを伸ばしていきたいと思います。
新たな地域医療構想です。
2025年からのバージョンアップに向けて議論が進められています。これまでの課題も含めて、いろいろな問題が出ております。ただ、仕組みとしてはこのような形で関係者で検討して、地域医療構想調整会議等で、あるいは地対協とかでいろいろな話題が出れば考えて、各医療機関の自主的な取組や医療機関相互の協議によって将来の地域医療提供体制を構築していくとか、不足する病床機能を手当てしていくとか、自院内の自分の立ち位置をしっかりと定めて、周囲を見渡しながら、将来どうしていくか。自院の将来像を描いていくことは、基本的なところは変わっていないと思います。そしてデータに基づいてしっかりと検討していかなければならないかと思います。
各医療機関、自院の強みを活かした機能を選択していくことになろうかと思いますが、これは本当に地域で全く違う状況であって、どうしても競合されるような地域と、そこの地域には1つの医療機関しかなくて、むしろどんどん診る圏域を増やしていかなければいけないような地域も既にたくさん出てきていて、統廃合ということにとどまらず、いろいろなことを考えていかなければいけない時期に来ているのではないかと思います。
病床の必要量の推計の基本的な考えを示してございます。
これは病床機能報告制度でありまして、これについては皆さん御存じのとおりかなと思います。病床機能の選択は定性的な報告であって、かつ各病院に任されていますので、そういった面で急性期機能とか回復期機能のカウントの齟齬が出て来ているということは御指摘のとおりだと思います。今回、特に2024年度診療報酬改定で地域包括医療病棟ができましたので、これが急性期と回復期の両方を担うということで、これも手を挙げられたところは、どちらを報告されるのかといったような課題もこれから生じてくるのではないかと思います。
2025年以降における地域医療構想ですけれども、このような形で少しずつ進んでいるかと思いますが、特に中期・長期的な課題を整理して進めることが大事かなと思います。新型コロナ等でも顕在化した課題がたくさんございました。これを検証していかなければなりません。病院のみならず、かかりつけ医機能とか在宅医療機能とかをしっかりと対象に取り込んで議論を進めた上で、慢性疾患を有する高齢者の増加や生産年齢人口の減少が加速していく2040年ごろまでを視野に入れてバージョンアップを行うことになっています。
「治す医療」を担う医療機関と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化するとともに、在宅を中心に入退院を繰り返し、最後は看取りを要する高齢者を支えるため、かかりつけ医機能を有する医療機関を中心とした患者に身近な地域での医療・介護の「水平的連携」を推進し、「地域完結型」の医療・介護提供体制を構築するとされています。
治す医療を中心としたいわゆる基幹病院とか大きな病院と、中小病院を中心とした治し、支えるような地域型の病院との役割分担、機能分化と連携が必要だということだろうと思います。
ここに示した検討会がこれから進められて、令和7年度には新たな地域医療構想に関するガイドラインの検討が発出されますし、さらに、令和8年度には都道府県においてその検討とか策定がなされるというスケジュールになっています。
主な検討事項としては、2025年の病床の必要量に、病床の合計、機能別とも近づいているけれども、地域構想区域ごとの、あるいは機能ごとの乖離が見られるとか、外来や在宅医療も含めた提供体制の議論が必要とか、あるいはかかりつけ医機能の確保、在宅医療の強化、介護との連携強化が必要とか、地域ごとに人口変動の状況が異なることを踏まえなければならないとか、生産年齢人口が減少する中で医師の働き方改革を進めながら、果たしてどうやって医療提供体制を確保するかといったことが主な課題になっています。
これは、今のところを少し詳しく書いたところでございます。
現在の地域医療構想に関する医療需要の推計方法ですけれども、こういった医療資源投入量による推計を継続するのかどうか、現状投影型での推計を継続するのかどうか、推計の基となるデータは適宜見直すべきかどうか、変動する将来を見越して複数のシナリオを提示するかとか、いろんな課題がもう既に出てきていると思います。医療資源投入量で、C1、C2、C3と分けましたけれども、果たしてそれで今後もいいのかどうかということはやは り大きな議論になろうかなと思います。
厚生労働省の資料によると、今後も入院患者数は当分の間増加し、65歳以上が占める割合は2050年には8割となることが見込まれていますが、二次医療圏によってはピークとなる年は様々です。2020年までに98の医療圏、また、2035年までには236の医療圏がピークを迎えるということでございますので、これもなかなか厳しい状況が考えられます。病床利用率はもう既に減少に入っておりますし、病床稼働率で見ましても全体的にずっと減少しております。そういった状況を踏まえながらの対応になろうかと思います。
これは入院料別の平均在院日数の推移でございますけれども、全体的に横ばいです。それほど大きく短縮はできない状況になっています。または、DPC病院については、出来高算定病院に比べて短縮化は非常に大きく、右の下のところはいわゆる7対1のようなところが入っていますけれども、それでも短縮は限界に来ているのではないかなと思います。
これは地ケアの入棟期間ですけれども、全体患者を見ると、12~13日から47~48日まで、ばらつきが非常に多いです。現在、在棟日数は、地ケアの場合は27日前後だったでしょうか。1年に0.数日ぐらい減ってきていますけれども、それもほとんど横ばいに近いと言っていいかもしれません。
特定の機能を有する病棟における病床機能報告の取扱いについて、こういった形で、どこで報告するかは病院自体が考えることでございますので、定性的な報告を継続するのかどうか。先ほど言った地域包括ケア病棟入院料とか、あるいは今回の新しい入院の地域包括医療病棟とか、この辺のところもどうするのかという問題は考えなければいけないところじゃないかなと思っています。
したがって本会からは、回復期の名称を包括期としたらどうかというようなことも提言していますし、「治し支える医療」の拡大を踏まえ「現状投影型モデル」からの脱却を、「必要病床数」より「病棟機能」の見える化を、「急性期」「回復期」の認識の共有化を、医療計画と整合した見直しを、医療機関の健全経営を担保すべきということを提言している状況でございます。
これは、前からある地域包括ケアシステムの構築についてで、しっかりと全体的にシステム構築をしていかなければいけないということであります。
少子化、高齢化、地方の過疎化、都市部の高齢患者さんの急増、災害時や感染症パンデミックなどの有事においても、地域の医療・介護を守るような平時からの体制をしっかりとつくっていくということがやはり大事な目標になるかと思います。
これは相当昔から出されているようですけれども、地域包括ケアシステムの構築はここに示された形で考えられてきました。新たな地域医療構想では慢性期機能や在宅医療の推計及び役割などをどのように位置づけるかということは、恐らくもう一回考え直さなければならないのではないかなと思います。
2005年から2020年にかけては、高齢者人口は約1,000万人増加しました。要介護の認定者数も250万人増加しましたけれども、年間の入院患者数は25万人減少しております。
療養病床数ももう既に減少傾向にありますし、平均在院日数も減少傾向にありますし、稼働率は横ばいから漸減傾向にあります。医療と介護の複合ニーズが一層高まるということで、これについては先ほどもお話ししましたけれども、診療報酬改定によって相当な踏み込みがなされているということであります。
在宅患者は、多くの地域で今後もかなり増加してくるかと思います。
在宅医療の体制については、退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、看取りという中で、在宅医療において積極的役割を担う医療機関と、必要な連携を行う拠点という視点でいろいろと考えていくということになろうかと思います。
在宅患者訪問診療料の算定回数からも、患者数は増加していることが見てとれます。28年から訪問診療件数は28万件増加しています。明らかに増加しています。
在医総管、施設総管の算定回数も、31万回増加しております。
介護施設は増加傾向にありますが、介護施設の利用率はもう既に低下傾向にあるという局面も迎えています。
高齢者向け施設・住まいの利用者数ですけれども、介護老人福祉施設、有料老人ホーム、サ高住の伸びが著しい状況があります。介護福祉・老人福祉施設は配置医師が常駐であるということ、有料老人ホームは居宅に該当することが少し見てとれます。
したがって、地域医療構想から地域医療介護構想へ向けた、介護も考慮に入れた圏域の検討が必要かと考えております。在宅医療圏は、原則市町村単位として、これらを包含する二次医療圏で病床機能等との緊密な連携を図ることが必要だと提言しておりまして、必要に応じて地域医療構想の地域も、分割や合併が必要になろうかと思います。また、地域特性を活かすということも必要かと思いますので、やはり医療圏は、ある程度地域を少し考えやすい形で、人口を考えることがやはり重要じゃないかと思います。あまり小さ過ぎても、大き過ぎても、なかなかやりにくいということになろうかと思いますし、在宅医療の議論をしっかりとするということとかかりつけ医機能報告もしっかりと進めるということと、地域医療介護構想、在宅医療圏は原則市町村単位で構想区域と連携することを提言しております。
あとは、都道府県知事の権限について、権限行使の状況、都道府県のニーズ等を踏まえてどのような見直しが考えられるかといったことも大きなテーマになっております。
そうはいっても、地域医療構想調整会議は、都道府県の医療審議会での最終的な合意を尊重していただきたいと思いますし、地域特性を踏まえての地域の裁量を拡大していただきたいと考えております。
働き方改革は、細かなところは除きますけれども、病院で申請された件数ですけれども、6月10日時点でセンターに受審された病院は475件です。当初の予想よりは少し少ないように見受けられますけれども、最近は一月ほとんど0か1で、ぽつぽつとしかありません。
受審の申請があって、認定はほぼ済んでいる状況でございます。これはいわゆるA水準ではなくて、Bとか連携Bを取った医療機関の数でございます。大学病院の本院は、ほとんど全てがB水準か連携Bを取られております。
これは都道府県別ですけれども、例えば東京では49とか、埼玉では25とか、石川県では3とかいう申込み件数になっています。475件のうち、大学病院は123件であります。
繰り返しになりますけれども、医師の健康確保と地域医療の継続性は非常に大事な課題ですけれども、医療と医学の質の向上は欠かせないということだと思います。
診療報酬改定のポイントだけお話しします。
振り返って、地ケアは令和4年の改定です。このときも、地ケアの入院医療に期待される3つの役割というのは意識されましたし、自院の一般病棟からの転棟割合について少し厳しい要件にしました。また、重症度、医療・看護必要度の該当割合の見直しとか、介護老人保健施設からの入棟患者についての評価とか、救急をもう少ししていただきたいという見直しも行われました。それから、入退院支援に係る評価を少しさせていただくということがありました。
2年前を思い返してみれば、在宅復帰率は入院料1や2では7割から7割2分5厘になり、入院料3や4のところでも7割以上になりました。また、入院料2と4では、一般病棟から転棟した患者さんの割合を6割未満とすることが200床以上の病院にも拡大されたり、いろいろな実績部分での要件もつきました。なかなか厳しい改定であったように思います。それでも、地域包括ケアの病棟を持っていらっしゃるところは相当苦労されて、かなりクリアされたのではないかなと思いますけれども、非常に大変だったと思います。特に救急の実施とかはなかなか大変だったと思います。
一方で、入退院支援加算1や看護補助体制充実加算などの加算を取っているところ、つまり人手をかけているところは増点等されたということで、ここのところが相当はっきりと、めり張りをつけた改定になったのが2年前だったと思います。
また、在宅復帰率については、ここで毎回一喜一憂するところでありますけれども、これが2年前の在宅復帰ということであります。自宅だけではなくて、在宅復帰率等の基準が設定された病棟への転院等を分子として算入できることにして、連携を中心とした取組が推進されました。それに加えて入退院支援部門の充実や在宅復帰率の上昇などの実績要件の引き上げ、さらに一般病棟から転棟する患者さんの割合を減少させることや、積極的な救急対応をすることが求められたわけでございます。
回リハは、そのときはそんなに大きな変化はありませんでしたけれども、新規入院患者のうちの重症度患者の割合がそれぞれ1割ずつアップしたこととか、第三者評価を入院料1と3では受けていることが望ましいといったことが入ったことが変更点でありました。
今回の改定ですけれども、プラス0.88%。これは、1.13のプラスがあって、マイナス部分で0.25ありましたので、1.13から0.25を引いて、プラス0.88%になりました。多くが、いわゆる賃上げのところ、処遇改善のところに向けられた。ある意味、そちらの処遇改善しかなかった改定だというような御批判もいただきました。裏を返せばそういう見方もありますけれども、私たちとしては、むしろ、いろんな行政の方々、国会議員の方とかあるいは政府に働きかけて、そういった方々の支援とか共感を得た上で、賃上げのところであれば、苦しい国家財政の中で手当てができるということがなされた改定だと私は捉えていただきたいと思います。
やはり国家財政も非常に厳しい状況にあります。それは私どももある程度理解しなければいけません。もちろん社会保障にしっかりとした財源を確保していただくことは私どもとしては当然主張して、これからもずっと主張していくことでございます。今回の賃上げのところは、総理の言うきちんと賃上げをすることによって経済を回していくというところに合致した主張だったということで、ここのところはしっかりと認められたとのお考えを持っていただければいいかなと思っております。
なかなか厳しい改定であったことは間違いありません。それまでの何回かの改定がプラス0.4とか0.5でしたので、恐らく政府、総理もその辺のことはしんしゃくしていただいた上での改定だったのではないかなとは思いますが、特にインフレの中で物価高騰に対するしっかりとした手当てができなかったことは、私としても非常に残念だと思っております。
病棟ですけれども、入院料の見直しの背景は、やはり急性期の一般がより集中的な急性期医療を必要とする患者さんへ重点化をするということと、機能分化を進めるということで、重症度、医療・看護必要度の見直しはなかなか厳しい見直しだったように思いますし、公益裁定になりました。平均在院日数も、18日からの短縮を求められて、これも厳しい公益裁定になったと思います。
高齢者を中心として救急患者をしっかりと受け入れるということを目的とした病棟で、急性期一般病棟と地ケアとのちょうど中間的な存在の地域包括医療病棟入院料の新設が行われました。3,050点の包括点数になっていますけれども、入院中のリハビリ、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供できる病棟の評価ということになっています。
あとは、地域包括ケア病棟の見直しもさらに行われました。
これは今回のポンチ絵でございます。急性期医療病院の見直しは、重症度、医療・看護必要度、特にB項目がなくなったことは、内科系の病院にとっては非常に厳しい。やはりB項目というのは、重症度というよりは、手間をどれだけ見るかということだと思いますので、重症度だけではなくて、どれだけ手間がかかるのかということも評価していただかないと、それをこれからもどう評価していくかということはやはり課題になるのではないかなと思います。18日から16日への平均在院日数の短縮、9割以上が16日以内にできていたということでこういう形になりましたけれども、これも厳しい改定だったようにも思います。
一方で、左上のところですけれども、リハビリテーションの栄養・口腔連携体制加算の新設というのは、やはり今後の急性期医療におけるADLが低下しないための取組をしっかりと推進するということで、この新設がなされたのは一つのトピックスだったように思います。
それから、地域包括医療病棟の新設。ただし、在宅復帰率8割とか救急搬送患者割合1割5分とか、ADL維持率95%とか、なかなか厳しい要件がなされました。後でまた話しますけれども、地ケア病棟も40日以降に評価が下がる。40日までは少し上がりましたけれども、若干下がるといったところとか、在宅復帰率も見直しがなされ、特に短期滞在手術の取扱いの見直しはなかなか厳しい指摘だったように思います。
あと、左下の特定集中治療室の見直しもありまして、SOFAスコアを用いた患者指標の導入とかも大きな課題だったように思います。
特に地ケアの3つの役割についての変更はないと思います。
これをとにかくバランスよく取るということがさらに明確になったということだと思いますが、入院料の点数の見直しは、41日以上は点数が下げられました。在宅患者病床初期加算の見直しということで、高齢者の在宅患者さんの緊急入院を受け入れるための強化をする、あるいは下り搬送患者を地ケア病棟で受け入れることを促すための在宅患者支援病床初期加算の点数が引き上げられましたので、これは大きかったのではないかなと思います。
また、自院の一般病棟から転棟した患者さんの割合、在宅復帰率について、短期滞在手術等基本料3を算定する患者さん及び1の手術を実施した患者さんを対象から除くということにされました。ここのところは、別に悪いことではないと思いますけれども、結果的にこの辺の短期滞在の手術が多ければ、重症度、医療・看護必要度にも大きく影響しますし、在宅復帰率にも影響するということで、その影響を少し取り除いたということではないかなと思います。
また、在宅復帰率も少し変更があって、分子に在宅強化型への、超強化型を含みますけれども、介護老人保健施設への退院患者の数の半数を加えるということが変更点でございます。
地ケアの施設基準のイメージは図のように示されています。
それでもやはり地ケアは増えてきているでしょうか。回リハは、今はそれほど大きく増えていないと思います。
点数については、こういった形で40日以内と41日以降で変わっております。
在宅患者支援病床初期加算の見直しで、500点が580点。しっかりとした救急患者の搬送ができるところには80点プラスになっております。あと、下り搬送をしっかりするということ。一旦は急性期のあるいは病院でしっかりと診ても、手術なりが終われば下り搬送をしっかり行って役割分担を図るということが求められたということであります。
施設基準の見直しで、今回は自院の一般病棟から転換した患者さんの割合は6割5分と、6割から少し緩和されましたけれども、その代わり、先ほどの短期滞在のところで厳しくなりましたので、この辺のところの影響が施設基準のところにどれだけ影響したかということだろうと思います。
あとは、協力対象施設入所者入院加算の新設が行われて、地ケア病棟を有する病院において介護保険施設等からの求めがあった場合、協力医療機関になることが望ましいということが基準に盛り込まれました。また、協力対象施設入所者入院加算が新設されましたので、いかに普段から介護保険施設等と定期的に連携を取っていくかということが非常に重要になったかと思います。
もう1つ、介護保険施設等連携往診加算の新設で、協力医療機関として定められている医療機関が往診を行った場合の評価として200点の加算がなされております。
あと、入退院支援加算の見直しもございました。
こちらは、ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化と推進のポンチ絵でございます。
続いて、先ほど言った協力対象施設入所者入院加算の新設でございます。
入院初日に往診を行った場合600点。1以外の場合200点ですので、これも結構大きな点数じゃないかと思います。
それから、介護保険施設等連携往診加算は200点でございます。
あと、入退院支援加算1・2については見直しもございましたので、1で10点アップしております。
回リハも少し変化がありまして、回リハ1と2については専従の社会福祉士等の配属が要件化されています。また、1・3については、FIMの測定に関わる職員を対象とした研修会を年1回以上開催することが要件化されましたし、栄養評価ではGLIM基準を用いることが要件化されております。あと、リハビリテーションの提供の見直しもございまして、これは、これまでも保険の審査の段階ではこういったことがされていた部分も実際的にはありますけれども、運動期リハについては、1日に6単位を超えて実施してもADLの明らか改善が見られなかったということであるので、原則どおり6単位までとされたということでございます。
先ほど言ったとおり、一番上で点数は引き上げられましたけれども、体制強化加算が廃止されたということは、恐らく経営上は非常に厳しい状況じゃないかと思います。点数は100点引き上げられましたけれども、体制強化加算でマイナス200点とかされましたので、ツーペイではなくて、むしろマイナスになったという御指摘もいただいております。ここのところは実績に基づいて、エビデンスに基づいた改定だったとは思いますけれども、非常に厳しかったとも思います。
ただ、体制強化加算で要件化されていた、例えば病棟の専従の医師等を逆にほかの部門に回すなどしてうまく有効に活用することを考えられれば、ある意味、ほかの部分で補うことができるかとは思っております。
これが見直しでございます。GLIM基準の栄養評価の要件化、運動期リハビリテーション料の算定単位数の見直し。したがって、運動期リハから脳血管疾患に対するリハに重点を少し移すようなところも出ていらっしゃるのかもしれません。
これが回リハの主な施設基準でございます。
賃上げに向けた評価です。先ほどちょっとお話をしましたが、改定財源プラス0.61%を使った対応ということになりまして、看護職員、薬剤師、理学療法士、栄養士等のベアのための初診料、再診料、6点、2点とか、あるいは入院基本料の上乗せで点数を策定しました。外来の評価がまず一番になりますけれども、当然、病院では外来の評価だけではとても賃上げができませんので、入院でしっかりと上乗せ点数を新設させていただいております。
6月からの新算定では間に合わなかった場合でも、7月からでも8月からでも算定は可能でございます。今、病院で、このベースアップ評価料の算定は8割は超えていると思います。ただ、診療所では、恐らく地域によって2割から4割程度で、まだまだ少ないので、やはりこれはしっかりと取っていただきたいと思います。次回、2年後につなげるためにも、ぜひこれは御理解いただいて、取っていただきたいと強く思っておる次第でございます。こういったことで処遇改善をしっかりと行っていくということが、人材の育成あるいは流出を防ぐことにもつながりますので、是非とも算定していただきたいと思います。
ベースアップも、令和6年が2.5%、令和7年が2.0%のベースアップを見込んでということになっておりますが、これは義務ではありません。恐らく政府ももう少しアップされたいという気持ちは持っておられたと思いますけれども、やはり財政的な理由でなかなかそこができなかったのではないかと、私としては推測しております。
賃上げ税制もしっかり使っていただくということであります。
ベースアップ評価料のうち、入院においては、それぞれの状況に応じて1から165の区分があるということであります。これをやるときにいろんな意味で思ったのは、足りないということがあってはならないので、足りないことがないように、できる限りのことをやるということで厚労省にはお願いしてきました。そうはいっても、目標と比べると、実際的には恐らく先生方は金額的にはとても足りないというのが実感かと思いますし、管理者としてはどうしても全職種ということで考えなければいけないので、全職種にある程度の賃上げを行うためにはちょっと原資が少ないと思われているのが実感ではないかと思います。
初診6点、再診2点ということでございます。
不足しているところには追加の評価がなされております。私も届出をしましたけれども、これはぜひしっかり取り組んでいただいて、取っていただきたいと思います。
届出はエクセルを使ってやりますけれども、できているところができてないところを助けてあげるとか、あるいは医師会とかいろんな団体等でできていないところに少し教えてあげるとかすると、実際に20~30分教えるとすぐ取れるようになります。最初のとっつきがなかなか難しいですけれども、最初のところをクリアすると、対象人数の少ないクリニックなんかでは、そんなに難しくないことじゃないかと思います。ぜひ食べず嫌いではなくて、しっかりと食べていただきたいと思っています。これがとても大事なことだと思っています。
このベースアップ評価料は、ある意味、加算でしたけれども、今回は、初再診料の評価の見直しが20年ぶりになされまして、これは加算ではなくて、本体が増点できたのは大きかったなと思っています。初診が3点、再診が2点引き上がりましたので、これは非常に大きいことであります。
これが初診料の変遷ですけれども、思い起こせば、平成18年の改定のときに、病診統一ということで、病院が上がって、診療所はマイナス4点ということになっておりました。その後、本体そのものの点数はずっと引き上がっておりませんでした。282点とか288点になったというのは消費税対応でなったということだけでございますので、本当の意味での増点はなされませんでしたけれども、今回、久しぶりに初再診料がそれぞれ、3点、2点上がったことは大きな朗報だったように思います。
できれば、私たちの本心としては、いろんな意味の加算ではなくて、やはり初再診料と入院基本料という本当に基本となるところでしっかりと評価していただいて、ベースアップにしても、処遇改善にしても、あるいは物価高騰にしても、そういった基本料でしっかりと充てたいというのが私たちの願いかと思います。
もう1つは、生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編がございました。
包括点数の生活習慣病管理料(Ⅰ)に加えて、出来高で算定できる(Ⅱ)が新設されました。(Ⅰ)はもともとある仕組みでございますが、算定のハードルを大分低くできたかと思っています。(Ⅱ)は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病が特定疾患療養管理料の対象から除外されるに伴って、その受皿として新設されております。
これが先ほど言ったプラス分の1.13とマイナス分の0.25で、本体計が0.88になっているというところでございます。
療養計画書も非常に簡素化されました。ただ、恐らく200床未満の病院の、今日いらっしゃっている先生方は非常に苦労されたかと思いますが、4月、5月から準備をされて、患者さんにもある程度の説明をして、こういった計画書も事前に準備をして6月に備えていたところはかなりスムーズに移行できたということを伺っておりますが、6月から始めると、6月に集中して何百人かの患者さんが一遍にその月に療養計画書を作成することになりますので、大変だったことはそのとおりだと思います。
初回は患者署名が必要になりますけれども、医師の目の前でやらなくても、別室で看護師等が説明して署名をいただいても結構ですし、次回から、おおむね4か月ごとの療養計画書においては署名は必要とされておりませんので、この6月が大変だったと思います。6月7月を乗り切ればかなり楽になるかと思いますし、次の4か月後も、6月にやった方をまとめて10月にやるとまた大変になるかと思いますので、おおむね4か月ですから、ある程度ばらかして、例えば6月に来た方の3分の1は9月、3分の1は10月、3分の1は11月という形で振り分けられると、2回目以降かなりばらけて、少し楽になるのではないかと思います。繰り返しになりますが、療養計画書もかなり簡素化されましたので、ぜひ御理解いただきたいと思います。
こういった計画書を出して患者さんに説明するということは、やはり医師がきちんとした医学管理をしているということが目に見える形で、医療側にも患者さん側にも伝えることができますので、大変だと思いますけれども、医療現場にとってはプラスになるのではないかと思っています。手間が増えたということでは大変だったということはよく分かりますけれども、これをいいほうに何とか向けていきたいと考えております。
点数が333点になりましたけれども、内容的には、特定疾患療養管理料の225点と外来管理加算の52点はこの中に入っています。また、特定疾患処方管理加算の56点も入っています。
一方で(Ⅰ)は、検査等が包括されている点数ですけれども、これもうまく活かしていただければ、先ほどの(Ⅱ)よりは高い点数になっておりますので、検査をどの程度必要とするかとか、あるいは患者さんの病状をよく考えて、(Ⅰ)を取るか(Ⅱ)を取るかということは考えていただければと思います。
特に、特定疾患療養管理料は225点でしたけれども、200床未満の病院さんはこれまで、たしか100床未満だと147点とか、100床から200床未満だと87点であったかと思います。これが、今回は333点をそのまま取れることになりましたので、200床未満の病院さんにとっては、私は、今回のこの改定は非常に利があったのではないかと思っています。
これが(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いです。
包括か、それとも検査が出来高かによっての違いが大きな違いとなっており、それ以外はほとんど違いはなくなってきております。
特定疾患療養管理料については、今回こういった3つの疾患が削除されましたけれども、逆に2つの疾患が増えております。
これが全体的な点数でございます。
点数的には、結局処方箋料の見直しが大きく響いているのかもしれません。院外処方でマイナス8点、特定疾患処方管理加算が月1回の場合マイナス10点になって、このマイナス18点が点数的にはかなり大きく響いているかとは思いますが、逆に、一般名処方管理処方加算でプラス3点になったりしているので、3点はここで取り返すことが可能です。
さらに、地域包括診療加算の1も2もプラス3点になりましたので、ここでまた3点を取り返しております。
また、さっき言いましたように再診料も2点プラスになったり、それから医療情報取得加算も再診のところが少し復活したりしましたので、こういった点を合わせると、特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料(Ⅰ)、(Ⅱ)に移ったときの点数は、恐らく10点以内のマイナスで何とか抑えられたのではないかと思っております。
この辺のところの点数は、内科系の先生にとっては非常に影響の大きかった改定だったことは確かだと思います。
医療DX推進体制整備加算8点も非常に大きな点数でございますので、ぜひ取っていただきたいです。1から7まで施設基準はありますけれども、当面、9月30日までは経過措置がありますので、まず、6・7・8・9月は、前向きに考えていただいているところであれば取れます。
先ほど言った地域包括診療加算が1と2で3点ずつ増えたということと、要件は少しついておりますが、どこでもクリアできるかと思いますし、一般処方名加算も3点プラスになっております。これも細かな点数ですけれども、大きいかと思います。
入院基本料の見直しもございました。
地域包括医療病棟入院料の新設について、ここで少しだけ触れますけれども、高齢者の救急に対する入院医療として新設されましたが、看護配置が10対1、平均在院日数が21日となっております。重症度、医療・看護必要度については、なかなか厳しいです。必要度Ⅰで16、必要度Ⅱで15ですから、これは急性期の一般入院料の4に相当しますので、なかなか厳しいかと思いますし、初日にB3点以上の該当割合で50%以上もなかなか厳しい要件です。
また、④も厳しいですね。ADLが入院時と比較して低下した患者の割合が5%未満、一般病棟から転棟した患者さんの割合が5%未満、在宅復帰率も80%以上。救急搬送割合も15%以上。ただし、リハビリテーション、手術、麻酔等の費用は包括対象外になっていますので、点数が3,050点ついたところにこういった包括対象外のところがあると、場合によっては1日の単価が4,000点を超えて、4,300とか4,500点ぐらいにすることも可能かと思います。ただ、なかなか厳しい要件であることは間違いないので、恐らくまだどうしようかと思って考えられているところがあるのではないかと思います。
急性期一般1で高齢の患者さんをずっと診るということとか、あるいは逆に回リハで診ていくということもなかなか負担になるということで、その中間的なところでこういった病棟の新設がなされたということでございます。地ケアが13対1で、救急医療管理加算も算定できないですし、今後も急増する高齢者の救急患者を地ケアだけでは支え切れないという意見が非常に大きかったと思います。
リハビリが必要になる患者さんを一定程度受け入れることも想定されておりますが、先ほど言った早期復帰ということがどこでも求められております。地域包括医療病棟でも地ケア病棟でもできる限り早期に在宅復帰させるということを念頭に置いた強いメッセージが各所に見られる改定だったと思いますけれども、いろいろな医療関係職の専任配置が要件として求められるなど、非常に厳しくなっているかとも思います。
在宅復帰率の考え方は、急性期一般とも地ケアとも異なっておりますので、こういったところもしっかりと考えていかなければなりません。早期の退院に向けてリハビリ等を充実させるという観点から、回リハ病棟は退院先として評価されます。同様の理由で、いわゆる機能強化型老健等も転院先として評価されます。しかし、地域包括ケア病棟は退院先としては評価されないということになっています。
こういったイメージで、3,050点。各要件が散りばめられておりますが、多くの加算もついております。特にリハビリテーション・栄養・口腔連携加算の80点とかも、先ほどちょっと言いましたけれども、注目すべき新しい点数だと思います。
転換される際のイメージですけれども、急性期一般1からの転換もあろうかと思いますが、ここはまだなかなか進んでいないのが現状かと思いますし、2‐6からの転換も当然あり得るのかと思いますけれども、これも、皆さんまだ検討している状況かと推測します。当然、地ケアからも救急搬送が充実されているところであれば、13対1から10対1にしなければなりませんけれども、転換は可能かと思いますので、点数をにらんで、人員配置、看護配置等を考えて、どうしようかなと考えられているところも多いかと思います。
回リハの13対1からの転換も、可能性としてはあろうかなと思いますけれども、リハの体制とかを考えて、これもどうしようかなと考えているところかもしれません。
こういった観点があって、在宅復帰率がこのような形で設けられていますので、ここはよく見なければならないところかと思います。
急性期一般のところは、今回も非常に厳しい裁定だったということは先ほど申し述べたとおりで、特に必要度Ⅱの割合①の20%というところは、ハードルとしては非常に高かったと思います。公益裁定になりまして、ここはもう少し緩やかな改定だったほうがよかった。2~3%緩やかな改定だったらよかったと思いますけれども、割合が20%も求められたということはなかなか厳しい項目だったと思います。評価項目の見直しも少しずつあって、救急搬送後の入院及び緊急に入院を要する場合でも、評価日数が5日間から2日間にされたりとか、注射薬の管理も日数の問題とか、非常に厳しかったのではないかと思います。
だから、Ⅰを算定したところでも算定できなくなるところも出るのかなと思って、今、その状況を見ております。もちろん経過措置はございますけれども、この辺のところをクリアしていただくためには、困難を伴うことではなかったかなと思います。
該当患者割合や平均在院日数が公益裁定になったということでしたが、非常に厳しかったと思います。
それから、初期診療後の高齢者等の救急患者の転院搬送に対する評価として、緊急患者連携搬送料も新設されました。これは非常に大きかったと思います。
救急医療管理加算の見直しも少しされました。
急性期充実体制加算については、見直しによって機能がより明確になってきたのではないかなと思います。手術などをかなりされているところに点数を厚くするのと、許可病床数300床未満の医療機関のみに適用される施設基準は廃止されましたので、より明確に大規模な病院でしっかりとした手術とか救急患者の受入れができるところが評価されるようになりました。逆に、小児・周産期・精神科のところが少しおろそかになったところもあったので、加算を新設して、できているところには点数をつけたということだと思います。
総合入院体制も少し見直されて、これも点数、評価が少しアップされております。
ここのところは将来的にどうするか、総合入院体制加算のほうが総合デパート的なイメージだと思いますが、次の改定に向けて、急性期充実体制加算と総合入院体制加算の2つをどのような位置づけにしていくかということは、これからも少しずつ見直しがなされていくのではないかと思います。
これが届出の実数で、急性期充実体制加算は増えて、総合入院体制は減りましたので、総合入院体制加算から急性期充実体制加算に転換したというところが多かったということだと思います。
DPCも見直されて、より初期の段階に点数がついてき始めましたので、その傾向が、恐らく入院初期の段階に医療資源が多く使われるので、これからもそこに重点的に配分される傾向が恐らくずっと続いてくると思います。それが将来、アメリカのような形になっていくのかどうかというのは、やはりみんなでもう少し考えていかなければいけない、今後の重要な課題であると思います。1月当たりのデータ数が90未満のところはDPCから退出されることになりました。
今日は時間がありませんので、最後に、僕、今日これだけは出して帰らないと皆さんにお叱りを受けるので、JMATは割愛しますが、おなじみの釜萢(かまやち)先生のお顔だけ出させていただきます。
それでは、私からの講演を終わらせていただきます。御清聴賜りましてありがとうございました。
西村直久
松本先生、300枚にわたるスライドを釜萢先生で締めていただいて、本当にありがとうございました。
大変示唆に富んだお話を幅広くいただきました。地域におけるかかりつけ医、または大病院、中小病院までの役割、または地域医療構想の未来像とか診療報酬改定においても非常に詳しく、特に地ケア病棟、地域包括医療病棟まで詳細に説明いただきました。
松本先生、常日頃から、地域から中央に、現場から国におっしゃっておりまして、自ら現場を知り尽くして自ら診療を実践している。本当にすばらしい先生です。これからも日医の会長業務、国との対応、大変だと思いますが、我々も現場の医療をしっかり担ってまいります。
この後、松本先生はすぐに新潟へ行かなければいけなくて、その後に、今度は今日中に熊本に入るということで。実は、昨日、最終便で東京まで来られなくて、名古屋にいて、今朝名古屋から新幹線で来られたと。すごい体力を持たれているなと思います。
それでは、質問もあろうと思いますが、これで基調講演を終了させていただきます。 松本先生、本当にありがとうございます。