第5回 記者会見のご報告
「平成28年度 地域包括ケア病棟の機能等に関する調査」の最終報告を公表
当協会は11月17日に記者会見を開き、「平成28年度地域包括ケア病棟の機能等に関する調査」の最終報告を公表しました。会見で仲井培雄会長は「10対1以上の一般病棟の有無、急性期機能の程度、地域包括ケア病棟の3つの受入機能等が、地域包括ケア病棟を有する3つの病院機能に影響することが予想された」と述べ、平成30年度の診療報酬・介護報酬の同時改定に向けて「さらに解析を進め、提言につなげていきたい」との意向を示しました。
当協会では今年8月、地域包括ケア病棟を持つ病院の状況を調べるため、「10対1以上の一般病棟の有無」に着目した調査を実施。さらに、同病棟の機能を詳細に分析するため、今年10月に「緊急追加調査」を実施しました。その特徴は、新たに「機能分類フローチャート」を導入したことです。
すなわち、病床機能報告制度で用いられている項目などを基準に「一定の急性期機能」を判断したうえで、①急性期ケアミックス型(急性期CM型)、②ポストアキュート連携型(PA連携型)、③地域密着型──の3つの機能に分類。回答病院の基本情報や連携状況などをクロス集計して、各機能を持つ病院の分布状況などを調べました。
その結果、「急性期CM型」は、「200床以上」「地方都市・過疎地」に多い傾向が見られました。「PA連携型」について見ると、「10対1病床あり」の病院は少ない傾向にありました。回復期リハビリ病棟は、「PA連携型」だけが過半数を占め、医療療養病棟を有する病院は多い傾向でした。「地域密着型」は、「10対1病床あり」の病院は多い傾向で、医療療養病棟を有する病院は多い傾向でした。
また、「PA連携型」と「地域密着型」との違いにも迫りました。ポストアキュートの内訳を分析したところ、「急性期CM型」は、ポストアキュートが7割を占めました。ポストアキュートの内訳は、院内からの受け入れがほとんどでした。「PA連携型」は、ポストアキュートが約5割、サブアキュートは2.5割前後を占めまし。ポストアキュートの内訳は、院外からが8割近くを占めました。「地域密着型」は、ポストアキュートが約5割、サブアキュートは2.5割前後を占め、ポストアキュートの内訳は、院内からの受け入れがほとんどでした。
こうした結果を踏まえ、当協会ではさらに解析を進め、平成30年度の同時改定に向けて取り組んでまいります。以下、同日の会見要旨をお伝えいたします。資料は当協会のホームページに掲載しておりますので、そちらをご覧ください。
■今回の改定で、「ver.1.0」から「ver1.1」にアップした
○仲井培雄・地域包括ケア病棟協会会長
本日は、当協会が実施した「平成28年度地域包括ケア病棟の機能等に関する調査」の最終報告をお示ししたうえで、今後の地域包括ケア病棟の展望について見解を述べたい。
まず、機能分化のあり方を踏まえた病棟種別毎の方向性について、次の3点を挙げたい。すなわち、①厳しい診療報酬改定のDPCや7対1一般病棟、②評価と基金と期待が付いている地域包括ケア病棟、③新類型への足音が聞こえる医療療養2と介護療養──である。
当協会ではこれまで、「最大で最強の地域包括ケア病棟」と申し上げてきたが、今回の診療報酬改定で「ver.1.0」から「ver1.1」にアップしたと考えている。地域包括ケア病棟が新設されてから2年7カ月余りが経過した。この間にも、治す「従来型医療」から、治し支える「生活支援型医療」への転換がどんどん進んでいる。
2016年度11月に公表された「地域包括ケア病棟に関する地方厚生局データの解析資料」によれば、地域包括ケア病棟の届け出は1,723病院となり、推定病床数は5万3,600床となった。着実に増えていく最大の病棟である。
地域包括ケア病棟の4つの機能を自在に活用し、地域包括ケア病棟を有する病院の3つの機能を明示して、生活者の視点を持って患者に接することができる。評価と基金と期待が付いている「最強の地域包括ケア病棟」である。
しばしば、「地域包括ケア病棟はどんな病棟か」ときかれることがある。この問いに答えるのは非常に難しい。地域包括ケア病棟は──①ポストアキュート、②サブアキュート、③周辺機能、④在宅生活復帰支援──という4つの機能を有する、使い勝手の良い、懐の深い病棟である。
しかし、特定集中治療室や回復期リハビリテーション病棟のように患者にも分かりやすい特化した機能を持たないので、とても説明しづらい。そこで2014年夏ごろに、「地域包括ケア病棟を有する病院の特徴はなにか」と考え、4つの病院タイプがあるとの仮説を立てた。すなわち、①ケアミックス型、②ポストアキュート連携型、③地域密着型、④地域包括ケア病院──であると考えた。
■ 10対1以上の一般病棟の有無が大きく影響を与える
2015年10月27日から11月5日にかけて、当協会独自の会員向けアンケート調査を初めて実施し、75件(34.1%)の回答を得た。様々な解析を実施した中で、10対1以上の一般病棟の有無、200床以上/未満、大都市/地方都市・過疎地の区分による地域包括ケア病棟の受け入れ機能の解析が、示唆に富んでいた。
10対1以上の一般病棟の有無が、地域包括ケア病棟を有する病院の特徴に最も大きく影響を与えると予想できた。10対1以上の一般病棟「あり」では、ポストアキュートの受け入れが72%で、院内からの転棟が83%を占めた。一方、「なし」ではポストアキュートが49%で、院外からの転院が65%を占めていた。
続いて、今年8月22日から30日にかけて会員向けアンケート調査を実施し、78件(25.9%)の回答を得た。この時期を選んだのは、9月になると経過措置が終了するため改定の影響が入ってくると考えたからである。改定の影響が出る前にアンケート調査を実施したいと思った。
様々な解析を実施した結果、やはり10対1以上の一般病棟の有無が、地域包括ケア病棟を有する病院の特徴に大きく影響を与えると予想された。10対1以上の一般病棟「あり」では、受け入れ機能のうち、ポストアキュートが71%で、院内からの転棟が93%を占めた。「なし」では、ポストアキュートが33%で、院外からの転院が96%を占めた。受け入れ機能のうち、サブアキュートがポストアキュートよりも多くなり、サブアキュートが35%と最も高い割合となった。
病床規模で見ると、50床から99床までの病院の増加率が非常に高い。最も多い病床区分は150床から199床だが、それに迫る勢いで増えている。それが、この調査結果にも影響を与えているのではないかと考えている。
■3つの病院機能、「急性期CM型」「PA連携型」「地域密着型」
今年10月12日から17日にかけて、「緊急追加調査」を実施した。地域包括ケア病棟を有する4つの病院タイプについての検証が必要となったからである。61病院(20.3%)から回答があった。調査結果についてご説明する前に、今回の調査手法について補足しておく。
今回、4つの病院タイプの分類には、容易に選択できるフローチャートを活用した。ケアミックス型の名称を病院機能が連想しやすい「急性期ケアミックス型(急性期CM型)」に変更している。
====スライド20地域包括ケア病棟を有する病院の機能分類フローチャート======
フローチャートをご覧いただきたい。まず、「急性期CM型」は10対1一般病棟以上の急性期病棟があり、地域包括ケア病棟がポストアキュートや周辺機能を主に担うということ。施設全体として急性期機能を最も重視した病院である。
こうした要件を満たさない場合には、「ポストアキュート連携型(PA連携型)」かどうかを考える。次の①の要件を満たし、②のような機能があれば「PA連携型」となる。すなわち、①施設全体として、実患者数の概ね半分以上が他院からのポストアキュート患者で、②地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟、療養病棟等で構成、または、地域包括ケア病棟と7~15対1一般病棟等で構成され、施設全体としてポストアキュートを最重視した病院──である。
「PA連携型」はあくまでも施設全体として考える。地域包括ケア病棟のポストアキュートではない。病院全体である。従って、地域包括ケア病棟がサブアキュートになり、回復期リハビリ病棟と療養病棟がポストアキュートを担っているケースも含まれている。
こうした「急性期CM型」「PA連携型」のいずれでもないタイプが「地域密着型」である。この場合は、典型例として①自宅や居住系施設や介護施設等で療養している患者の内科的・外科的急性増悪や軽症急性疾患を受け入れる、②在宅診療や訪問・通所・入所系施設が充実している──というイメージである。
そして最後に、「地域包括ケア病院」を挙げた。全病棟が地域包括ケア病棟の病院である場合には、「地域包括ケア病院」である。機能的には、「地域密着型」か「PA連携型」となる。従って、「地域包括ケア病院」は“形”としての再掲の分類となる。
以上をまとめると、地域包括ケア病棟を有する病院の機能は3つであり、「急性期CM型」「PA連携型」「地域密着型」があると考えられる。
■高度急性期機能を提供する病院の86%が「急性期CM型」
こうしたフローチャートに基づいて、「緊急追加調査」を実施した。一定の急性期機能を持ち合わせるかどうかの判断は、平成27年度の病床機能報告で届け出た①~⑩の項目に照らして、会員施設に委任した。
すなわち、①DPC医療機関、②2次救急医療施設、③64列以上のMDCT、④1.5T以上のMRI、⑤全身麻酔の手術件数、⑥悪性腫瘍手術件数、⑦化学療法件数、⑧超急性期脳卒中加算届出件数、⑨経皮的冠動脈形成術件数、⑩救急車の受入件数──の10項目である。
この10項目に関しては、学術的な裏付けがない。病床機能報告制度において、これらの10項目を選択した場合には「一定の急性期機能がある」と推定されるので、この10項目をベースに判断した。「一定の急性期機能がある」と判断した場合には、まず「急性期CM型」の可能性を検討し、そうでなければ「PA連携型」、「地域密着型」の可能性を考えた。
さらに⑪として、高度急性期機能を提供する特定入院料を加えて、「急性期機能得点の状況」としてまとめた。各設問がYESなら1点獲得とし、合計11点満点とした。6得点以上の病院は、「急性期CM型」のうち25病院(86%)で、「地域密着型」では3病院(15%)にとどまった。「PA連携型」はゼロだった。
=======調査スライド46地域包括ケア病棟を有する病院の機能======
■「急性期CM型」は200床以上に多い傾向
地域包括ケア病棟を有する病院には、どのような傾向が見られるか。先ほどの緊急調査の結果で、「地域包括ケア病棟を有する病院の機能」と「基本情報」をクロス集計したところ、「急性期CM型」は、「200床以上」「地方都市・過疎地」に多い傾向が見られた。また、特定入院料病床と7対1病床は「急性期CM型」のみに見られた。
「PA連携型」について見ると、「10対1病床あり」の病院は少ない傾向であった。回復期リハビリ病棟は、「PA連携型」だけが過半数を占めた。医療療養病棟を有する病院は多い傾向であった。
「地域密着型」は、「10対1病床あり」の病院が多い傾向にあった。医療療養病棟を有する病院も多い傾向であった。
関連施設は、どの病院機能でも「あり」が過半数を占めた。訪問系施設は「あり」が、老健や特養は「なし」が多かった。
居住系は「PA連携型」のみ「あり」が過半数を占めており、通所系は「PA連携型」や「地域密着型」に「あり」が多かった。
一方、すべての地域包括ケア病棟に必要な機能として、在宅復帰機能がある。このため、在宅療養に必要なIADL(手段的日常生活動作)の評価まで実施しているかについても調査した。すなわち、「今回の入院契機となった疾患が発症する前の日常的な生活支援の必要性の評価」の実施状況である。
=======スライド27日常的な生活支援の必要性の評価の実施状況=====
それによると、「PA連携型」の「評価あり」と「一部評価あり」を加えると70%となり、他の病院機能よりも多く実施している傾向が見られた。回復期リハビリ病棟を有する病院は「PA連携型」に多いため、このような結果になったと思われる。
病院機能ごとの生活支援が必要な患者の割合の平均については、「PA連携型」と「地域密着型」が7割前後となっており、「急性期CM型」の48%よりも多い傾向であった。症例ベースでも同様であった。
■「PA連携型」と「地域密着型」はどのように違うのか
では、「PA連携型」と「地域密着型」はどのように違うのか。ポストアキュートの内訳を見てみると、その違いが浮かび上がる。「地域包括ケア病棟を有する病院の機能」と「地域包括ケア病院を持つ状況」をクロス集計した。
それによると、「急性期CM型」は、ポストアキュートが7割を占めた。ポストアキュートの内訳は、院内からの受け入れがほとんどであった。
「PA連携型」は、ポストアキュートが約5割、サブアキュートは2.5割前後を占めた。ポストアキュートの内訳は、院外からが8割近くを占めた。
「地域密着型」は、ポストアキュートが約5割、サブアキュートは2.5割前後を占めた。ポストアキュートの内訳は、院内からがほとんどであった。
このように、ポストアキュートが院内か院外かを見ると、「PA連携型」と「地域密着型」の違いが分かる。
「地域包括ケア病棟を有する病院の機能」と「地域包括ケア病院を持つ状況」をクロス集計すると、受け入れ機能は、10対1以上の病棟がある病院では、どの病院機能もポストアキュートが7割以上を占めた。10対1以上の病棟がない病院では、「PA連携型」はポストアキュートが、「地域密着型」はサブアキュートが多くを占めた。
「急性期機能得点×10対1以上の一般病棟の有無」の解析では、急性期機能得点と10対1一般病棟の有無に正の相関はないと予想された。急性期機能が高くはなくとも、地域包括ケア病棟を持つ「PA連携型」、「地域密着型」の病院としての役割を有している。
=======スライド33急性期機能得点×10対1以上の一般病棟の有無=====
今後、さらなる解析を進めていきたいと思っている。
■ダブル改定に向けて解析を進め、提言につなげる
今回の緊急調査では、10対1以上の一般病棟の有無だけではなく、急性期機能の得点化を試みて実施した。急性期機能を見極めたうえで、地域包括ケア病棟の機能を探ってみた。
まとめると、地域包括ケア病棟は急性期と回復期機能を有し、使い勝手が良いだけに機能が分かりづらい。そのため、地域包括ケア病棟を有する3つの病院機能で分類・評価した。
その結果、10対1以上の一般病棟の有無、急性期機能の程度、地域包括ケア病棟の3つの受入機能等が、地域包括ケア病棟を有する3つの病院機能に影響することが予想された。今回の調査で一定の情報が得られたので、平成30年度のダブル改定に向けてさらに解析を進め、提言につなげていきたい。
最後になるが、今年7月に「第2回地域包括ケア病棟研究大会」を当協会幹事のHITO病院院長石川賀代先生が学会長を務め、愛媛県内で開催した。様々な研修会や視察会も開催している。来年7月には、第3回の研究大会を東京都内で開催する予定となっている。学会長は、安藤高朗副会長が務めるので、よろしくお願いしたい。
(了)