地域密着型小規模病院の立場から

 

    地域包括ケア病棟取得の意義と課題

    日本慢性期医療協会副会長、池端病院理事長 池端幸彦

      私のところは1病棟しかない小病院で、もちろん病棟単位では地域包括ケア病棟はとれず、入院医療管理料として病床単位で取れないかと模索している。その苦悩を含めてお話ししたい。

     福井県は日本のへそと呼ばれて、福島や福岡とよく間違われる。京都の隣というとびっくりされる。福井は、幸福度日本一とある学者さんが言われたが、住んでいる人は誰もそうは思っていないという県である。その県の小さな病院での地域包括的医療戦略ということについて今日は話したい。

    私の地域で行っている在宅医療は、直線距離で10キロ以上、道のりでいうと15 キロから20 キロの場所まで行っている。スキー場も行くし海も行くと、そういうエリアにある。

    30 床の病院で、外来は1日約70 名、入院は約30名で稼働率は95%以上。平均在院日数は医療療養が65 日。介護療養は240 日。いろいろな在宅サービスは一通り持っている。保育園も持っているため、保育園の理事長も務めている。

     そんな小さな病院だが、職員は、いろいろな事業を行っているため常勤が120 名、医師の常勤は3 名、特徴としてはケアマネジャーが120 名中23 名いること。実際にケアマネジャーとして働いているのは9 名だが、ケアマネを持つと介護が非常によくわかるので、ケアマネを持っている職員の給料は少し手当を付けている。PTが14 名、管理栄養士が4 名、栄養士は9 名。要するに「動くこと」「食べること」を中心にケアを考えている。

    (図11)

     収入はどうかというと21 年から23 年はまあまあであったが、24 年はちょっと落ちている。その理由として薬剤を院外処方にしたことが影響している。25 年度は人件費も上がって伸び悩み、院外処方にしたために見かけの外来収入がすとんと落ちた。在宅系は増えていて通所系は横ばいか少し減り気味。どうしても何とか増収をはかりたいのは施設系だが、施設系は病床過剰地域で増床が出来ず伸び悩んでいる。病棟の収入増を図るには回転率を上げるしかないだろうということを考えた矢先に、この地域包括ケア病棟が出てきた。

     当院の新入院患者は、6 ~ 7 割が在宅からである。退院はというと、6 割ぐらいは在宅へ帰して、死亡退院が17%。医療療養病床の在宅復帰率の対象は1 カ月以上入院となっているため該当しないが、1 カ月以内での入院患者を含めた在宅復帰率は89%。ときどき入院、殆ど在宅という機能を狙っている。

     この地域包括ケア病棟の役割は何かと言えば、急性期から受け、そして在宅へ帰す。在宅からの二次救急を受けるということ。そうであれば、当院で担ってきたこれまでの機能がそのまま地域包括ケア病棟と言えるのではないか、と思いながらいろいろ苦労しているところだ。

    (図12)

     図12 は厚労省が出したものをアレンジした。在宅復帰率は急性期が75%で、地域包括ケアが70%、医療療養の在宅復帰機能強化加算が50%。急性期から在宅復帰とみなされる病棟に患者が送られてくるが、じゃあどういう患者さんが送られてくるかというと、自宅へ帰れない人が送られてくる。

     つまり、加算をとったら急性期からどんどん患者がくるから安心と思うと大間違いで、その患者を在宅に帰すのは非常に難しい。今、当院に急性期からどんどん患者さん送られてこようとしているが、これを受け続けたらすぐにいっぱいになり帰せない。こういう現実的な問題がある。直接家に帰れない患者さんが送られてくるという現実もあることを考えないといけない。すなわち地域包括ケア病棟を運営していくには、在宅支援をいかに自分たちが努力してすすめないといけないかということだ。

     地域包括ケア病棟の施設基準で当院がクリアできていないのが、看護配置13:1とデータ加算。在宅復帰率で言えば、地域包括ケア病棟を病棟単位で取るとクリアできないため、在宅復帰機能強化型療養病床を置きながら病床単位である程度取るしかないと考えている。今年度、当法人としてのテーマは「地域包括ケア推進元年」。

    (図13)

     地域包括ケア病床に関する当院の現状としては、リハビリは運動器、呼吸器を揃えている。届け出病床は30 床、看護配置基準は現在15:1。専従療法士がPT 2 名、OT1 名、ST1 名。これは十分クリアできる。重症度は意外にクリアできて、今のところ4 月では15%ぐらい。在宅療養支援病院は届け出済み。しかし、データ加算を届けていない。診療加算もできていない。リハビリテーションは4 単位取れている。在宅復帰率は89.2%、医療療養病床の在宅復帰率は1 カ月以上入院に限ると67%、病床回転数は49%。

     課題としては看護配置基準、データ加算。もう一つ大事なのは算定期間60 日。これを過ぎると医療区分1 の一番低い点数になってしまう。従って、地域包括ケア病棟は60 日で回さなければいけないということになる。そのために、在宅復帰機能強化加算の療養病床を残して、地域包括ケア病床を何床とれるかを今試算中。4 床から6 床ぐらいが地域包括ケア病床として回せるかなと考えている。

     こういったことを検討するために、院内に地域包括ケア推進室を院長直属として新設した。そして院内で最も優秀な管理者の1人を抜擢。看護師で病棟、訪問看護ステーション、デイケア、居宅介護支援事業所等を経験、主任ケアマネを持っていて地域包括ケアセンターの管理者も務めたことがある人間を配置した。地域連携室も含めて、事務方の医療・介護請求のプロも入れて4 人。この推進室で毎週月曜日に会議を開催し、この地域包括ケア病床をとるための問題点の解決とこれから何が必要かを考えている。


    (図14)クリックで拡大

     もう一つはリハビリ体制の再編。リハビリスタッフは14 名いるが、現在は各事業所に配属しているのを統括して、つねにリハビリがどういう状態にあるか、在宅リハと通所リハと病棟リハが常に連携をとって、一人の患者さんをどこにいても見ていけるようにする。

     これまでの法人内の取り組みとしては、まず法人内研修会として「平成26 年度診療報酬改定の概要と地域包括ケア」と題した講演を2 時間かけて私が話をした。そして毎週、地域包括ケア推進室会議を行い、なんとか前段として診療録管理体制加算を取れそうな感じになってきた。

    またデータ加算取得のための情報収集として、厚労省のデータ加算研修会にも参加。そして今後のためにどうしたらいいか。病棟だけの問題ではなく在宅に帰すということまで含めて考えれば、通所、訪問を含め全部の部署をもう一度見直して、患者がどう動いているか、法人内のデータを取り始めている。

     そのデータを解析して自分の弱点をつかみ、強みを生かしていく。地域包括ケア病床を取るということは、病院全体の機構改革だと感じ始めている。そしてリハ職がそこにどう入っていくか。訪問、通所にリハのしっかりした人間を配置して、そのマネジメントをする。いかに早く在宅へ帰すか、そして帰した人の在宅での生活をいかに支えていくか、ということを考えていきたい。

     もう一つの課題は、私の地域では看護職が少なく、非常に苦労している点である。そこで人材確保ももう一回真剣に取り組もうということで、推進室が中心になって、看護師を集め始めたところ今月3 名入り、なんとか13:1 をクリアできそうになってきた。一生懸命やると神様も見てくれるのかなと感じている。

     でも、やはり退職もあり、今月は3 名入って一人が辞める。ある年齢になって子育ても終わり、そんなに頑張りたくないと辞めていく人もいる。

    当院はこういう状況だが、在宅療養支援病院とか地域包括ケア病床とかを中心に、地域連携を図りながら取り組んでいきたい。


    (図15)クリックで拡大

     これは4年半ほど前の読売新聞の記事。まだ全国的にも、療養病床で在宅医療をやるのが珍しいと言われた時代だった。この時代から見れば、今、隔世の感がある。そしてこれからの医療介護連携は、治療的医療も必要だが、生活的医療とか癒やしの医療が中心になってくると同時に、介護職にも医療的なマインドをどう根付かせていくか。医者だけががんばってもだめだし、介護職だけががんばってもだめ。連携ではなく、一緒に考えていくことが大事だと思う。

     医者も生活的視点を考える医者にならなければいけないし、そのためには医療と介護の融合という意識を持つこと。リンケージからインテグレーション、医療と介護の統合、規範的統合、実践的統合、認証的統合と言われているが、こういう考え方をもって、中心に患者さんをおくことが、地域包括ケアに求められているのではないか。

     最後に、科学誌『Science』に掲載された「Happy People Live Longer」という論文を紹介したい。幸せな人ばかりのグループ、不幸な人ばかりのグループを比べ、どちらが長生きするかをみたら、幸せな人ばかり集めた方が数年長生きしたというデータが、この『Science』の巻頭に載った。幸せな人は長生きをする。でも長生きをする人が幸せとは限らない。この意味を充分噛みしめながら、病棟を運営できたらと思う。

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