活動報告

第7回 記者会見のご報告

地域包括ケア病棟協会 記者会見を行いました。(平成30年6月21日分)
会見資料を掲載いたします。

(会見資料はこちらから)
平成30年度診療報酬改定における「訪問看護ステーションの要件」に関する緊急調査

「訪問看護ステーションの要件」に関する緊急調査の結果を発表

地域包括ケア病棟協会は6月21日の記者会見で、「平成30年度診療報酬改定における『訪問看護ステーションの要件』に関する緊急調査」の結果を発表しました。会見で仲井培雄会長は「2018年3月以前に敷地外に訪問看護ステーションを開設または移設した施設が少なからず存在し、その上、敷地内に移設または再移設することにムダはないか」との問題意識を提示。地域包括ケア病棟の3機能とクロス集計した結果などを踏まえ、「地域包括ケアシステムに寄り添う準備を進める、または準備を怠らない施設が目立ち始めている。4年前と比べて、地域包括ケアシステムに寄り添う施設が出てきていると思われる」と述べました。

会見の冒頭で仲井会長は「今後、地域に密着した病院がどのように進化できるのだろうか」と問題提起。今回の緊急調査の背景について、「地域包括ケア病棟の届出は、200床未満の病院や医療療養病床を主体とした病院等にはハードルが高かった。2017(平成29)年度までは、二次救急指定、救急告示病院、在宅療養支援病院、在宅療養後方支援病院のいずれかを満たさないと届出ができなかった」と指摘しました。

その上で仲井会長は「2018(平成30)年度改定では病院敷地内に訪問看護ステーションがあれば届出ができることになった。ところが、『既に敷地外に訪問看護ステーションをつくってしまったが、どうすればいいのか』という声を少なからず聞いた」ため、本緊急調査を実施したと説明しました。

以下、会見の模様をお伝えいたします。 当日の配布資料(平成30年度診療報酬改定における「訪問看護ステーションの要件」に関する緊急調査) は、当協会のホームページにアップロードしてありますので、そちらをご覧ください。

■ 地域に密着した病院がどのように進化できるか

●仲井培雄会長
今回の改定では、私たちの要望や提言がかなり取り入れられたと思っている。今後、地域に密着した形の病院がどのように進化できるのだろうか。

当協会ではこのほど、訪問看護ステーションにフォーカスして緊急アンケート調査を実施した。その結果を踏まえ、皆さんと一緒に今後の地域医療の在り方を考えていきたい。

まず、地域包括ケア病棟に関する地方厚生局データの解析資料(2018年5月届出分まで)をお示しする。 これは、当協会の機能評価委員会の担当委員が毎月作成しているもので、それによると、地域包括ケア病棟を算定しているのは2,200病院。推計病床数は7万2,100床である。その中で、「地域包括ケア病棟入院料(管理料)1」を算定しているのは411病院(18.6%)となっている。

こうした中で、2018年度トリプル改定における地域包括ケア病棟関連のメッセージについて、当協会は次のように考えている。すなわち、地域包括ケア病棟を有する病院には、日常生活圏域の生活支援が必要な高齢者に、緊急時の受け入れや在宅・生活復帰支援等の医療と介護を連携したサービスを提供すると同時に、高齢化の進む、かかりつけ医が行う在宅診療の支援を期待されていると思っている。

■ 敷地外に訪問看護ステーション、「どうすればいいの?」との声

地域包括ケア病棟を算定するために、2017(平成29)年度までは「2次救急指定」「救急告示病院」「在宅療養支援病院」「在宅療養後方支援病院」などの要件を満たすことが必要であった。このため、地域包括ケア病棟を届け出て地域包括ケアに貢献しようと望んでも、200床未満の病院や医療療養病床を主体とした病院等にはハードルが高かった。

しかし、2018(平成30)年度の診療報酬改定では、病院敷地内に訪問看護ステーションがあれば、新たに地域包括ケア病棟を算定できるようになった。さらに、200床未満と、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」などを踏まえた看取りに対する指針の策定を要件として、基本的な評価部分に加えて、実績が反映される評価となった。入院料(管理料)1、3である。

ところが、いろいろな病院から「すでに訪問看護ステーションを敷地外につくってしまったが、どうすればいいのだろうか?」という声を少なからず聞いた。そこで、これはどういう現状なのか少し深掘りしてみようと思い、今回このアンケート調査を実施した次第である。

■「200床未満」に変更予定または検討中の病院が2割超

まず、今回実施した「平成30年度診療報酬改定における『訪問看護ステーションの要件』に関する緊急調査」の概要についてご説明する。

実施期間は今年の4月下旬。当協会の会員445病院に調査票を送ったところ、113病院から回答があった。回収率は24.5%である。調査内容の主な柱は、

①病院基礎情報、
②地域包括ケア病棟(病床)の届出予定、
③地域包括ケア病棟入院料(管理料)1、3の届出予定

──である。

このうち①について説明する。地域包括ケア病棟・病床の届出状況(平成30年3月時点)を見ると、3月末時点での届出済みは113施設のうち104施設で、92%に上った。許可病床数については4月1日時点で112施設のうち200床未満が最も多く73施設(65.2%)、200床以上は39施設(34.8%)だった。

「200床以上」の病院のうち、200床未満にダウンサイジングする予定について尋ねたところ、「変更予定」(2施設)と「検討中」(6施設)を合わせて8施設(21.1%)となっている。

■ 敷地外に開設した7施設のうち2施設は当局指導で

①では、訪問看護ステーションの開設状況についても調査し、直前の2016(平成28)年度改定の影響があると思われる時期の開設状況をベースに解析した。

それによると、2016~17年度の2年間に訪問看護ステーションを開設したのは113施設のうち11施設で、開設していない施設は100施設、未回答が2施設であった。

すでに訪問看護ステーションを開設した11施設のうち、「同一敷地外」が7施設あり、同一敷地外にした理由について「外的要因」を挙げた4施設のうち2施設は当局指導によるものであった。

■ 開設していない理由の多くは、人手やスペース不足

訪問看護ステーションをまだ開設していない100病院を見ると、2015(平成27)年度末の時点で訪問看護ステーションを持っていない24施設のうち、16~17年度に訪問看護ステーションを開設しなかった理由として「外的要因」を挙げたのが6施設あった。

外的要因を選択した6病院の内訳を見ると、「連携配慮」4施設、「当局配慮」1施設、「連携・当局配慮」1施設となっている。すなわち、6施設中2施設は当局に配慮したということであった。

一方、24施設のうち「内的要因」で開設しなかったのは13施設で、その理由は人手やスペースの不足がほとんどであった。ここで重要なことは、「地域ニーズがない」と回答した施設が皆無であったことである。

■ 敷地外から敷地内への再移設を検討

こうした基礎情報を踏まえ、地域包括ケア病棟の新規届出の要件に訪問看護ステーションの保有が追加された影響について分析したい。

今年4月以降、地域包括ケア病棟を届け出ているのは113施設のうち105施設で、「検討中」が7施設だった。この7施設に対し、「新規届出に『同一敷地内』の影響があるか」を尋ねたところ、「影響がある」と答えたのは2施設で、この2施設はいずれも敷地外に開設していた。

このうち1施設はかつて敷地内から敷地外に移設しており、今回、敷地内への再移設を考えているということで、少々ムダなことになっている。

■ 113施設のうち「200床未満」が73施設

2018年度の地域包括ケア病棟入院料(管理料)1、3の届出状況について見てみる。

4月時点で、113施設のうち「200床未満」が73施設、「200床以上」が39施設、「未回答」が1施設となっている。

このうち「200床未満」の73施設について4月以降の地域包括ケア病棟の届出を調べたところ、「届出済」は70施設だった。この70施設のうち、「1、3届出済」(36施設)と「検討している」(29施設)を合わせて65施設(92.9%)となっている。

「1,3を届け出ない」と回答したのは3施設で、3病院とも届出の要件を満たせないことを理由に挙げた。満たせない要件は、「自宅等からの緊急入院患者の受け入れ」(2施設)、「在宅医療等の提供(全項目満たせない)」(3施設)だった。

一方、113施設のうち「200床以上」は39施設あり、200床未満に変更する予定について尋ねたところ、「予定あり」(2施設)、「検討中」(6施設)を合わせて8施設が200床未満への変更を検討している。

この8施設について、「入院料(管理料)1、3」の届出について見ると、「1、3届出済」が1施設あった。興味深いのは、この施設が医療資源の少ない地域に属する医療機関に該当し、2割増しの240床未満にすることで届け出たということであった。

■ 全病院が「在宅患者訪問診療料」の要件を満たしている

では、届出済みの病院は、「在宅医療等の提供」のどの項目を充足しているのだろうか。届出済みの37施設について調べてみた。

それによると、全病院が、「a. 在宅患者訪問診療料」を満たしており、訪問診療を行っている病院は、早期に当該入院料(管理料)を算定できることが伺われた。a.とd.を含む組み合わせで充足している病院は34(91.9%)と多数だった。

「b2. 同一敷地内訪看Stの訪看基本療養費等」や「c. 開放型病院共同指導料」はあまり取れていない。既に訪問診療や訪問系介護サービスを行っているところが素早く取れたのではないかと予想される。

■「在宅医療等の提供に関する実績」を満たせない病院が多数

一方、届出を検討中の病院は、どの要件を満たせていないのか。回答があった33病院中、「在宅医療等の提供に関する実績」を満たせない病院が28施設(84.8%)と多数だった。

その内訳を見てみると、「在宅医療等の提供に関する実績」のうち、約9割の病院が満たせないのは、「b1. みなし指定の在宅患者訪看・指導料等」「b2. 同一敷地内訪看Stの訪看基本療養費等」「c. 開放型病院共同指導料」の要件であり、すでに当該入院料(管理料)を届け出た病院と同じ傾向であった。

また、届け出を検討している35病院が予定する届出のための対策について見ると、「訪問診療の開始、強化」と「訪問看護ステーションの開設、強化」がそれぞれ10施設以上あった。このうち、訪問看護ステーションの同一敷地内への移設が4施設あった。

どうも訪問診療と訪問リハビリだけでは届出が難しい施設が含まれているようで、訪問看護ステーションの体制強化を目指す施設が3割を超える。同一敷地内の移設という要件がここでも壁になっている。1、3を既に届出しているところと比べると、訪問看護の要件を満たすべき施設の割合が少し大きくなっているような印象である。

■ 最も多いのは200床未満の「地域密着型」

では、病院機能とクロス集計をするとどのような傾向が見られるか。当協会では3年前から、地域包括ケア病棟を有する病院の機能として、

①急性期ケアミックス型(急性期CM型)
②ポストアキュート連携型(PA連携型)
③地域密着型

──の3つに分類して、いろいろな統計を出している。なお、分類の詳細はスライドP47を参照のこと。

これら3つの機能でクロス集計をしてみると、全体では「急性期ケアミックス型」が半分くらいを占めている。「200床以上」「200床未満」で分けて見ると、最も多いのは200床未満の「地域密着型」で、次に200床以上の「急性期ケアミックス型」が多い。

■「地域密着型」の機能が53.1%と最多

3つの機能と「入院料(管理料)1、3」の届出状況をクロス集計したところ、くっきりと分かれた。「1、3届出済」37病院のうち17病院が「地域密着型」で最も多かった(45.9%)。「地域包括ケア病棟」という名前の由来から考えても、「ときどき入院、ほぼ在宅」を実践している病院であるから、こういう結果になった。

「急性期ケアミックス型」の縦のラインで見るとどうなるか。半分近くの23施設(48.9%)が200床以上で、200床未満に削減する意思のない病院である。

また、「ポストアキュート連携型」では、入院料(管理料)1、3の届け出を検討している病院が11施設(50.0%)と半分を占めている。そして、「地域密着型」では、半分以上の17施設(53.1%)が入院料(管理料)1、3をすでに届け出ていた。

■ 敷地内に移設または再移設、「ムダではないか」

まとめる前のポイントと、まとめを示す 。

以上を踏まえ、考察する。

敷地内の訪問看護ステーションの開設を地域包括ケア病棟の要件とし、訪問看護の実績を入院料(管理料)1、3の要件としたことについては、これまでの病診連携に加え、中小病院の病診支援モデルとして、ニーズに合った政策であると考える。医療資源の少ない地域に属する医療機関に一定の配慮がなされ、 200床未満の要件が2割増しの240床未満とできる政策は、人口減少時代にマッチした政策である。

今回のアンケート調査に回答した113施設のうち、「入院料(管理料)1、3を届出済み」の37施設と「検討中」の35施設を合わせて6割を超える病院が、こうした政策に賛同していると思われる。しかし、2018年3月以前に敷地外に訪問看護ステーションを開設または移設した施設は少なからず存在しており、その上、敷地内に移設または再移設しようとしていることは、ムダではないかと思われる。

■ 地域包括ケアシステムに寄り添う施設が目立つ

今改定で最も輝きを放つ可能性のある、地域包括ケア病棟入院料1、3を届け出済みの施設の中では、病診支援を実践しやすい中小病院である地域密着型が37施設中17施設であり、予想通り最多であった。

入院料(管理料)1、3をすでに届け出た病院と入院料(管理料)1、3の届け出を検討している病院を合わせると、「ポストアキュート連携型」と「地域密着型」の中では9割弱に上った。一方、「急性期ケアミックス型」の中では、200床以上で200床未満に削減する意思のない病院とほぼ半々であった。

こうしたデータから総合的に見ると、地域包括ケアシステムに寄り添う準備を進める、または準備を怠らない施設が目立ち始めており、4年前と比べて、地域包括ケアシステムに寄り添う施設が出てきていると思われる。

■ 質疑応答

●A記者
敷地外の訪問看護ステーションを敷地内に移設することについて「ムダ」とのことだが、つまり地域包括ケア病棟協会としては、敷地外に訪問看護ステーションを作っても地域包括ケアの要件を満たすように解釈すべきであるというお考えだろうか。

●仲井会長
いろいろな解釈ができると思う。これだけのデータでは何とも言えない。個別にどういう要件があるかについてもきちんと調べなければいけない。ただ、どうしたらムダがないかという観点で見ていただきたい。移設したものを再移設するためには多額の費用がかかる。ぜひ次期改定で考えていただければいいかなと思っている。明快な答えを出すというよりは、ムダがないような方向性を考えていただければいいと思うところである。

●B記者
「地域密着型」の53.1%が入院料(管理料)1、3をすでに届け出ているとのことだが、「地域密着型」の病床数の傾向について、例えば100床未満が多いとか、200床に近いとか、一定の傾向はあるか。

●仲井会長
「地域密着型」では、圧倒的に200床未満が多い。ただ、その中で100床以下など、より詳細なデータはまだ示すことはできていない。現在、本調査を実施しているので、その結果を見ればもっと詳しいことが分かると思う。

●B記者
ありがとうございました。

●仲井会長
ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

(取材・執筆=新井裕充)

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